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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Re: notitle 43

Re: notitle 43






今日も一日、何事もなく恙無く。

あれから、何かと理由を付けてミドウさんと会うことを断り続けている。
仕事が忙しいとか、親戚の法事がとか、友達との約束がずらせなくてとかとかとか。
でも、それもそろそろ、限界かもしれない。

もう最後にあった日から、二ヶ月以上経っている。

他愛無く送られてくるメールも少しずつ、さりげなく返信を遅らせて、内容も当たり障りないものへと変え、返信する回数も減らしていった。こんなに会わないことはなかったから、最近では、なぜ会えない日が続くのかといったメールも来るようになった。
返信するのも困るなら、そのまますっぱりと見切りを付けて、こんなやり取り止めれば良いのに、どうしても、

……なんとも未練がましい。 


結局あの日、ミドウさんに本当のことを、どういうつもりで会っているのかを聞くことは出来なかったのは、もう終わりにしようと決めたから。
ミドウさんと過ごした半年間の楽しかったあの穏やかな時間を、最後にキスをした思い出を、きれいなままにしておきたかった。
あれだけ恋はしないと誓っていたのに、好きになるのは一瞬だった。だから、もしかしたらこの先もミドウさんよりも素敵で、この人ならと思える出会いがあるかもしれない。
その時に、後ろ向きじゃなく前向きに考えられる理由が欲しかった。

彼の言っていたことは本当かもしれない。でも、本当は嘘かもしれない。
嘘だった時に、また男に騙されたと彼を憎む気持ちを持ちたくなかった。


……いや、違う。
それは違うかもしれない。
思い出をきれいなままで残しておきたいとか、この先も前向きに考えたいとか、そんなことは本当はただの建前で、彼の口から真実を聞くのがこわくてこわくて、あたしは逃げただけ。

きれいなままで終わらせたはずなのに、あたしの気持ちは全然きれいなんかじゃなかった。
心の底に沈ませた気持ちも、信じようと思ったのに聞けなくて逃げた心も、何もかも、きれいじゃなかった。

キラキラした景色や、澄んだ空気や、穏やかな雰囲気だけが恋じゃない。
自分だけを見てほしい嫉妬心、誰にも渡したくないと思う独占欲、もっともっと彼を知りたいと思う気持ちも、全て含めて恋だと知っていたはずなのに、表面だけ取り繕って誤魔化そうとした

そんなこともあったねと、いつか思えるほど軽い気持ちなんかじゃ、なくなっていたのに。

彼との関係を一方的に終わらせる。
それを実行しようと彼と会うことを止めてメールも減らしても、どうしても一人になると彼のことばかりを考えてしまっていた。考えたってどうしようもないし、終わらせると決めたのに考えることを止められない。それならせめて、そのメールも受信拒否の設定にして、返信するのも止めれば良いのに出来ない理由は一つ。

だって、メールを止めれば、もう、本当に終わっちゃう。



秋が近付いてきた今の季節、日も落ちると幾分過ごしやすい気候になっていて、しかも金曜日の今日、週末にしては珍しく残業がなく定時に上がれたことに少しだけ気持ちは明るく、沈みがちだった思考を別方向へと向けることにした。

社屋のエントランスを出て駅に向かいつつ、今日のお夕飯のことと、来週分の作り置きは何にしようか、冷蔵庫の中身と予算と時間配分を考えながら、のんびり歩いていた。
作り置きもなくなってしまったし、せっかく早く帰れるなら今日のお夕飯は久しぶりにお惣菜でも買うか、たまには外食も良いかな~なんて思っていたら、いきなり後ろからドン!と体当たりをされた。
誰でも突然後ろから体当たりされたらびっくりすると思う。転んだりしなかったものの、当然あたしもびっくりしながら何事かと振り向く前に聞こえた声。

「牧野さーん!このあとヒマ?ヒマだよね?!ご飯食べに行こうよ~!」

「部長!びっくりするから、いきなりの体当たりはやめてくださいとあれほど!」

「ごめんごめん!どうしても今日は牧野さんとご飯に行きたかったのに、いつの間にか退勤してたから焦って追いかけてきたの!」

「はぁ……、まぁヒマだから良いですけど。体当たりは止めてくださいね」

「やったー!車、向こうに停めさせてるから行こ!」


彼女は、大河原 滋。
大河原財閥の一人娘で、今年の四月から総務部部長に就任した人。

就任当初は親の七光りと随分言われていたけど、そんな声はすぐに消えた。
自分よりも歳上の課長達にビシバシと指示を飛ばし、初めこそ厳しい面が際立ったこともあったが、元からの性格なのかサバサバと、そしてあっけらかんとしていて、とても頼もしく豪傑と言わんばかりの彼女に好感を持つ部下は多い。
そして、あたしと一つしか歳が変わらないと知って本当にびっくりした。

すごい。尊敬する。
あたしみたいに穿った見方も出来ず、捻くれてお局枠で主任になったと思っていたあたしには、一つ歳上の部長がとても格好良く見えた。そして部長は美人だ。身長も高く、容姿麗しい。まさに才色兼備とはこういう人のことを言うのだろう。

総務部には部長以外に女性の管理職はいない。あたしは管理職ではないけど、総務の中では管理職に一番近い立ち位置にいる為か、部長には何かと気にかけてもらっていて、彼女が部長に就任して半年経った今では時間が合えば一緒にご飯でもと昼休憩や退勤後に外に連れ出されることが、しばしばあった。


「今日はねー、フランスレストランの「プティ・ボヌール」予約してるんだ!」


彼女とご飯のお供をするようになって始めこそ驚いたものの、最近ではすっかり見慣れた運転手付きの車体の長い車に乗り込み、どこに行くのかと尋ねたら。

「プティ・ボヌール」ですって?!
全ての始まりであるだろう、あのレストラン!
よりによって、あのレストラン!

でもちょっと待って、部長は予約してるって言った?
いま誘われたばかりのはずなのに、予約してた?


「……部長?もし私に予定があったらどうするつもりだったんです?」

「一人で食べに行ったけど?」

ぐぅ、と声にならなかった音が喉で鳴った気がした。
この人も財閥の令嬢で、このレストランの予約など容易いことなのだろう。突然一人減ったところで困ることもないのだ、きっと。
しかし、二度と行くことはないだろうと思っていたレストラン。
行けるのなら他のメニューも食べてみたい!

レストランのオーナーが誰で、関係者に誰がいるかを考えなかったわけじゃない。
でも突然行けることになったレストランに、まさか偶然でも花沢さんがいるわけないだろう。

週末の開放感と、程よい空腹と、メニュー開拓したいその欲求に逆らえず、沈みがちな思考を変えさせてくれるような魅惑的な誘いに惑わされ、のこのこと部長のあとに付いて「プティ・ボヌール」へ足を踏み入れたことを、あたしは猛烈に後悔した。



「な、なんで……」

レストランに着いて案内されたのは、前回と同じ個室だった。
そこには既に先客がいて。
先に入った部長を、上司だと分かっていても思わず睨むように見てしまった。

「わぁ、牧野さんこわい!」

「部長、どういうことですか」

「いや、私も頼まれただけでね?」

「……帰ります」

「待って、牧野さん!」

そう言ってあたしを呼び止めたのは花沢さん。

「話があるんだ」

「何の話ですか?モニターの件は終わりにして欲しいと半年以上前にこちらからお願いしましたけど、それに関しては花沢さんも納得していただけたかと思ってましたが」

「モニターの件じゃない」

「それなら花沢さんとはそれ以上にお話することなんてないはずですが」


個室にいた先客は、男三人。
花沢さんと、胡散臭い男と、チャラい感じの男。

これはもう、彼についての話なんだろうと推測せざるを得ない。
なぜ部長が嘘を吐いてまであたしを連れてきたのか。頼まれただけと言っていたから詳しいことは知らないのかもしれないけど、あたしを騙すように連れて来たことに不信感は募る。

あたしがミドウさんの正体に気が付いてないと思っているはずなのに、彼の友人三人が一緒にいる所に連れてこられた意味は?
初対面の人にする態度じゃないのは分かっているけど、状況があまりにも受け入れがたくて、思わず眉根を寄せて大きくため息を吐くなど不信感を持った表情と態度を隠せなかった。


「君が、牧野さんが婚活アプリで会っていた「ミドウ ジョウ」のことで話があるんだ」











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Re: no name様

コメントありがとうございます!

コメント大変嬉しいですし、励みになります。
なるべく更新出来るようにがんばりますね!

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