sei l'unico che può rendermi felice.

花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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ご挨拶とお願い


初めまして。


お越し頂きまして、ありがとうございます。ドラマの再放送を見たら、どっぷりと花 男にハマってしまいました。


当ブログは、花  の二    ブログとなっております。

原作主義の方、原作のイメージを壊したくない方はお読みにならないようお願いいたします。


CPは特に決まっておりませんが、つかつく、総つく、類つく、あきつくと何でも好きです。

お話もCPが混ざらないようカテゴリー別けにするつもりですが、固定CP以外は受け付けないという方は自己防衛をお願いいたします。


そして、全ての閲覧は自己責任でお願いいたします。


個人が運営している趣味のブログですので、原作者様、出版社様、その他の関係者様等とは一切関係ございません。 

あくまで個人の趣味である妄想であり、拙い素人の文ではありますが、無断転載・二次転載・お持ち帰り等はお断り致しております。当ブログのタイトル、URL、作品の一部であったとしても、無断転載等は禁止です。 


尚、誠に勝手ながら誹謗・中傷等も一切受け付けておりません。返信もできません。

一応、色々と調べてからお話を書いていますが、本職の方から見たら矛盾する点、現実ではありえない設定もあるかと思います。そこは素人なので、ご勘弁いただけると助かります。


恐縮ではありますが、予めご了承頂いた上でお付き合いくださいますよう、宜しくお願い申し上げます。



少しでも皆様と楽しい一時を過ごせたら嬉しく思います。





はらぺこ02


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

Call out my name. 後書き

Call out my name. 後書き




「Call out my name.」を最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

後書きの前に、まず先にお礼を言わせてください。
このお話の最中に、二次小説のブログランキングで一位を取らせていただいたことがありました。
拙い文章ばかりではありますが、これもひとえに皆さまが訪れて作品を読んでくださり、コメントや拍手をしていただいたおかげだと思っております。

このブログも始めてようやく2ヶ月経ちましたが、たくさんの方が読んでくださっているようで大変嬉しく思います。
本当に本当にありがとうございます!
至らぬところも多々あるとは思いますが、これからも楽しんでいただけるように頑張りますので、よろしくお願いします。



さて、ここから後書きとさせていただきます。

「Call out my name.」は「俺の名前を呼んでくれ」と言うことで。
憎しみなのか愛なのか、がテーマでした。

今回は道明寺があの雨の日から、つくしちゃんを恨み憎み続けていたら……で始めたお話でしたが、イジメとかもそうですけど、やられたほうは忘れません。覚えてるものです。

それに人って結構簡単に好きになったり嫌いになったりするんですよね。
ただ、想いが深ければ深いだけ恨み辛みも深くなるし、愛する時はそれも引っくるめて愛おしく思ったり。
なんとも人間とは複雑な生き物です。

あと名前。
今回の一番重要なアイテムでした。
名前って、その人そのものじゃないですか。アイデンティティの根幹の一部というか。
なのに自分の意志だけでは、なかなか変えようと思っても変えられないもの。だからアイデンティティとも言えますが、それはさておいて。

名前もあだ名とかも、その人しか呼ばないものだったりすると、ずっと疎遠になってても呼ばれれば一瞬でその人を思い出しません?
道明寺はその名前に縛られて抗えずに生きているけど、つくしちゃんだけが呼ぶ「道明寺」に、思い出や気持ちが高校生の頃に一気に引き戻されます。
なのに、一度読んだきり全く呼ばないで役職の専務呼び。
6年間想い続けた女と、6年間恨み続けた男。
どちらも根底は愛があってこそなんですけどね。それ故にすれ違い。

独占欲と支配欲も混同しやすいですよね。
ただ、独占欲は特定の相手ありきの話なので、そこは支配欲と違うところでしょうか。
だからといって、やって良いことと悪いことがありますよ、道明寺専務!
あきらさんも言ってましたけどね。
犯罪ですからーーー!!!
結果オーライだから良いじゃん!って話で終わりにしちゃダメなんです。
このお話は、あの雨の日の別れが道明寺を間違ったことをさせる原因でもありますが、だからといって無意識下の人間をどうのこうのするのは犯罪なのでダメです。

原作でもつくしちゃんって何でも許しちゃう子だと思うんですけど、ここではあえて許しませんでした。
許さないからこそ許せるというか。
お互いに許さないことで、相手を恨むのではなく自分への戒めにして、二度とあの時の後悔を繰り返さない為の決意といいますか。

身分の差があろうとなかろうと、結局は夫婦って赤の他人が紙一枚で繋がってるだけなんですよ、表面上は。
だからこそ、話すことは話さないといけないし、思ってることはきちんと言わないと後々すれ違いが起きたりするんですよね。
このお話の2人は、雨の日の嘘から始まり、再会してからは会話もなし。
そんな関係が上手くいくわけもなく、結局つくしちゃんが離れて行く。
それが分かっているからこそ復縁した際には次のステップを踏めるんじゃないかなーって。


7話のつくしちゃんがいなくなってからの道明寺ですが、心理描写に1話分使いました。
長いな!と思いましたけど、人生においての重要な選択を迫られた時って、自問自答に肯定と否定の繰り返しだと思うんです。
ただでさえ人生って取捨選択なんですよね。毎日何かしらを選んで、選ばれなかった選択肢がある。
特に選んだ時と選ばなかった時の両方をその後まで考えなければならない決断って、簡単じゃないです。
今日のお昼ご飯はうどんにしよう、じゃあ明日は炒飯で!なんてどっち選んでも困らない選択なら良いんですけどねぇ。

雨の日のつくしちゃんの嘘を知っても、それでもつくしちゃんを迎えに行くかどうするか。
つくしちゃんを選ぶなら、つくしちゃんが不安に思うことをクリアにして何の問題もない状態にしないと、迎えになんか行けないです。
昔の若かりし日の道明寺ならそのまま突っ走りそうですけど、大人になっても「牧野が好きだ!でも母親の問題は解決してないけど、これからだから!」ってめちゃくちゃ嫌じゃん。
なんの為の雨の日よ!ってなるし、そんな人に付いていくのは不安過ぎるでしょ。

道明寺は知らない状況でしたけど、つくしちゃん妊娠してるしね。
まぁつくしちゃんも可能性を考えなかったわけじゃないけど、本人が手に入らないなら……っていう思いが僅かでもないとは言い切れない。
はらぺこ02のつくしちゃんは道明寺のことが好き過ぎて振り切ってるんで!

そんな気持ちで妊娠したわけですが、そんな簡単な話ではないと、あきらさんに説教されます。
確か美作さんて、高校生の時に妹の双子ちゃんは未就園児か未就学児だったと思ったんですけど、そんな双子の育児を目の当たりにしてるはずなんですよね。
懐かれてるところをみても、多少育児には関わってきたのではないかと思いました。
更に言えば、美作さんは不倫してましたからね。念には念を入れているでしょうが、万が一ってことも無きにしも非ず。
認知に関しても知ってそう!よし、美作さんお願いします!ってことで、お世話係の美作さんに言ってもらいました。
ありがとう美作さん。

そして正直、11話の専務とつくしちゃんの和解シーンで燃え尽きてました。
いつもは最終推敲や誤字脱字は前日の夜に終わらせてるんですが、11話は当日お昼頃まで書いては消しを繰り返し、もうこれ以上書くことなくない?!ってなるくらい、セリフとか行間とかいじくり回してました。
それなのに20話まで引っ張ってすみません。
はい、ハッピー!で済む話じゃないし、この後は読者の皆さまのご想像にお任せします!なんてしたくなかったんですよ。
はらぺこ02が書く道明寺とつくしちゃんで、ちゃんとお話しをしてほしかったんです。

まぁ自分で書いといてなんですけど、朝起きた時に、専務じゃなくて道明寺って呼んでたら何か変わってたかもしれないよ、つくしちゃん。って感じですよね。ははは。


このお話は始めはラブコメでいこうと書き始めたはずなんですが、2話の後半でドーン!とシリアスっぽい感じになっちゃいました。
書いてる本人も、えっ?シリアスいっちゃう?!って感じでした。はい。
暗い話って書くのもしんどいんですね。知らんかったです。11話で燃え尽きてますし。



そして次のお話は、と言いたいところですが、一週間くらい更新お休みさせていただきます。
私事で申し訳ないんですが、家庭内の事情でどうにもこうにも次のお話が最終話まで書き切れてません。
辻褄が合わなくなるのが嫌で、今までは最終話まで考えて手直ししながら予約投稿してたんですが、にっちもさっちもでして。
本当にすみません!

今までは原作分岐でしたけど、次はオリジナルでいきます。
大学生つかつくの予定です。

次もつかつくです!

他にも小話考えてるんですけど、にっちもさっちも!
本当にごめんなさい!
お話を始める時は、当日お昼の12時に予告投稿します。



それではまた、一週間後くらいに。





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Call out my name. 20(完)

Call out my name. 20(完)






妊娠と結婚を告げたあと、そこからはもう飲めや歌えのどんちゃん騒ぎだった。


優紀と連絡が取れると言うと滋さんたちが呼び出せと言い始め、いくら週末でもいきなりは無理でしょと連絡してみれば、一も二もなくすぐに行くと返事があった。
あっという間に道明寺邸に連れてこられた優紀も、久しぶりのみんなとの再会とT4再集結に喜んでくれていた。


そして同期の田中さんと佐藤さん。
ずっと親身になって話を聞いてくれていたのに、最後は挨拶もなく会社を去ってしまっただけに気になっていると道明寺に話すと、電話をしてきたあの時の2人だと思い至ったのか、世話になったから呼べと言い出す。

ダメ元で電話をしてみると、あたしからの連絡にとても喜んでくれた。
ずっと気にして心配してくれていたのかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
2人は一緒にカフェにいたらしく、今からなら大丈夫と数時間後にはやってきた田中さんと佐藤さんは、広大な敷地にある道明寺邸と錚々たるメンバーに驚きを隠さなかった。


「何がどうなってるの?本当に専務がいるし……!牧ちゃんって何者……?本物の勇者になったの?!」

この呟きにみんなが反応して、入社してからのあたしの実態をバラされた。

「牧ちゃんって酔うとおしゃべりになるんですけど、話すことと言ったら専務と忘れられない大好きな元カレの話ばっかりなんです。まさか同一人物だとは思いませんでしたけど!」

「そうそう!しかも普通は恐れ多くて出来ないのに専務を呼び捨てにするから、勇者って言ってたんですよ。
それに入社してすぐにファンクラブまで……あ」

ファンクラブの言葉に道明寺本人がいるのに話すのはまずいだろうと言葉を止める佐藤さんだったけど、桜子は聞き逃すことなくコソコソと道明寺の聞こえないだろう所まで連れていき、話を続けさせている。


「ファンクラブとは?社内に道明寺さんのファンクラブがあるんですか?」

「ありますよ。専務のスケジュールからインタビューが載ってる雑誌類の情報共有したり、隠し撮りした写真とか配布してるらしいです。ねっ、牧ちゃん」

「先輩はファンクラブ会員なんですの?」

「もちろん!でもファンクラブの存在自体は本人にバラしちゃったの。流石にスケジュールの漏洩はコンプライアンス違反だから黙ってられなくて……。
でも、お世話になったのに申し訳ないから写真のことは言ってない。もし肖像権出されたらファンクラブ解体されると思って、それは黙ってる」

「やっぱり先輩は根性逞しいですわね。
道明寺さんと別れて何してるのかと思えば、道明寺さんを追っかけて入社して?ファンクラブ?それで妊娠、結婚って。」

「えっ、結婚するの?!てか妊娠?!ちょっとそういうことは早く言ってよ!でも専務のお母さんは?あり得ないって言ってたのに、いつの間に?!」

以前田中さんと佐藤さんには過去を教えているから、驚いて聞いてくる。
それが理由で2人とも疎遠にしてしまっただけに、きちんと話しておかなければいけない。
それに、もう道明寺と一緒にいることを誰にも隠すこともなく、嘘をつくこともしなくていい。

「道明寺のお母さんのことは、ちゃんと会って話してきてくれたみたいで。
婚姻届の保証人としてサインもしてくれた。まぁ、あとは流れで?そういうことに?」

「牧ちゃんが、あの専務と結婚に妊娠……?」

「すごい……。復活愛からのシンデレラストーリーを歩む人間がこんな身近にいる友達とか、人生何が起こるか分かんないね……」

「先輩はシンデレラというより、ジャンヌ・ダルクですけれどね」

「ジャンヌ・ダルク?」

不思議そうに言う田中さんと佐藤さんに桜子がくすりと笑う。

「道明寺さんはもちろん、ここの人たちはみんな高校生の頃に先輩に出会って、今までの価値観をひっくり返されるような革命を起こされたんです。高校時代は英徳のジャンヌ・ダルクとみんなから言われていましたわ」

「勇者にシンデレラにジャンヌ・ダルク……。牧ちゃんもう伝説じゃない?」

そう言う田中さんに桜子が肩を震わせて笑ってる。

「伝説……!あなた、面白い方ですわね。先輩、武勇伝でも出します?」

「ちょっと伝説とか武勇伝って何!恥ずかしいからやめてよ。
あのね、あたしはあたし!何者でもない、牧野つくしなの!」






愛と憎しみは常に表裏一体で、些細なことですぐにひっくり返ってしまう。

憎しみも、愛も、深く深く、一度知れば止めどなく。

憎むほどに強く、愛するほどに強く。

誰かを想う気持ちの深さと強さに差があるとすれば、憎悪か愛か哀しみか。
深ければ深いほどに、表と裏が変わった時、その深さも同じ程に。


それほどまでに想える相手に出会う運命と。
離れても尚、再び出会う確率は?

育ってきた環境の何もかも違う二人が恋に落ち、そして別れ、悲しみ憎み、再び出会う。


そして、二度目の恋に落ちる時ーーー、









fin.









Call out my name. 19

Call out my name. 19





ーーー眩しい。
庭に面した大きい窓のカーテンが開けられていて、外の光がベッドまで差し込んでいる。


もう朝?
眩しくてまた目を閉じる。

道明寺は?
また目を開けて、あたりを見回してみても道明寺がいない。

ここは、道明寺の部屋。
大丈夫、きっとお邸のどこかにいる。

そう思っても、もし昨日の出来事は何もかもが嘘で、やっぱり出て行ってくれと言われたら……なんて悪い想像をしてしまう。

そんなことない。
道明寺を探そう。

起き上がろうとしたら、静かに扉の開く音がした。


「牧野?」

道明寺だ!
ガバッと起き上がって道明寺を見ると、眉間に皺を寄せて渋い顔をしていた。


「……道明寺?」

「いま滋たちが来たんだが、どうする?会うか?」


びっくりした。
怖い顔をしているから、本当に追い出されるのかと一瞬不安になってしまった。

滋さん、本当に会いに来てくれたんだ。
来てくれてるなら会いたい。
いつまでも疎遠なままなのも嫌だし、人と人との縁は巡り合わせだ。
避けて通るものでもない。

「大丈夫。せっかく来てくれたんだもん。会いたい!」
「無理すんなよ。つわりもあるんだろ?連絡もなしに来たあいつらが悪い」
「本当に大丈夫!今は吐き気もないし」


滋さんたちを待たせてしまうのも申し訳ないと、急いで着替えて身支度を整えるあたしの横で、あれやこれやと心配して付きっきりの道明寺。
数週間前までは酷いほどに冷たくされていたから、あまりの身の変わりように少しそわそわしてしまう。

でも本来の道明寺はこっちだ。
高校生の時も見当違いな事が多かったけど、あたしを喜ばせようとアレコレしていたことを思い出してクスクスと笑ってしまった。
笑っているあたしを見て道明寺も安心したのか、滋さんたちが待つ部屋へ行こうと促される。

流石に6年振りの再会ともなれば、段々と緊張してくる。
扉の前に立ち、たじろぐあたしを見た道明寺は、大丈夫だと言わんばかりに優しく微笑み手を繋ぐ。

そして道明寺が扉を開くと、あきらさんと類の他に、そこには懐かしい人たち。


滋さんと桜子に、西門さん。


「つくしーーー!!!」


滋さんがあたしの名前を叫びながら両手を広げて突進してきたから、思わずお腹に手を当てて身構えるけど、道明寺が咄嗟にあたしの手を引き、抱き寄せた。

「滋!お前、いきなり何すんだ!」

道明寺が抱き寄せてくれたから良かったけど、あの勢いのままだと、ぶつかって転げてたかも。
それを想像して少し青褪める。
すると、いつの間にか近くに寄ってきていた桜子があたしを呼んだ。

「先輩……」

桜子は会っていなかったこの6年間で少女から艶やかな大人の女性へとなっていた。
元々、身のこなしも優美な子だったが、大人の色香も相まって更に美しくなったように思う。


「桜子……!ごめんね、今まで連絡もしないで……!」

「先輩、会いたかったです……!」

そういうと桜子は優しくあたしを抱きしめるから、あたしも同じように抱きしめる。
6年経ってるのに、あたしと会いたかったと目を潤ませてまで再会を喜んでくれていることが嬉しい。


「牧野、体調どう?相変わらず?」

滋さんたちとの再会を静かに見守っていた類。
いつも会うと一番に体調のことを聞いてくれる。

「あぁ、今は良くもないけど、悪くもないな」

なぜかあたしの代わりに道明寺が答えると、滋さんは驚いた顔をした。

「えっ、つくし具合悪いの?!ごめんね、そんな時に来ちゃって……!つくしに会えるって聞いたら待ちきれなくて!」

「ううん、大丈夫だよ。今はそんなに酷くないから」

「牧野に聞いたのに……」と類が呟くけど、道明寺は素知らぬ顔をしている。


「おい、お前本当に牧野か?随分と綺麗になったもんだな」
「西門さん!お久しぶりです。お元気でしたか?」

西門さんも相変わらずの綺麗な顔で、それでもやはり高校生の頃とは違う、精悍さを持った大人の余裕を感じさせるような爽やかな笑顔で挨拶をしてくれた。

「おう、元気元気。流石に最近は夜遊びもしねぇけどな。もうすぐ家元襲名するから忙しいんだよ」

「そうなんですか!それはおめでとうございます」

「それにしても女ってのは6年で随分と変わるもんだな!司が独り占めしたくなるのも納得だわ」


独り占め?
なんのことか分からずに、きょとんとしていると、滋さんが思わぬ真実を話してくれた。
とりあえず、みんな座ろうとそれぞれがソファへと腰掛ける。
あたしの隣はもちろん道明寺だ。


そして滋さんは鼻息荒く話し始めた。

「すごかったんだよー!類くんがさ、つくしがインターンシップ来たって、うちで内定出すって言ったら、いきなり司がダメだ!って大声出しちゃって。
その場で西田さんに電話して、道明寺HDにインターンシップ来てるか聞いててさー。来てるって分かったら、すぐに面談しろ!って。
つくしは成績優秀で資格もいっぱい持ってるし、人柄は言うまでもないから贔屓目なしにぜひとも欲しい人材じゃん?それならあきらくんも内定出すって言い出して」

「うちにもインターンシップに来てたのは知ってたからな」

あきらさんが道明寺を見ながらニヤニヤしつつ頷き話す。

「じゃあ私もインターンシップ来てたら面談して懇談会とかも来てもらって内定出すから、どこを選ぶかはつくし次第だね!って言ってたのに、司が牧野はダメだ!牧野に手を出すな!って。
あたしだって、つくしと働きたかったのに、司が絶対ダメだってめちゃくちゃ怒るからさ〜!
でもあまりにも司が必死すぎて!仕方ないから司に譲ったの」


なるほど。
そういう経緯があったわけだ。
こうやって人ひとりの就職が簡単に決められてしまうことに思うところがないわけではない。
あんなに必死になって頑張ったのに、全部仕組まれていたなんて。

それに類がよりを戻したと思っていたと言っていたことも、道明寺の意図を類もみんなも勘違いしてたことになる。
あたしには有無を言わさず道明寺HDにしたとしか言わなかったけど、友達に怒鳴りつけてまでそんなことをしていたのかと隣の道明寺を見遣る。


「つくしが道明寺HDに勤め始めてからも、司はつくしに会ったって言うけど、他はなーんにも教えてくれないし!会わせてもくれないし!ひどいよね!つくしを独り占めして!」

そりゃ、言えないし会わせらんないわ。
動機は復讐だもんね。
再びチラリと道明寺を見れば平然としているようだけど、さっきから目線が合わないところをみると、内心バラされて焦ってるんだろうな。
それでも滋さんの言うことを止めないのは、やはり自責の念からだろうか。


「それで?牧野の仕事はどうするの?」

類が道明寺を見ながら話す。
どうするかまではまだ決まっていない。昨日はそこまでの話は出来なかった。


「類、本当に迷惑かけてごめんなさい。退職願、道明寺がダメにしちゃったの」

「当たり前だろ!花沢物産になんか転職させるかよ」

そう怒鳴る道明寺に思わず大きなため息が出てしまう。
だからといって、退職願を破いたり燃やしたりするのはどうかと思うけど。

「まぁ働けても、あと半年くらいだろ。道明寺HDも今さら前の部署には戻れないだろうし、いっそのこと休職届でも出したら?そこらへんは西田さんに聞いたら何とかしてくれるんじゃない?」


類の進言で休職制度があることを思い出す。
でも今のあたしは道明寺HDの、どこの所属になっているのかすら分からないし、そこまでして会社に残る意味はあるのか考えてしまう。
入社の目的も道明寺を近くで見たいなんて不純な動機だ。

どちらにしろ出産したあとは道明寺の妻としての仕事があるのだろう。
これは西田さんよりも道明寺と話さなくてはいけないことだ。
昨日今日で決められる話でもないし、これからはずっと一緒だから時間もたくさんあるはず。


「え、何?つくし転職考えてるの?じゃあうち来てよ!今度こそ一緒に働こうよ〜!」

「ダメだ!俺は来年度から日本支社の代表になることが決まってる」

「だから何よ!別に彼女が大河原財閥にいたって良いじゃない」

「ダメだって言ってんだろ!代表の妻が他社に勤めてたらおかしいだろうが!」

確かにその通りだ。
道明寺財閥も大河原財閥も、資源分野に強みを持つ会社を経営している。協力関係にあれば良いが、敵にもなり得る。
そんな会社に他社の代表の、よりによって妻が勤めてるって確かにおかしい。


「……妻?」

滋さんがポツリと呟くと、桜子も訪ねてくる。

「その前に花沢さんが、働けてもあと半年って言ってませんでした?」

「牧野、昔は類のこと花沢類ってフルネームで呼んでたよな?なんで今は類なんて親しげに呼んでんだ?」

「……私たちの知らないところで会ってたんですね?」

西門さんと桜子が冷静に状況を理解し始める。
桜子がジトっとした目で類を睨むけど、類は素知らぬ顔で紅茶を飲んでいる。

「えー!どういうこと?!なんで類くんだけ?!ずるーい!」

滋さんがそう言えば、類はにこやかに「あきらも牧野に会ってるよ」なんて言うものだから、急に話題に出されたあきらさんは慌て出すし、ますます滋さんと桜子は不機嫌になっていく。

「おい類!俺を巻き込むなよ!」

「先輩!どういうことですか?!なんで私たちに連絡してくれないんです?!」

「え〜、いや、あの……」

わざわざ全部話すわけにもいかないし、どうしようかと隣に座る道明寺を見ると、道明寺もあたしを見ていた。

「どうするの?なんて説明するの?」

道明寺の耳元に顔を寄せて小声で聞くと、道明寺もあたしの耳元に顔を寄せる。
そして何か話すのかと思えば、そのまま耳にキスをしてくる。

「ちょっと!なにすんのよ!」

「いいだろ、減るもんでもねぇし」

「そういう話じゃないでしょ!桜子たちになんて説明するの?あんたがしたこと全部話していいわけ?!」

「いま決まってることだけ話せば良いだろ」

小声で道明寺とやり合ってると、痺れを切らした滋さんが怒り始めた。

「ちょっとそこ!イチャついてないで!説明して!」

「お前の体調が落ち着くまで、妊娠してることは秘密にしとくか?」

道明寺がまた耳元に顔を寄せて尋ねてくる。

「うーん、本当は安定期に入るまで広めたくはない。
でも今まで心配かけさせた分、滋さんと桜子には秘密にしないでちゃんと言いたい」

「分かった」


「司!つくし!」

「ごめんね、滋さん。実は……」

「もうすぐ入籍する。来年には子どもが産まれる」

「え」

「あきらと類が会ったのは、牧野の体調が悪くなった時に偶然近くにいて助けたから。
いいか、道明寺財閥から正式に発表されるまで極秘だからな!外部に漏らすなよ!」


道明寺がシンプルに告げる。
話せば長くなるはずなのに、たった数行で済ませてしまったことに思わず笑いが出てしまう。

でもその事実が全てで、真実は道明寺とあたしだけが知っていればいい。
















Call out my name. 18

Call out my name. 18




お風呂からあがり、お気に入りのパステルカラーのモコモコパジャマを着て道明寺の部屋へ戻ると、まだお風呂に入っているのかいなかった。

スクラップブックの一冊を手に取り、キングサイズよりも大きいんじゃないかと思うほど広いベッドに入る。


道明寺の記事が増えるのは約4年前からだ。実は6年前の記事はほとんどない。
この頃は道明寺がまだ学生だったこともあるけれど、あたしは道明寺を忘れたくて必死だった時期だから。
結局忘れることは出来なかったし、忘れなくても良いと、あの頃の自分も今の自分の一部なのだとに認めたら、だいぶ気持ちも楽になった。

それがまさか今は道明寺の子どもがお腹にいて、これから結婚することになるとは。
人生何が起こるか分からない。


道明寺の匂いは落ち着く。
スクラップブックを閉じてベッドに顔を埋めてクンクンしていると、ドアの開く音がした。
そちらに視線を向けるとお風呂あがりのバスローブを羽織った道明寺。

そうだった。
この人、髪の毛濡れるとストレートになるんだ。
もう今は道明寺の全てに胸がきゅんとしてしまって、どうしようもない。


「牧野」

道明寺が、あたしを見て、あたしに話しかけている。

また夢じゃないかと少し不安になる。
きゅんとしたり不安になったり、情緒不安定にも程がある。
妊娠しているせいもあるとは思うけど、昨日までとは全く違う環境に、それでもやはり戸惑いは大きい。


少しベッドが沈んで道明寺が近くに来たことが分かる。
チラリと顔をそちらに向けると、道明寺がベッドの端に腰掛けて、穏やかな、優しい眼差しであたしを見ていた。

どの記事にも載っていない道明寺の顔、だ。

あたしだけが、道明寺をこんな顔にさせているのかと思うと、嬉しくてまた涙が出てきそうになる。
本当にどうしたんだろ。こんな泣き虫じゃなかったはずなのに。

「牧野?大丈夫か?気持ち悪いか?」

また顔を埋めて、首を振るだけのあたし。
道明寺が心配してる。
起き上がってモゾモゾと道明寺に近寄る。


「……昨日までは道明寺と離れることばかり考えてた。なのに今、こうやって近くで道明寺と触れ合えて、道明寺のいろんな表情が見れることが嬉しくてしかたないの」

そう言うと柔らかな表情で微笑んだ道明寺は、ベッドに上がってあたしを後ろから抱きかかえるように座り、あたしの髪の毛を指に絡めて弄ぶ。


「高校生の頃、俺の夢はお前だったよ」

「あたしが、夢?」

「ああ。俺は小さい頃から何でも欲しいもんは手に入ったし、欲しいと思わなくても何でも揃ってた。ずっとそういう生活だったが、そこに牧野、お前が現れた。
今まで俺の周りには見た目や持ち物でしか人を見れない奴らばかりだったからな。
俺を、物じゃなく人として見てくれた唯一の人間が牧野だった」

「そんなことないでしょう?あきらさんや類に、西門さんだって……」

「あいつらだって始めは家の繋がりで一緒にいただけだった。俺のやることにほとんど文句も言わない。見てるだけ。
高校の時だって赤札なんて馬鹿なことやってた時も、あいつらは見てるだけだっただろ」

確かにそうだった。
直接手を出してなくても、見てるだけで止めなかったことを思い出す。


「家族ですら俺を道明寺財閥の後継者としか見てない。今もだ。それでも、牧野だけは違うんだ」

「何が違うの?あたしだって道明寺を傷付けた!」

「牧野、お前だけは何よりも俺の気持ちを優先してくれてたんだ。昼間に話した時、ずっと俺にごめんなさいって言ってただろ?自分のことよりも、俺の気持ちを気にかけてくれたのは、今も昔も牧野だけなんだ……」

そんなことない。6年前は道明寺の気持ちを無視した。

「誰もが俺に道明寺の名前と金を要求する。俺ですら、それでなんでも解決出来ると思ってたし、少し前までは牧野にもそう思ってた。
でも、お前は高校の時から変わってなかった。自分が傷付いたことよりも、俺が傷付いた事を気にしてる。俺や周りの人に迷惑をかけないようにと、そんなことばかりを気にして。
本当にお前は、牧野は……それでも俺を、真っ直ぐで穏やかで優しいって言うんだ……」

道明寺に愛しさのあまり、切なさまで込み上げてくる。
この感情をどう表現したら良いのかわからないほどに、道明寺を愛おしく想う。

「牧野は俺の夢であり、挫折でもある。世の中には思い通りにならないこともあるんだと一度は諦めたんだけどな」

話しながら道明寺はあたしを布団の中に入るよう促す。
道明寺も一緒に布団に入って、そして包むように、そっとあたしを抱きしめる。

「一度は諦めた俺の夢が、未来と一緒に来たんだ。こんな、こんな嬉しいことが、俺の人生で起こるなんて……」

道明寺の胸元に顔を寄せる。
あたしが夢で、この子が未来。そんなこと言われたら、また泣いちゃうよ……。


「牧野、愛してる……」

「道明寺……」

どちらからともなく見つめ合ってキスをする。


道明寺は、あたしのお腹に子どもがいると知らなかった。
知らないで婚姻届を用意して、あたしと話そうと会いに来てくれた。
もう、その覚悟だけで十分なのだ。


お昼寝したのに、もうウトウトと眠くなる。

大丈夫だよね?起きたら道明寺がいないなんてこと、ないよね……?

もう起きていられなくて瞼が落ちる。
それでも道明寺に身体を寄せて、その温かさを感じながら眠れる幸せに身を委ねた。













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Call out my name. 17

Call out my name. 17






ーーーいまの、道明寺はもっと好き。



「……お、前な!クソッ!」


なんだこいつは。6年前の純情で初心な牧野も良かったが、こうも素直な牧野はどうしたら良いのか分からない。
何もなければ今すぐに押し倒して朝まで離してやらない気持ちになるが、今は、ダメだ。

最後も手荒く行為をした記憶がある分、これからも牧野に劣情を抱く事に躊躇いはある。
それに今は何よりも安静にしてないといけない時で、何をおいても大事にしなければならないのは牧野だ。
俺のことなど、どうでもいい。


「……絶対、髪の毛は切るなよ」

声も低く唸るように言えば、「道明寺の為に伸ばしていたから好きにして良い」と笑顔で返される。
あのアパートで後ろから牧野を抱いてる間、背中を伝う髪の毛にも実は欲情していたなど、口が裂けても言えない。
牧野相手だと欲にまみれて、いつもの自分を見失いそうになってしまう。

もう話題を変えようと、あきらと類が話していたことを思い出した。


「滋と三条」

「え?」

キョトンとして俺を見上げる牧野。
かわいい。
本当はこの邸にずっと閉じ込めておきたい。
誰にも渡さない、誰にも見せたくない、俺だけの牧野。
このままだと産まれてくる子どもにまで嫉妬しそうで怖くなる。
何を考えてるんだ俺は!


「……滋と三条に連絡するって、あきらが言ってた。だから早ければ明日あたり来るかもな」

喜ぶかと思ったのに、途端にしょんぼりした様子の牧野。
どうしたのかと聞いてみれば、何てことはなかった。

「もう6年も連絡してなかったし、滋さんも桜子も道明寺のこと好きだったのに、あたしと道明寺の応援してくれてたのを裏切った形になるでしょ?たぶん怒ってるだろうし、会いたくないんじゃないかな……」

「それはない」

むしろ逆だ。
あいつらだって6年前は何も出来なかったと後悔していると聞いた。
みんな牧野に出会って変わった。感謝こそすれ、怒ることなどあり得ない。


「言っただろ、お前の就職には滋も関わってる。俺が有無を言わさず決めたけど、滋が一番しつこかった。牧野と仕事がしたいってな」

「……うん」

それでも不安なのか、笑顔がなくなってしまった牧野。

「とりあえず今日はもう休め。一日で一気に事が進んだから疲れただろ?この部屋の隣を牧野の部屋にさせたから。一応、掃除とベッドメイキングはさせたから風呂と寝るだけなら大丈夫だろ」

「え、一緒に寝てくれないの……?」



俺は6年経つとこうも人間が変わるものかと、まさに今しみじみと実感している。
色恋に疎くて、いちいち恥ずかしがっていた牧野が、一緒に寝てほしいなどと言う日が来るとは。

いや、一緒に寝るくらいなんだ。
それ以上のコトをしていたのだから、この程度で狼狽える俺がおかしいのか。

それでも、そう素直にさせるような何かがあったのかと過去の男がチラつくことに激しく嫉妬しそうになるが、更にしょんぼりしてしまいそうな牧野を見てどうしたものかと考えあぐねる。

「道明寺、一緒に寝てくれるんだよね……?」

再び上目遣いで言われたら答えは一つしかない。


「……分かった。風呂入ったら戻ってこい」



せっかく一緒にいるのだから、なるべく道明寺にくっつていたい。
もう離れることも置いていかれることもないと分かってはいるけれど、こうなって一日も経っていないだけに、まだ不安は残る。

隣の部屋を覗いてみると、シンプルにまとめてはあるものの家具はあたしが量販店で買うような大量生産のものではなく、どことなく高級感が漂っている。
この家具たちにあたしの私物を置くと違和感あるな……なんて考えていた。


その時突然思い出した、大事なもの。
慌てて道明寺の部屋へと戻り、勢い任せに大きな音を立てて扉を開く。

「道明寺!」

「なんだ?!」

道明寺もお風呂に入ろうとしていたのか上半身裸だけど、それどころではない。

「あたしの荷物!これ全部持ってきてるのよね?!」

あたしの荷物がまとめられている所へ小走りで駆け寄る。

「おい、走るな!」

どこに入れたっけ?!
そんなに多くはない荷物だけれど、焦ってしまう。ほとんどの荷物を開けて、残り数個の一つにそれは入っていた。


「あった!良かったぁ〜!」
「なんだ、それ?」
「これは道明寺の……」
「俺の?」
「あっ!」

道明寺が横から手を伸ばしてきたから、止めようとしたけど間に合わず、それを手に取り見られてしまった。

「お前、これは……」

道明寺が驚くのも無理はない。
なんせ段ボール箱一箱分、目一杯に詰まっていたのは、6年分の道明寺の記事をスクラップブックにしたもの。
そのうちの一冊を捲って見ている道明寺。


「……もしかして、これ一箱全部そうか?」

「そうですね……。伊達に6年間ファンやってないんで……」

「すげぇな、これ。よくこんな小さい記事まで集めたな」

「友達にも協力してもらって集めてました……」

これは、辱めの刑だろうか。
土星のネックレスの次に大切にしていたものだったから、なくなってたら困ると慌ててしまったけれど、本人に見られるって結構な拷問じゃない?

「これ、社内報か?」
「そうですね。入社してからバックナンバー教えてもらって、道明寺のところだけプリントアウトしました……」

見られてしまっては隠したところで意味はない。
この機会に言うべきことは言っておこう。

「あの、社内に道明寺専務のファンクラブがありまして……」

「は?」

「専務の出張スケジュールも、あくまで噂としてですけど流れて来るんです。
専務のスケジュール管理って秘書課の管轄で、警備の関係上、社内でも極秘のはずですよね?たぶん、ファンクラブ会員の中に秘書課の方がいらっしゃるかと。
……専務のスケジュール、社内だけとは思いますけど漏れてます……」

「はぁ〜〜~?!そういうことは早く言えって!
あっ!だからお前、俺の海外出張の時を狙って引っ越せたのか!」

「……そういうことですね」

「西田に連絡する。その間にお前は早く風呂に入ってこい!」

「はい……!」


ファンクラブのみんなに心の中で謝罪する。
でも守秘義務違反でコンプライアンス引っかかってるはずだから、ヤバすぎます!
秘書課の誰かさん、ごめんなさい!











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Call out my name. 16

Call out my name. 16






「……ん〜〜〜!」

苦しくて道明寺の背中をバシバシと叩く。

「……っ、道明寺!」

「なんだよ」

「苦しいってば!」

ぎゅうぎゅうに抱きしめられていたけど、そろそろ本当に苦しい。
それに道明寺が話す度に首筋に息が、耳にはフワフワの髪の毛がかかって、こそばゆい。


「話は、まだ終わってないし!」
「なんだよ、なんの話が残ってる?」

「あたしの退職願!」

「あ〜〜〜、……あれは、もうない」
「は?」
「……破って捨てた。」
「はぁ〜〜〜?!あっ、でも類が内容証明郵便で出したやつはあるよね?!」

「ない。お前が寝てる間に類から回収して、キッチンで燃やした」

破って燃やした?!

「信じらんない!なにそれ!」
「なんだよ!俺と結婚すんのに花沢物産にいんのおかしいだろうが!」
「だからって!もう!類に迷惑かけただけじゃない!どうすんのよ、あたしの仕事!」
「あのな!それ、やめろよ!類とか、あきらさんとか何だよ!いつから呼んでんだ!」

「もう〜〜〜やだ!話になんない!怒ると胎教に悪いから、これ以上あたしを怒らせないで!」

「……」

「離して!」

ずっと抱きしめられたままで話していたけど、本当にそろそろ少しで良いから離してほしい。
さっきまでの雰囲気はいつの間にかどこかへ行ってしまって、渋々といった感じで道明寺が体を離すけれど、今度は手だけを握ってて離そうとしない。

「道明寺、大丈夫だから。もう逃げないし、置いていかない」

そういうと道明寺は、ハッとした顔であたしを見る。無意識だったのだろう。
話し合いをして想いが通じ合ってから、道明寺はずっとあたしのどこかに触れている。
そうさせてしまったのはあたしだろうけど、少しでも道明寺が安心するのならと、黙って手だけは繋いだままにした。


「それで、これからのことだけど」

「これから?」

「そうよ!結婚するの?しないの?!」

「するよ!するに決まってんだろ!」

そういうと道明寺は、あたしの手を繋いだまま立たせ、一緒に自分の机へと連れて行く。
そして一番上の引出しを開けて、中から一通の封筒を出した。

「これ」

「なによ」

「中、開けて見てみろ」

道明寺と手を離して、促されるまま封を開けて中身を出して見てみれば、それは婚姻届だった。

「これ……」

「あとは、妻の欄だけなんだ」

「保証人、……道明寺のお母さんと、類だ……」

「これならお前も、俺の母親が認めてるって分かるだろ?もう一人は類にするか、あきらにするか悩んだが、類が譲らなかった」

「ねぇ、これさ、……あたしが復縁を望まなかったら、どうするつもりだったの……?」

「言ったろ、地獄だろうがどこまでも追いかけるって」

零れ落ちる涙が婚姻届に落ちないように、必死に手で拭う。

「なによ、地獄って……。人を勝手に地獄に落とさないでよ……」

道明寺は婚姻届を机の上に置き、あたしと両手を繋いで跪く。
そして、あたしと視線が合った時。



「牧野。これから先、どんな時も俺が帰る場所は、いつも牧野のところでありたいんだ……」

「うん。あたしも、いつどんな時でも、どんな場所でも、道明寺に……、いってらっしゃいと、おかえりを言いたいよ」



「牧野、……俺と、結婚してください」


「……はい」




あたしの返事を聞いた道明寺は立ち上がり、あたしを見つめる。

大丈夫。

これは終わりじゃない。
始まりの、キスだ。

道明寺の唇が優しく触れた時、やっぱり涙がぽろりと溢れた。


「牧野、終わりじゃないぞ。これから始まるんだ」

唇を離した道明寺がそう言うから、ますます涙が溢れて止まらない。
だって、同じことを考えていたなんて、泣くしかないじゃない。


「牧野」

婚姻届を出したら牧野じゃなくなるんだ。
道明寺が呼んでくれる「牧野」が大好きなんだけどな。
同じ「道明寺」になるのも嬉しいけど、何だか複雑な気分。
それに、道明寺家に入るということに不安は尽きない。今まで生きてきた世界が一転して変わるのだから。
遠方に住む家族を思い出し、少し淋しくなって道明寺に体を寄せると、ふんわりと包み込むように抱き返してくれる。



「牧野に道明寺って呼ばれるのも、届けを出すまでか。夫婦になるのに、それが淋しい気持ちになるのは何だろうな」

さっきから似たようなことを考えてるなと、道明寺を見上げる。

「どうする?婚姻届出すのやめる?」

「誰がやめるか!まぁでも牧野には悪いが、夫婦別姓には出来ねぇな。これから俺の妻として道明寺の名前で色々と表に出てもらわなきゃいけないことが増えるぞ」

「うん。分かってる。覚悟してる。」

「たぶん嫌なこともいっぱいあると思う」

「うん」

「何かあったらすぐに言え。道明寺の名前でどうにかしてやる」

「それは心強いね。」

思わぬ言葉にクスッと笑う。

「子どもは、誰かに任せたりはしない。仕事の都合でどうしようもない時もあるとは思う。でも、出来る限り俺らで育てよう。俺は、俺の子どもに同じ思いをしてほしくない。」

「うん」

「こうやって、何でも話していこう。俺たちは、育ってきた環境も何もかもが違う。ちゃんと話さないと、きっとまた同じことを繰り返しかねない。
子どものことだけじゃなくて、何でもだ。牧野がどう思ったのかを話して欲しい。俺も話すから。」

「うん」


もう返事をすることだけで精一杯だ。
あたしが寝ている間にも何を話そうかと、たくさん、本当にたくさん考えていてくれたんだろう。
ずっと、あたしと一緒にいたいと思ってくれているからこそだと分かる。
あたしは離れることばかり考えていたのに。


「……あと、これ」

道明寺はズボンのポケットに手を入れて何かを取り出した。
あたしの前に拳を出して、広げた手の中にあったもの。

そこには土星のネックレス。



「……道明寺…っ!」

思わず道明寺に飛びついて抱きしめる。


「捨てたなんて言って、悪かった……」

「ううん、ありがとう道明寺……!」


もうこれ以上は泣かせないでほしいのに。

これはあたしの6年間だ。
道明寺をずっと、ずっと想い続けた6年間。
それが返ってきただけでいい。


「ほら、後ろ向け。付けてやるから」

コクコクと頷いて後ろを向くあたしの髪の毛を、道明寺は片側に流してネックレスの金具を留めた。
そして肩を掴まれたと思ったら、項あたりにキスをされる。リップ音とともに微かな痛み。
項に手を当てて振り返り、道明寺を見上げる。

「なに?何したの?」
「別に」
「別にじゃないでしょ!何でも話すって言った!」
「本当に何もしてねぇよ!キスしただけだろ!」

じゃあなんで痛いのよ!

「あっ!まさかキスマーク付けたりしてないでしょうね?!」

道明寺は片側に流していた髪の毛をまた後ろに戻して、サラサラと流れるままに掬っては離しと遊んでいる。

「もう!髪の毛切ろうと思ってたのに……」
「切るのか?せっかく綺麗に伸ばしてるのに」
「うん。だって……」

言いかけて止めるのは良くないけど、これ以上は言いたくない。

「だって何だよ」
「別に!」
「何でも話すって言ったろ!」
「あっ、それを言う?!じゃあキスマーク付けたのか答えてくれたら、あたしも言う!」
「付けた。髪の毛下ろせば見えないだろ。ほら、次はお前の番!」

「ぐぅ……そんなあっさり……!」
「ほら、早く言えって」

「……道明寺より好きな人が出来たら、切ろうと思ってたの!」

「じゃあ切らなくていいだろ。そのままにしとけよ」


そう言うと道明寺はあたしの髪の毛を一房手に取り、口付ける。
そんな上目遣いで見つめられて言われれば、そんなの拒否出来ない。
6年振りにちゃんと正面を向いて話すことにまだそこまで免疫がないのに、そんな仕草で、そんな甘い声で言われたら。
ぽろりと本音が口を衝いて出る。


「6年前の道明寺も好きだけど、今の道明寺は、もっと好きなんだもん……」












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Call out my name. 15

Call out my name. 15






「あの、道明寺?」

なんだ?」

「なんで、あたしの荷物が全部ここに?」

「何を言ってんだ、お前は。俺の子どもがお腹にいるのに、いつまで他の男の家で世話になるつもりなんだよ」



先輩と話をしたあと、道明寺とお夕飯を一緒にいただいて部屋に戻ってみれば、美作家に置かせてもらっていたあたしの荷物が全て運ばれていた。
いつの間に?!まだ道明寺と和解してから、数時間しか経ってないけど!

「それはそうかもしれないけど……。あきらさんのお母様に、ちゃんとお礼言ってからにしたかった……」

そう道明寺に言うと、少しバツの悪そうな顔をしつつも、また後日改めて二人でお礼と挨拶に行こうと言ってくれた。


「牧野」

名前を呼ばれて道明寺を見れば、真面目な顔であたしを見ていて、ソファに座るよう促される。
あたしの隣に道明寺も座り、手を取り顔を見合わせる。


「話をしよう」

「うん」

「具合が悪くなったら、すぐに言えよ」

「うん」


話すと言っても、どこから話すか悩んでしまう。
まずは、こうなったそもそもの始まり、6年前から話すことにしようと、ぽつぽつとお互いに話し始めた。
あの雨の日に、あたしに何があったのか、どうして嘘をついたのか。
道明寺も、あの後の気持ちや、その後どうしていたのかを話してくれた。

そして、再会してからのことも。

「牧野が就活してる頃、俺はNYにいたから、そのことは知らなかったんだ。
類やあきらたちには年に数回、NYまで遊びに来た時や、俺が日本に一時帰国した時に会ってた。
あいつら、俺の前では滅多に牧野の話はしなかったんだけどな。ある時、類が牧野をインターンシップで見たと言い出した。そしたら、あきらも美作商事に牧野が来たと言い始めてな」

「行ったね。でもあきらさんも類も見かけなかったけど。大河原財閥だけはスケジュール合わなくて行けなかったの」

「みんな牧野の持つ資格の多さに驚いてた。大学も首席ではなかったが、かなり良い成績で卒業してるな。道明寺HDの入社試験もトップクラスの成績だった」

「それは、……どうしても道明寺財閥か、財閥系列に就職したくて必死だったから……」

「俺に会いたくて?」

そうだけど!
本人に図星を指されて恥ずかしい気持ちと、それを本人が言うなんて自惚れでしょ!っていう責めたい気持ちが入り乱れる。

「それは、……そうなんだけど。別に、あんたとどうこうなりたいとかなくて、単純にアイドルの追っかけ的な……、道明寺のファンをやっていたと言うか……」

これは言わなくても良かったかも。
言いながら恥ずかしくなってきた。

「それなのに俺は、お前が復讐に来たと思ったわけだ」

「あたしも浅はかでした……」 

「電話番号」

道明寺が唐突に言うから、一瞬なんのことか分からなかったけど、あの酔いつぶれた日の話だと思い当たる。

「まさか、まだ繋がるなんて思ってなかったの。二度とかけることもないだろうし、忘れられない想い出に、取っておいただけなんだけど……」

「あれから番号変えてねぇんだ。あの番号を知ってんのは、家族と類たちしかいない。あとは牧野、お前だけ。
今時、間違い電話もほとんどないからな。登録されてない番号からかかってきたのは、あれが初めてだった。間違いも否定出来なかったけどな、出てみたら……」

あれがなければ、今こんな風に話すこともなかっただろうけど。

「牧野……悪かった…。いま考えてみても、酷いことをした。意識のないお前をどうこうするなんて、狂気の沙汰だ。訴えられても仕方のないことをした」

「そうだね。でも、今こうならなくても訴えたりしなかったよ、きっと。そのつもりなら、始めにもっと抵抗してる」

「牧野、」

「馬鹿だよね、あたしも。乱暴にされてるのに、相手が道明寺だって言うだけで、何されても良いって思っちゃったの……」

重ね合わせていただけの手を指を絡ませて、握れば、道明寺も優しく握り返してくれる。

「俺は、本当に高校生の頃から変わってなかった。社会に出た大人がやることじゃない。どうする?今からでも訴えるか?」

「しないよ。この子の父親を犯罪者にするつもりもないし、訴えるとかそういう話でもない。そもそもに、そういう問題じゃないでしょ。他の女の人にも、そういうことしてたら……、ちょっと、あれだけど」

「しねぇよ!お前な、いや、そう言われても仕方ねぇんだけどよ……お前だけだ」

お互いに顔を見合わせて苦笑いする。


「あたし覚えてないんだけど、道明寺の名前、呼んだのね」

「まだ好き、とも言われた時な。あの時は一瞬、高校時代に戻ったような感覚になった」

頬が赤くなってる気がする。
知らなかったけど、あたしは酔うと、とことん饒舌になるようだ。

「しょうがないじゃない。あんたみたいな人間、他に会ったことないもの。あのあと道明寺のことを忘れようと何人かとお付き合いもしたんだよ。でも……、何もかも、あんた以上の人はいなかったの……」

「……お前と話をするのは怖かった。
何度も乱暴なことをしておいて、今さら好きですなんて、どの面下げて言えるのかって。高校生の頃を思い出してみても、随分と酷いことをお前にしてるんだ。なのに、なんでそこまで俺を想ってくれているのか……。だから、もう俺は牧野には絶対許してもらえないと思って……」

じっと道明寺を見る。目を逸らさずに。


「……そうだね、許さないよ」


許さないと言った瞬間の、道明寺の動揺したような後悔の混ざった瞳を目に焼き付けたくて。


これは、あたしだ。
身体を乱暴されて付けられた心の傷と、言葉で付けられた心の傷。
どちらも傷付いた。
どちらの傷が酷いかなんて、比べるものではない。


「道明寺を一生、許さない。だから道明寺も、あたしを許さないで」

「牧野……?」

「道明寺。この子がいなければ、あたしたちはお互い話もせずに、ずっとあの時の後悔の中で生きてたと思う。
だから忘れたら、ダメなの。お互いに付けた傷を、後悔を。
この子は、あたしたちの未来だよ。この子が、あたしたちと同じような傷を、誰かに付けさせたらいけないの。」

道明寺と重ね合わせて握っていた手を、一緒にお腹に当てる。

「傷の舐め合いをするんじゃなく、許してほしいと思いながらでもなく。
あたしは、道明寺と幸せになりたい。この子と一緒に、幸せになろうよ。一生、死ぬまで幸せになるの。そしたらきっと、許すとか、許さないとか、それを越えていける気がするの」

「牧野」

「辛い時は辛いって言える、そんな関係になりたい。もう隠したりしないで、嘘も付かないで、信用して、信頼されるような、何でも話せる関係に……」

道明寺の温かい大きな手が、あたしの頬に触れる。
少し前まで、あんなに冷たいと思っていた涙も、道明寺の手で温かいものに変わっていく。


「道明寺……愛してるの…」

「牧野……!」

「あたし、知ってるよ。高校生の頃から、本当のあなたは、真っ直ぐで、穏やかな、優しい人だって……。だから、ずっと好きなんだよ……」


たぶん、道明寺も泣いている。
あたしをぎゅうぎゅうに抱き締めてるから顔は見えないけれど、僅かに震える体がそれを伝えてる気がして。











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Call out my name. 14

Call out my name. 14





道明寺の香り…。
愛しい人の、昔の記憶がよみがえる。
高校生だったあの頃の、雨の日。


「道明寺…、ごめんね…。」

「牧野」

「どうみょうじ…、」

名前を呼ぶ声と頬に何かが触れた気がして、ハッと目が覚める。
目の前に道明寺がいて、こちらをジィっと見つめている。

夢、なのかな。
目が覚めたと思ったけど、こんな近くに道明寺がいるわけないもん。
ふふ、今日は良い夢の日だ。

「道明寺、好き」
「道明寺、」
「ずっと好きなんだよ……」
「道明寺……」

夢だから、いっぱい言える。
すると、夢の中の道明寺があたしを強く抱きしめる。

今日は本当に良い夢だなぁ。
道明寺の少し高めの体温に、ぬくぬくとしながら胸元に頬を寄せる。

ふふ、あったかぁい。
ずっと、ずっと、こうしてたいなぁ。
このまま、目が覚めなければ良いのに。

「いや、そろそろ起きろ」

道明寺がそう言うけれど、夢の中でくらい好きにさせて欲しい。
起きたら、道明寺がいなくなっちゃう。

「行かないで…。道明寺、あたしを置いて、行かないで……」

もう嫌だ。無言で道明寺に置いていかれるのは。
あのアパートの玄関で、無言のまま見送る悲しさは二度と知りたくない。

好きな人に置いていかれるのが、こんなに辛いなんて知らなかった。

また泣いてる。
流れた涙を拭おうと頬に手を伸ばしたら、別の手に涙を拭われる。
誰に?

ハッと目を開く。
道明寺がいる。
…まだ夢なのかな。目を開けたと思ったのに、道明寺がいる。

「夢じゃない。起きろ」

え?夢じゃないのに、なんでいるの?
いるわけないじゃん。
夢の中でも道明寺はおかしなことを言う。
きっと今は、起きた夢を見てるんだ。

「道明寺……」

「牧野、起きろ。起きないとキスするぞ」

キス、して欲しかったなぁ。
結局一回もしないまま、さよならしてしまった。
もう十分あたしは傷付いたよ、道明寺。
だから最後に、キスしたかった。

「おい、良いのか。するぞ、キス」

「やだ…。最後になっちゃうから、したくない……」

「最後ってなんだ?」

「キスしたら、終わっちゃう……。道明寺、あたしを置いて行っちゃうもん……」

「行かない。ずっと一緒にいる」

「夢の中の道明寺は、優しいね……」

「夢じゃねぇよ。おい、牧野!目を開けたまま寝てんのか、コイツ」


ーーー夢じゃないの?じゃあなんで道明寺が、



赤ちゃん!

まだ目立たないお腹に手を当てる。
ここは、どこだ。
あきらさんちじゃない。天井が違う。
なんで、いつから寝てた?

「やっと起きたか」

本物の道明寺だ。夢じゃない。
じゃあなんで、あたしに声を掛ける?

「まだ寝ぼけてんのか、お前。昼間にあきらんちで会って話しただろ?」

そうだ。
急に頭が回りだし、次から次へと昼間の記憶がよみがえる。
道明寺は赤ちゃん認知してくれるって、言った?
そこは覚えてない。
一番大事なことを覚えていないなんて。


「赤ちゃん、認知してくれるの?」

「しねぇよ」

「分かった。じゃあ養育費も発生しないし、あたしも請求しないから。この子が大きくなった時に、どこまで道明寺家に関わらせるのか、それも書面にして残しておこう」

「おい、なんだ?まだ寝ぼけてんのか?俺と結婚するって話はどこへいった?」

「結婚?それは道明寺のお母さんが……あれ?でも約束は無効とか何とか言った?」

「よし、そこからだな。とりあえずベッドから出ろ」

道明寺はそう言うと、横になったまま会話をしていたあたしの体を支えながら起こしてくれた。
ここでやっと周りを見渡してみたら、懐かしい、この部屋は。

「道明寺の部屋だ…」

「覚えてたか」

「忘れないよ。道明寺のことは忘れたことない。最後も、このお邸だったから」

でもなんでここに?
うちの邸に来いとは言っていたけど、いつの間に連れて来られた?
全く気付かない程、寝入ってしまうとは。余程緊張していたのか、それとも妊娠しているせいか。


「あきらさんと類は?」
「あいつらは仕事に戻った」

そっか、あとでちゃんとお礼を言わないと。
彼らがいなければ、あたしはまた一人で逃げていた。
感謝してもしきれない程だ。

「このお部屋、前と変わらないね」
「あぁ、あれから俺もこの部屋は使ってなかったけどな。タマがそのままにしてたらしい」
「先輩!先輩は元気?」
「先にタマに会いに行くか」

それを聞いて頷くと、先にベッドから降りていた道明寺に手を差し出される。
自然と差し出された手が嬉しいけれど、この手を取って良いのか迷っていたら、道明寺からしっかりと手を繋がれる。

「躊躇うな。もう俺の全部はお前のものだ」


……なんか、すごいことを言われた気がする。

「どうした?大丈夫か?」

あまりにも道明寺が平然としているから、今の言葉に思わず赤面してしまった顔を見られたくなくて、俯く。

「大丈夫。先輩に会いたい」

そう言って誤魔化した。
部屋を出て長い廊下を歩いていると、ダイニングルームの近くで作業をしている使用人の方たちに会った。
全ての人を覚えていたわけではないけど、何人かは前に一緒に働いていたことのある人たちだと思い出す。

「こんにちは、お邪魔してます」と声を掛けると、道明寺がいることにもびっくりした様子だったが、何人かは目を見開き、あたしを見ていた。

「牧野様、ですか?」

そう聞かれて、そうだと返事をすると、涙を流しながら再会を喜んでくれた。
みんなもあたしを覚えていてくれたようで、嬉しくて手を取り抱き合いながら話しをしていた。

「おい」

振り返れば、少し不機嫌そうな道明寺。
すっかり存在を忘れていた。みんなも、あたしとの再会に夢中になっていたようで、道明寺の存在を思い出すと慌てて作業に戻って行った。
行くぞと声をかけられ、再び手を差し出される。
今度は迷うことなく道明寺の手を取ったら、とても、とても優しい顔であたしを見て微笑んだ。

男の人と手を繋ぐなんて、高校生の頃と違って大人になってからは何とも思わなかったのに、今の道明寺とは手を繋ぐだけで照れてしまう。
子どもが出来るようなことをしておいて、何を今さらという感じだけれど。


「なんだい、ここは。甘ったるい空気だねぇ。あの子たちはちゃんと換気したのかね」

「先輩!」

6年前のあの時、最後まであたしを守り、応援してくれていた人。
なのに、あたしはそんな先輩の気持ちをも裏切って出て行った。

「先輩、あの時はごめんなさい。先輩の気持ちを無碍にするようなことをして、本当にごめんなさい…!」
「つくし、気にしちゃいないよ。あの時は、あんただって辛かったろうに……」

先輩に抱きついて話せば、また涙が出てくる。
6年前に比べると少しだけ痩せて小さくなった気がするけれど、相変わらずの様子に安心して、更に涙があふれ出てくる。

「なんだい、随分泣き虫になったんだね」
「なんでだか分かんないんですけど、最近は妙に涙もろくなっちゃって」

そんなあたしたちの様子を見ていた道明寺が先輩に、

「タマ、牧野も今日からここに住む。よろしく頼む」

そう言うから、びっくりしたのはあたしだ。

「えっ、あたしも?なんで?」
「なんでじゃねぇだろ!今さらどこへ行くつもりだ。」
「え、どこって言われても…。でも、あんたのお母さんは…?」
「結局そこだな。先にそこから話すか」
「なんだい、突然つくしを抱えて帰ってきたと思えば、あんたたちどうなってるんだい?年寄りにも分かるように話してくれないかね」

とりあえずおいでと案内され、久しぶりに入った先輩の部屋も記憶の中のそれと大差なく、懐かしいと感じるほどにそのままだった。
先輩の淹れるお茶は、今までの他の誰が淹れたものより美味しくて落ち着く。
一つ一つに懐かしさが込み上げて、また目が潤んでしまう。

そして道明寺は、NYでの母親との会話を教えてくれた。

「全部知ってたの…?」
「おう、俺がお前の就職に圧力かけたのも、お前にしたことも。まぁこれは西田がババアにチクってたんだけどな。子どものことも知ってたのは何でだろうな?」
「そのことを知ってるのは、類とあきらさんと、あきらさんのお母様だけなんだけど…」
「じゃあ、あきらの母ちゃんしかねぇな。何かしら繋がりがあるんだろ。」
「一番安全だと思って選んだのに…」

全部筒抜けだったわけだ。まさかそんな繋がりがあるとは、あきらさんも知らなかったことなのだろう。

「子どもって何のことだい…?」

そこで初めて先輩に言っていなかったと気が付く。

「言ってなかったか?牧野、妊娠してんだよ。俺の、子ども」

道明寺は何てことないように言っているけど、先輩は驚きに目を見開き、口をポカンと開けたまま固まってしまった。

「どうしたタマ。びっくりし過ぎてポックリ逝っちまったか?」
「ちょっと!何てこと言うのよ!」
「タマ、死ぬのはまだ早いぞ。俺の子どもを見るまで死なねぇんだろ?」

道明寺はニヤリと笑って先輩に話しかける。
先輩は顔をくしゃくしゃにして、涙を流して喜んでくれた。

「この歳になると大抵のことじゃ驚きゃしないと思ってたけど、こんな嬉しいことが起こるなんてねぇ……」

それから先輩と、この6年間のことを少しだけ、当たり障りのないところだけを話したりした。

「やっぱり坊っちゃんには、つくししかいないんだね。そんな穏やかな坊っちゃん、久しぶりに見ましたよ。」

先輩がニヤリと笑いながら話せば、坊っちゃんはもう止めろ!と道明寺が言い返す。
そんな二人を見ていたら、道明寺と話し合いをする前には考えられなかった今の状況に、また目が潤んでくる。


あたしは、二度も道明寺を諦めた。
それでも道明寺は、あたしを諦めずに追いかけてきてくれた。
そういえば高校生の頃に、地獄だろうがどこまでも追いかけるみたいなこと言われたな、なんて思い出しながら、隣に座る道明寺の繋いだままの手を見つめていた。













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Call out my name. 13

Call out my name. 13







ーーー話は数日前に遡る。




道明寺財閥NY本社、会長室。

NYのオフィスビル群の中、他を見下ろすように道明寺財閥のオフィスビルは建っている。
一歩外に出れば沢山の人々が行き交う賑やかな街だが、その上層階から見下ろせば、喧騒などなかったかのようにゆったりとした別世界が広がる。
夜になれば、そこから見える夜景は宝石を散りばめたような煌びやかな素晴らしいものになるが、夕方から夜にかけて刻々と変わる街の表情がとても美しいことを知るのは、ここに来た者しか分からない特権だろう。


そんな外の景色に目もくれず、二人はお互い無表情で、応接用に置いてあるテーブルを挟み向かい合うかたちで革張りのソファに座っていた。
コーヒーも置かれているが、どちらも手を付けない。


すると彼は、挨拶も前置きもなく話し始めた。

「専務を一年勤めたら俺を道明寺財閥日本支社の代表にと会長は言われましたが、その代わりにプライベートは自由にさせてもらう約束をしました。それはまだ有効ですよね?」
「…プライベートですか。まさか、どなたかとお付き合いをと報告にでも来ましたか?」

少しばかり片眉を上げて、彼を見る。

「付き合いぐらいで、わざわざ来ません。結婚の話です」
「会社に不利益が出なければ、プライベートでどんな女性とお付き合いしても構いません。ですが、これから道明寺財閥の代表になる人が、会長の私の許可も得ず結婚するのは許しません」

私がそう言うと、彼は尚も無表情のまま、それでも少し呆れたような顔をした。

「馬鹿馬鹿しい。今まで大人しく財閥の為にやってきたんだ。俺が誰と結婚しようが、もう何の文句も言わせません。もし認められないと言われても、俺はもうあんたを失脚させる術をいくつも持ってる。それでも、わざわざ許可を取りに来たんですから」

この子を道明寺財閥の後継者とするべく、ずっと育ててきた。
それで良いと、後悔もしていないけれど。
そのくらいの気概がないとやっていけるような世界ではないが、親をも脅迫しようとは。

「…彼女の何がそんなに良いのか理解に苦しみます」
「誰と結婚しようとしてるのかご存知なんですか」

馬鹿な子。

「あなたが何一つ文句も言わず、大人しく日本に戻って仕事をしていましたから、何かあるとは思っていました。
あなたが新卒採用に口を出し始めた時には何をしているのかと調べてみれば、凝りもせずまた彼女かと。それでも思いの外、彼女も優秀なようですし、大人になったあなたたちがどうするのか様子を見ていました。
西田に逐一報告させていましたが、あなたはそれに気付いてなかったみたいね」
「西田……!」
「あなたは大人になってまで、何をしているのか呆れます」
「チッ、そこまで知ってんのかよ……」

さっきまでの無表情から、ついに眉を顰め、舌打ちをする彼。
訴えられても仕方ないことを彼は彼女にした。
本当に馬鹿なことを。
思わず大きなため息が出てしまう。


「何があったにせよ、あなたはもう何も出来ない子どもではありません。世間知らずな高校生のあの頃ならいざ知らず、今のあなたが妻や子どもを迎え受け入れられないほど、無能な後継者に育てた覚えもありませんから」

そう。高校生の頃のあなた達は、世の中が何も見えていない子どもだった。
あのまま一緒にいても、いずれは気付く時が来ただろう。一緒にいるだけが全てではない。
それは身分など関係なく、どんな状況でも。身分の差があれば、尚の事。

事実、あの時に為す術は何もなく、私の圧力で別れを選んだのは彼女であり、諦めたのは彼だ。

愛だの友情だの言うだけなら簡単だが、力がなければ守れるものも守れない。
力を持っていたとしても、成し得ないことは山ほどあるというのに。


「妻はともかく、子どもはまだ早いだろ」
「あなたは本当に彼女の何を見ていたのですか。あまりにも馬鹿すぎてどうしようもないわね。代表にするのはもう少しあとにしましょうか」
「何が馬鹿なんだよ!」

この子たちには私の分かることのない、助けたいと思わせる何かがあるのだろう。
久しぶりに会ったはずの友人たちは、躊躇うことなく彼女を助けた。
彼らも、それなりに力を付けてきているからこそ、出来るのだろうけど。

「私からはこれ以上何も言えません。あとは本人と直接お話しなさい。今のあなたなら彼女が困った時に助けられる力もあるでしょうし、彼女もあなたを支えるということがどういうことか、分からない歳ではないでしょう」

「……もっと反対されて、政略結婚でもさせられるかと思ってましたが」

今だって、やろうと思えば出来るし、繋がりを持ちたい企業はいくらでもある。
それでも。

「私を誰だと思っていて?二度も自分の子どもを政略結婚をさせなければやっていけないような経営を、これからも、あなたにもするつもりはありません。今はあなたにそう言うお話も持ち込んでいないでしょう。
あなたも、自分の子どもに政略結婚をさせるような経営をすることのないように精進なさい。
それと彼女に伝えなさい。あの約束は、もう無効だと」


別れを経て、あの約束を律儀に守りつつも彼女は「道明寺財閥」に来た。
確かにあの時は「道明寺家」に近付かないと約束をした。屁理屈をと思わなくもないが、そこまで明確に約束を交わさなかった落ち度はこちらにもある。
それに、あの約束に司からの接触は加味されなかった。まさか司から彼女を道明寺財閥に就職するよう圧力をかけ、自ら近付いて接触するとは思わずに。

全く名前の通り、しぶとく根性逞しいと思わなくもないが、司もまた彼女を選んだのだから、仕方ない。


「司、幸せになりなさい」

「薄気味悪りぃな。どうしたババァ、耄碌したか?」

「……いつまでもこうして話しているのも時間の無駄です。早く日本に帰らないと今度こそ本当に逃げられますよ」

チラリと彼を見れば、何を言っているのか分からないのか、少しポカンとした顔をする。
そこに幼い頃の面影を見た気がした。

「今度は3人で挨拶に来なさい」

そう言うとソファから立ち上がり、執務を再開する為にデスクに向かう。
「3人?」とまだソファに座ったまま呟く息子。
美作家の奥様とは学生時代からの友人だと言うことを、この子たちは知らない。
美作家に行った時点で、全て筒抜けだと言うのに。

息子は馬鹿で、彼女は頑固。
元は私のせいだろうけれど、傍から見ていると何を遠回りしているのかと、呆れつつも笑いが込み上げる。
そんな顔は息子にも見せないけれど。

「お母さん」

久しぶりに、その言葉を聞いた。
思わず顔を上げて息子を見ると、今まで見たことないような、あまりにも真剣な目でこちらを見ていた。


「一つ、お願いが」











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