sei l'unico che può rendermi felice.

花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Can we get back together? 後書き&お知らせ

Can we get back together? 後書き&お知らせ




「Can we  get back together?」をお読みいただきまして、ありがとうございます。

題字の通り、「私達やり直せる?」でした。
流石に誕生日は忘れてないと思います。笑

1話から3話まで司くんはとにかく「いつも」を言い続けてますが、それは司くんが仕事を頑張っているからこその「いつも」が送れているとは思います。
でも、その仕事も「いつも」誰かが支えてるんだよって言うことで。

司くんは良い事があると調子に乗ったり、楽観視したりと、ちょっと浮かれポンチなところがあると思っているので、穏やかな日常が続いて油断してそうだなってところで思い付いたお話でした。

このお話の司くんの中では、側にいるのが当たり前になってしまって、空気のような存在になっているつくしちゃん。
常にあって、なくてはならないもの。空気がなくなったら死んじゃうのにね。
最後のプロポーズも少し弱気になってます。約2日半?つくしちゃんに会ってないですから、酸素不足ですかねぇ。
まぁ当然、人は空気ではないので、いることが当たり前ではありません。
しっかりと一緒にいることの意味を改めて考えるきっかけとして、「いつも」が変わるだろう妊娠をぶち込みました。
あとは司くんに「牧野」を連呼させたかっただけです。「牧野」呼び大好きです。

ということで、クリスマスに別れ話からの、つくしちゃんのお誕生日おめでとう短編でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!


ここからはお知らせです。
年末年始ですが、12/30〜1/3の5日間お休みさせていただきます。
なので、年内は本日18時の更新が最後となります。
1/4~は、いつも通り18時にお話を更新する予定です。

このブログを始めてまだ3ヶ月半ですが、みなさんからの拍手とかコメントとか、とても励みになっています。
本当にありがとうございます!
どこまで続けられるか分かりませんが、来年も頑張ってお話を妄想したいと思います。

それではみなさん、良いお年を〜!








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Can we get back together? 4 (完)

Can we get back together? 4






つくしちゃん、元気な赤ちゃんを、産みましょうね?


「……あ?」


待て。
誰が?赤ちゃんを?産むって?

つくしちゃんって、牧野だよな?

つくしちゃんが子どもを?

誰の、子どもを?

俺か?
俺しかいないよな?

俺の、子ども?


「……牧野!」

牧野はどこに行った?!

ぽかんとしていた俺を置いて女三人はとっくに書斎を出て行ったらしく、あたりを見回しても、もう誰もいない。
慌ててババアの書斎を出る。

そこら辺にいる使用人に牧野の場所を聞くが、誰も彼も知らぬ存ぜぬで、話にならない。
この邸に俺の味方はいないのか。
いや、この期に及んで味方などいらない。この状況で、俺に味方がいては困る。
全面的に、この家に牧野は受け入れられている証拠だ。

途中でババアと姉ちゃんに会ったが、牧野はもう一緒にはいなかった。
もちろん、二人とも俺を無視。当たり前か。


どこだ。牧野は、どこへ行った。
この邸のどこかにいるはずなんだ。

昔の俺は、こうやっていつも牧野を追いかけていた。
いつも、いつも牧野を見ていた。

なんでいなくなってすぐに探さなかったんだ俺は!
いつもと違うことばかりを気にして、いつもの喧嘩に家を出るような大げさなことをしてと、心の中で牧野を責めていた。

俺は、何をやってるんだ。
牧野がいる「いつも」に慣れ過ぎて、大事なことを見失っていた。

牧野。
俺が全部悪い。

話も出来ない、聞かない男なんて、結婚もしたくなければ、父親にだってなれない。

俺は牧野に甘えていた。
俺からは離れないと高を括って、当たり前の日常を享受して。「いつも」と変わらないことに安心して、牧野の変化にすら気が付かなかった。

なんで話を聞いてなかったんだろう。
聞いてるふりをして、聞いていなかった。
「いつも」のなんてことない話だろう、そう決めつけて。
牧野のことは何でも分かってるつもりでいたけど、話もしないで何が分かるんだ。


ごめん、牧野。

「いつも」一緒にいたのに、いなかった。

「いつも」は「当たり前」じゃないのに。

いくら怒ってたからって、「別れる」なんて勢いで言い返していい言葉じゃなかった。
牧野は、我慢して、耐えて、それでも話そうとしてくれていたはずなのに。
別れるなんて、言わせたいわけじゃなかった。
俺は、初めて出たその言葉を、もっと重く捉えるべきだった。

俺は牧野と家族になりたいけど、それは兄としてじゃない。
ここまでしないと分からなかった俺を許してほしい。
これからは何でも話すし、言葉一つ漏らさず何でも聞くから。
ちゃんと、顔を見て話しをしたい。

牧野を、牧野がいることを、大切にするから。

牧野、


「……牧野」


「なぁに、お兄ちゃん」


クリティカルヒット。

やめろ、マジで。
本当に俺が悪かったから。

牧野は昔、学生の頃に俺が土星を見せた部屋にいた。
流石に外には出ていないけれど、窓の横で外を見ながら一人毛布をかぶって、膝を抱えて蹲っていた。
牧野の横に肩を並べて座る。

小さい。
牧野は、こんなに小さくて……、

牧野、


「ごめん」

「良いよ、お兄ちゃん。許してあげる。妹だからね、優しいでしょ」

これは。
笑ってるけど、笑ってない。
いや、こんな「ごめん」の言葉一つで許されるわけがないのは分かってる。

「いや、あの……」

なんで言い淀んでんだ、俺!
完全に牧野の雰囲気に呑み込まれている。

「11年一緒にいても、スマホ一つの繋がりしかないなら、探そうともしてくれない道明寺なんていらない」

あ。
捨てられた。

本当に、牧野に、捨てられたんだ、俺。

「心配すらしないで。父親ならあなたじゃなくても、類とか西門さんとか美作さんに滋さんも桜子も、西田さんも他にもたくさんいるから大丈夫よ」

道明寺財閥の後継者も、一人の女を前に為す術なし。
西田はやめてくれと突っ込むことすら出来ない。

俺は、なんてことをしたんだ。
心配すらさせてもらえないほどに、追い詰めてしまった。
仕事も大事だけど、何の為に学生時代に牧野と離れてNYへ行ったんだ。何の為に仕事をして、何の為に……、


牧野と、未来を過ごしたくて。
牧野と、ずっと一緒にいたくて。
牧野に、ずっと側で笑っていて欲しくて。


潰したのは、俺。

「いつも」に甘えて、俺が欲しかった「いつも」が消えた。

会社を潰さない為なら、いくらでも解決策を見つけようと頭が働くのに、牧野を引き止められるものが俺にはない。
どうしたらいいのかも分からない。

……分からないなんて、言ってる場合か!


「牧野、いやだ。妹になんかしないからな」

無視。

「牧野、俺が悪かった。何でも話す。ちゃんと聞く。顔を見て話すから」

無視。

「牧野、適当に返事もしない。ちゃんと洗濯物を洗濯機に入れるし、電気も消す。皿もシンクに持っていくし、なんなら皿洗いもしてみる。掃除も、したことないけど、やってみる」

無視。

「牧野、俺を、捨てるな」

「牧野、別れないからな」

「牧野、毎日ありがとう」

「牧野、好きだ」

「牧野と一緒に、育てたい。父と母として」


「牧野、愛してる」


「牧野」

「牧野」

「牧野」

無視されるって、しんどい。
いつも牧野はこんな気持ちだったのか。
俺は、なんて酷いことをしていたんだ。


「牧野」

「牧野、ごめんな」

「牧野、好き」

「牧野、牧野、牧野」

泣かせたいわけじゃない。
静かに涙を流す牧野を抱きしめることも出来ず、ただ背中を撫でることしか出来ない、情けない俺。

「牧野、泣くな」

「牧野、いや、泣いて当たり前なんだけどな、あの、」

「牧野、泣くなら、俺のところで泣いてくれ」

「牧野、」

「まきの……」


「……Can we get back together?」
「Absolutely!」


牧野の問いに間髪入れずに返事をした俺の胸へと飛び込んできた牧野を、しっかりと抱きしめる。
温かい。
こんなに、温かい存在を、手放しそうになった俺。

「「of course」とか適当な返事だったら妹になってたからね!」

危ない。
いや、そうなっても仕方ないことをしたのは分かってる。
仕方ないで諦める気もないけど!

「牧野、好き」

「牧野、大好き」

「牧野、愛してる」

「牧野、ずっと、側にいて」

「牧野、ここまでならないと言えなかった俺を許して」

「牧野、俺から離れないで」

「牧野、牧野、牧野」

「五ヶ月!」

「……なに?」

ずっと牧野を抱えるようにぎゅうぎゅうと抱きしめていたけど、牧野の体を少し離して改めて顔を見れば、怒ってる?
まだ、怒ってる?

「お腹の子!もう、五ヶ月なの!気が付いてから二ヶ月経ってるの!二ヶ月!話そうとしても「ああ、うん」しか返事しないのよ、あなたは!一ヶ月前に一回言ったからね、赤ちゃん出来たのって!そしたら、新聞読みながら「ああ、うん」ですって!バカなの?!」

知らなかった。
聞いてなかった。
俺、何してんの?!

「年末年始で忙しいのは分かってるから、じゃあもうクリスマスなら、ゆっくり話を聞いてくれるかもって思ったのに!頑張ってご飯も作ったのに、いつもと同じ!食べてすぐに「風呂入って寝るわ」って!クリスマスも忘れてたんでしょ!」

何も言えねぇ。
クリスマスなんて眼中なかった。

「いや、それは、悪かった……」

「赤ちゃんの話をしても「ああ、うん」だけ!クリスマスも忘れられた!あたしの話を聞かない!別れるには十分よね?!」

「……はい」

「今まで言わない、それだけはしないって決めてたけど、いくらなんでもあたし一人じゃなくなったのに、これじゃあ、困るのよ!なのに、「じゃあ別れるか!」って!赤ちゃんいるって、言ったのに……!」

最低な俺は、ただ黙って話を聞くしかない。
聞かなければいけない。

「前ほど好きとか言ってくれなくなったし、赤ちゃんいるのに、返事は適当だし、もう、ダメだって……っ、」

誰も俺の味方をしなくて良かった。
みんなが、牧野を守ってた。
俺の、代わりに。なんて情けない。

「もう、これからお腹も大きくなるのに無理だと思って、一ヶ月前にお母様に相談したの!それなら、ここで暮らしなさいって、ごめんなさいねって、あなたじゃなくて、お母様が、……っ!」

「本当にごめん、悪かった……!」

「赤ちゃんが出来たことも、家を出ることも話そうとしても聞いてない。
引っ越すのに荷物をまとめてても、有給取っても、気にも留めない。
話も聞いてるようで聞いてない、返事も適当!あなたも関わる話なのに!お腹の子はあなたの子なのに、結婚の言葉すらない!
結局、別れるって言われたってお話したら、それなら、うちの子になりなさいって、お母様がね!本当に道明寺財閥の後継者が、聞いて呆れるわ!」


「「Absolutely」で許したあたしを、この子を、一生守りなさいよ!その言葉を忘れないで!」

「絶対に」忘れない。
こんな馬鹿な俺に、11年も側にいてくれた牧野に、俺の全てを。


「牧野」

「なに?!」

「Do you want to be married to me?」
「Absolutely yes!」

「嫌味かよ!」

「だって!あたしの誕生日も忘れてるでしょ!このバカ男!」






Happy Birthday Tsukushi!
May you be happy always.


fin.









Can we get back together? 3

Can we get back together? 3






「副社長」

朝イチ西田。
寝起き早々から牧野がいない事実に打ちのめされる。
やはり夢ではない。
牧野はいない。

「さすがに起こすところからとは思いませんでしたが」

「朝からうるせぇな!」

「朝一人で起きられないようでは牧野さんに捨てられても仕方ありませんね」

「捨てられたとか言うな!まだ捨てられたか分かんねぇだろ!」

「おやおや。まるで子どもですね、司坊っちゃんは」

西田のやつ、マジでブッ殺す。

「そんなに睨んでも怖くありませんよ。牧野さんに出会ってからの副社長は優しくなられましたからね。高校生の頃の坊っちゃんのほうが、まだ恐ろしかったですよ」

やれやれと言わんばかりに呆れたような顔で話す西田。
仕方なく起きてリビングのソファに座るが、西田は早く支度をしろと言わんばかりに俺の周りをうろちょろする。

「坊っちゃんは洗濯も出来ませんか。せめて、洗濯物を洗濯機に入れるくらいはしても良いでしょうに。ここはお邸ではないですよ。まさかとは思いますが、牧野さんに全部やらせていた訳ではありませんよね?」

一昨日、昨日と俺が脱ぎ散らかしたシャツや靴下をつまみ上げながら、尚も西田は俺に言い続ける。

「今時、忙しいからといって家事を分担出来ない男は選ばれませんよ。いくら収入が多くても、使用人もいない家で生活を共にするのに任せきりなんてありえません」

洗濯物を纏めて手に取り、ちらりと俺を見る。

「まさか、家政婦のようなことをさせていたなんてことないですよね?牧野さんが副社長より早く帰ると言っても、休みは全て副社長と一緒ですからね。忙しさは変わらないはずです」

まとめた洗濯物をバスルームへ持って行き戻ってきた西田は、動かない俺をまたちらりと見て、ダイニングテーブルに置きっぱなしのグラスをキッチンへと持って行く。

「……まぁ副社長は生活能力ゼロですから、全て自分でやれとは牧野さんも言わないでしょうが、手伝いくらいはしてましたよね?それに、やってもらったらありがとうくらいは言ってらっしゃいますよね?まったく、これではクリスマスの朝に喧嘩するのも納得です」

クリスマスだと?

「……副社長、まさかクリスマスを忘れていたなど…」

俺の顔を見た西田は、今までで一番大きなため息をついた。

「牧野さん、24日の夜はいつもより早く帰りました。クリスマスイブの夜くらいは一緒にゆっくり過ごしたいと張り切っていましたが……。副社長も早くお帰りになったじゃないですか」

何も言えない俺に、西田は心底軽蔑したような顔で「最低ですね」と呟いた。


まさか西田に言葉で殴られるとは思わなかった。

選ばれない男。
捨てられた男。
生活能力ゼロ男。
クリスマスを忘れた男。

最低な男。

口を挟む間もなく繰り返されたジャブからの渾身のストレート。

ノックダウン。

「おっと、今さらでした。牧野さんはもう出て行かれましたからね」

ノックアウト。
再起不能。




「副社長、明日は仕事納めで最後に納会があります。そこで挨拶したら今年はとりあえず終わりですので。残りは年明けに必要な書類全てに目を通してサインするだけです。明日は牧野さんも出勤しますから頑張りましょう」

「牧野」の言葉で意識が覚醒する。
気が付けば、いつの間にか職場のデスクを前に座っていた。
目の前には様々な企画書に、サイン待ちの決裁書類やら何やらが山積み。

「副社長、本日は午後から会食です。今年最後の会食ですからね、牧野さんがいなくても愛想良くしてください」

牧野がいなくても仕事くらい出来る!


そう思ったのに、会食の相手が面倒だった。
牧野がいないと分かると急に不機嫌になるのは、取引先の中でも一番の牧野贔屓を公言している爺さん。

「なんじゃ、つくしちゃんいないのかい?こりゃ、つまらんのぅ。仕事納めにつくしちゃんの顔が見たかったのに……」

俺相手では不服と、包み隠さず態度に出すクソジジイ。
馴れ馴れしく「つくしちゃん」なんて呼びやがって!

「わしと会食の時はいつも来てくれるのにのぅ。ふん、粗方この坊主がつくしちゃんを怒らせたんじゃろ。ついに愛想でも尽かされたか?それなら好都合じゃわい。うちの孫息子はイケメンというやつでな!」

思わぬ図星を指されて言葉に詰まる俺を見たジジイは、わははと笑いながら「お見合いさせても良いかのぅ?」などと西田に確認している。
西田も「牧野さんに確認させていただきます」なんて返すんじゃねぇ!

結局、俺は一言も話させてもらえず、西田とジジイが世間話をして終わった。
本当に牧野の為だけに来てたのか、このジジイ!


「副社長、本日はこれで終わりです。どういたしますか?お邸に帰られますか?それとも牧野さんのいない家に?」

西田は黙る俺を一瞥すると、「邸へ」と運転手に言っていた。
マジでムカつく。

邸に着いて中に入ると、エントランスホールでババアに会った。

「司さん、お話があります」

めんどくせぇ。マジでめんどくせぇ。
明日、牧野が出勤したら捕まえて話がしたい。
その為に山積みの書類を持ち帰ってきたのに。
仕事をさせろ、そう言おうと思ったらババアがニヤリと笑いながら俺を見る。

「牧野さんのお話よ」

なんだよ、ババアも俺と牧野のことをもう知ってるのか。

「早く着替えて私の書斎に来なさい」

もう今日は何度ため息をついたか分からないが、とにかくババアの話は気になる。
牧野のことは、知りたい。
着替えてババアの書斎へと向かい、ノックをすると「お入りなさい」と返事があった。
扉を開けて中へ進むと、ババアは一人ではなかった。


「牧野!」

と、姉ちゃん?
なんだ?なんだ、この組み合わせは。
西田が牧野は安全なところにいると言っていたのは、この邸のことか。
それなら納得だが、なんで牧野が邸にいる?

牧野はちらりとも俺を見ない。
無表情のようで、ツンと澄ました顔をしているが、あれは、めちゃくちゃ怒ってる。
俺には、分かる。
牧野が家を出て行ってから、牧野のことが何も分からないと思っていたのに、いま唯一分かるのが牧野が怒っている顔とはどういうことだ。
姉ちゃんも珍しく一言も話さない。
いつもは何かしら殴ったり蹴ったりしてくるのに、今日は何もない。笑顔もない。
それが怖い。


「司さん」

さっきのエントランスホールで見せたニヤリ顔から打って変わって、ババアも冷たい目で俺を見る。
何なんだ。
牧野と拗れただけで、なんでここまで冷たい反応をされるんだ。
姉ちゃんだって、いつも俺の味方をしてくれるのに。


いや、拗れたとか味方とかの問題じゃなくなってきている?
本当にただの、いつもの喧嘩じゃねぇのか。
でなければ、ババアと姉ちゃんが牧野といる理由がない。


「牧野さんのことですが、来年にはあなたの妹になります。これからは兄妹ですから、仲良くなさい」


は?

ババア、遂にボケたか?

妹?
妹って何だ?

妹?
兄妹?
俺は姉がいれば十分なんだが、牧野が、妹?


「いや、意味がわかんねぇ」

「成人してもうすぐ30になるというのに、ここまでとは思いませんでしたが、子どものしたことは親が責任を取らないといけないですから」

責任ってなんだよ。
俺が何をしたって言うんだ。
なんでそれで牧野が妹になるんだよ。

「よろしくね、つくしちゃん」

姉ちゃんはニコニコしながら牧野に声をかけている。
俺に対する態度とはえらい違いだ。

「司と結婚してくれれば、つくしちゃんが妹になるって思ってたけど、養子縁組でもいけるのよね。嬉しいわ!」

「私も姉が欲しかったんです。よろしくお願いしますね」

なんて牧野もニコニコしながら返事をしている。

「待て、ちょっと待て。なんで牧野が妹になるんだよ!冗談やめろ!」

「冗談ではありません。もう弁護士にも話してありますから、決定事項です。手続きは来年を予定していますが、明日の納会で発表しますから、そのつもりで」

なんでそうなる。
養子縁組?弁護士?納会で発表?
だから、明日だけ出勤なんて言ってたのか。

「冗談じゃなくても、どうして牧野が養子縁組して妹になるのか説明しろよ!」

「牧野さんは、最近、お付き合いしてる方とお別れしたそうね」

別れたつもりはねぇけど、それは俺のことだろ!
だからってなんで養子縁組なんだよ!

「その方と何度もお話をしようとしたらしいけれど、全く聞く耳を持っていただけなかったようですよ。別れると言ったら、そのまま別れるかと返されたから家を出たと言うし、代わりに私が話を聞けば、お付き合いの相手は司さん、あなただそうね」

何を今さら!
さっきからふざけたことばっか言いやがって、このババア!

「息子のしたことは自身で責任を取ってもらいたいですけれど、お話が出来ないなら仕方ないですから。代わりに親の私が責任を取ります」

「だから!何の責任だよ!俺が牧野に何をしたって言うんだ!」

「呆れた。あなた、本当に牧野さんのお話を聞いてなかったのね。もういいわ。それと、もう一つお伝えすることがあります」

関心のない顔は何度かされているが、こんなに呆れた顔をされたのは初めてではないか。
姉ちゃんを見ても、これが弟を見る目なのか、今までにない冷たい目をしている。

もういいって、なんだよ。
良くねぇよ、何がいいんだよ!
何なんだ?
俺は、牧野に何をした?
もう一つって、まだ何かあるのか。
これ以上、何があるんだ!


「来年、孫が産まれるのよ。あなたは伯父さんね」


ババアに孫?!
俺が伯父?
どういうことだ?
姉ちゃんに子どもでも出来たか?
それなら俺が伯父になるのは分かるが、でもそれでなんで牧野が妹?


「つくしちゃん。初めてだし不安だと思うけど、私もお母様もいるから大丈夫よ!来年は元気な赤ちゃん産みましょうね!」


はっ?








Can we get back together? 2

Can we get back together? 2






ジュエリーチェストの上に置かれていたモノ。


それは、土星のネックレスとミラノで渡したダイヤの指輪だった。


本気だ。
牧野は本気で俺と別れるつもりで、この家を出て行った。


でも待て。
喧嘩したのは昨日の朝だ。
なのに翌日から有給?
いくらなんでも俺の秘書をやってる限り、突然の有給は取れない。
前から有給申請をしていたことになる。

でも、荷物はどうした。仕事中に業者に運ばせた?
一緒に暮らして五年は経ってる。
牧野の荷物だって少なくはない。予め纏めていたのか。

俺はそれにも気付いていなかった?

喧嘩はあくまできっかけで、前から牧野は、出て行くつもり、だったのか。


……昨日の朝は、なんで喧嘩になったんだ?
いつもの些細なことだったはず。
洗濯物をそこら辺に置くなとか、使ったカップはシンクに持って行けとか、電気を点けっぱなしにするなとか。

でもそんないつものことで、今さら別れるなんて言うか?

他にも何か言ってなかったかと考えているうちに、もう一つ気が付いた。
何年か前に買ったペアリング。
それすらも置いて行かれている。
絶望感。



「副社長」

西田の迎えが来たことにも気が付かなかった。
いつの間に入ってきたんだ。

「牧野さんがいないと着替えも出来ませんか」

「うるせぇ!考え事してただけだ!」

「そうですか。何を考えていたのか一目瞭然ですが、仕事は待っていてはくれません。急いで準備してください」

「……何か知ってるのか」

「知っていますが、牧野さんに口止めされてますので。とにかく急いでください」

口止めって何だよ!
いつもなら牧野がスーツとシャツとネクタイを選んで置いといてくれるのに、今日はない。
いつも牧野が選んでくれていたスーツとシャツとネクタイを思い出しながら、自分で選んだ。
前は自分でやっていたのに、いつの間にか牧野がやるようになっていた。

朝飯もない。
「いってらっしゃい」と「いってきます」も、ない。

大きくため息をついて。
牧野と暮らすようになってから、初めて無言で家を出た。



車の中で西田が一日のスケジュールを俺に伝える。
今日も一日忙しい。プライベートなど無きに等しい。


「西田、牧野はいつ有給申請を出した?」

「一ヶ月ほど前ですね」

一ヶ月も前から決めてたのか。
俺は何も聞いてない。

「上司の俺が知らないって何だよ」

「本当にご存じなかったんですか?承認のサインは副社長がされてますよ」

「知らねぇ!そんな書類にサインした記憶もない!」

「いえ、してますよ。他の書類と紛れて、牧野さんのだからと適当にサインしたのでは?」

んなことあってたまるか。
内容を確認しないでサインするなんて馬鹿のすることで、経営者としてあるまじき行為だ。
俺は絶対にサインはしていない。
牧野が有給申請して俺が理由を聞かないなんて、あり得ない。

「……有給は今日だけか?」

「一応、明日までです。今年はあと明後日だけ出勤の予定です」

なんだ。
明後日は会社に来るのか。
でも、昨日今日とどこにいるのか分からないのは変わらない。
だが、西田は牧野が家にいないことも知っていた。
俺よりも何かを知っているのか。

「西田、牧野はどこにいる」

「大丈夫ですよ、安全なところにいますので。お休みも本当はそのまま年末年始休暇にしてあげたかったのですが、納会の準備で人手が足りず忙しいので一日だけと無理を言いました」

マジで知ってんのかよ。
俺よりも牧野のことを知っているのがムカつく。
なんで俺が知らねぇんだ!


昨日も日曜日なのに出勤しなければならないくらいには忙しい。
年末はどうしても忙しくなる。
日本支社は正月休みがあるが、NY本社は年明けすぐに始業するから、俺はそうそう休んではいるわけにもいかない。

牧野が明後日には会社に来ることが分かっていても、家には帰ってこないのかと思うと、どうしたらいいのか分からない。
一緒に暮らし始めてから1日でも離れたことがなかったから、分からない。

いつも一緒にいたから、知らないことなんてないと思っていたのに。


「副社長は牧野さんがいないと急にポンコツですね」

呆れたような顔で西田が言うけど、上司に向かってポンコツはねぇだろ!

「西田。お前よくそんなこと俺に言えたな」

「今の副社長は全く怖くありませんし、牧野さんがいなくなった今、副社長の味方をする方は誰もいませんよ」


なに言ってんだコイツ。
普段なら怒鳴りつけているところだが、牧野が家を出て行った事実に打ちのめされていて、いつもの覇気が出ない。
それにしても、誰も味方にならないって何だよ。んなことありえねぇだろ。

そう思って会社に着く前にあきらと総二郎に電話をすれば、俺が話す前に二人揃って「今回ばかりは全面的に牧野の味方だ」と言われた。

なんだ?
もう牧野がいなくなったことを知ってるのか。

類は電話なんてしても意味はないだろう。
あいつはいつでも牧野の味方しかしない。

昼休みに滋と三条に電話してみれば、やはり開口一番、「今回ばかりは呆れて物も言えない。自分で何とかしろ」と言われた。

なんなんだ。
昨日今日の話なのに、なんで俺だけ何も知らないんだ。
牧野のやつ、俺には何でも話してると思ってたのに。

いつもの喧嘩にここまですることないだろ。
なんでそれで別れるだの何だのになるんだよ!
今さらだろ!



「副社長。いい加減、仕事に集中してください。仕事納めの28日までに終わらせないと、牧野さんのところに行けませんよ」

どこにいるのか分からないのに?
喧嘩の原因も、行きそうな場所も、親しい友達も、牧野の何も分からないのに。
とりあえず。

「西田!うるせぇ!黙ってろ!」

「失礼いたしました。今、牧野さんの居場所を副社長にお伝え出来るのは私だけですが、黙ってますね」



今日も帰れば一人。
いつもは明るい室内も、自分でスイッチを押さないと暗いまま。
もしかしたらとは思わなくもなかったけど、もしかしたらなんてなかった。
牧野は、いない。

昨日着た服も俺が放り投げたままだし、コーヒーが飲みたくても、コーヒー豆の場所すら知らない。
いつの間に、こんなに牧野に頼りきりになっていたのか。

牧野がいる「いつも」が、ない。
牧野がいなくなるなんてことは、考えたこともなかった。

明日も牧野は休みで会社にはいない。
一緒に暮らす前は離れているのが当たり前だったのに、今は近くにいないことが不安で仕方ない。

今さら。
別れるつもりで出て行った牧野に、今さら、そんなことを言ったって。
こんなに牧野のことを考えるのは久しぶりな気がする。
「いつも」が「当たり前」になってしまって、考えることも、寄り添うこともしていなかったのではないか。

離れてから気付くなんてバカげてる。
昔は離れていても、牧野が俺を想っていてくれていることを感じていたのに、側にいることが当たり前になってしまって、牧野を見ていなかったのではないか。

愛想を尽かされても仕方ない、かもしれないが、それで済ませるつもりはないし、俺はまだ牧野が好きだ。

……最近、牧野に好きとか愛してるとか、言ったか?
それすらも言ってなかったような気がする。
いつも一緒にいることが何よりも意味があると、言わなくても分かってるだろうと、思って……。

牧野は元々そういうことをあまり言葉にしない。
だから俺がいつも言っていたのに、言わなくなったら牧野が何を思うかなんて、想像に難くない。

仕事では秘書、家でも秘書のような家政婦のような扱いをされていると思っているのかもしれない。
俺にそんなつもりはなくても。

改めて自分の言動を振り返れば、今まで別れると言われなかったことのほうが不思議な気がしてきた。
牧野も堪りに堪り兼ねて、そうなったのだろうか。

こんなに自己嫌悪に陥ったのも人生で初めてだ。

どうやって牧野を取り戻したら良いのか分からない。
そもそもに、こんなに分からないことだらけで、取り戻すも何もあるか。
だって、今までも昨日も、いつもと同じ毎日だったじゃないか。

分からない。

こんなんで、こんな俺に戻ってこいと言われても牧野は首を縦には振らないだろう。


ため息ばかりの今日も、牧野がいない大きいベッドで一人眠る。









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Can we get back together? 1

Can we get back together? 1






朝、喧嘩をした。
いつものことだけど、いつもと違うことがあったとすれば、一つ。

「もういい、別れる!」

牧野にそう言われたことだった。

今まで数え切れないほど何度も喧嘩をしてきた。
それでも、この言葉だけは言わなかったのに、初めて出た言葉。
その時は俺も激昂してたから気にも止めなかったし、なんなら、

「そうかよ!じゃあ別れるか!」

なんて言い返した。
そう、売り言葉に買い言葉のように。


牧野と付き合って11年。
4年の約束はとうに過ぎ去ったものの、いつの間にか一緒に暮らしていたし、なんだかんだで上手くやっていると思っていた。
会社も一度か二度は経営危機に陥って、政略結婚なんて話も出たが、ババアもそれだけはしないと牧野を守っていたし、実際持ち直した。
だから、どこか安心していたところはあった。

牧野は俺から離れない。

お互い浮気は絶対しなかった。
それだけは、する気もなければ、されない自信も、あった。
だって俺は道明寺財閥の跡取りだ。
しかも相手はあの牧野だし。

しかし、もう11年だ。
どこか漫然とした空気があったと思う。
特に牧野も結婚だの何だの言ってこないし、俺には居心地の良い距離感だった。



牧野は俺の秘書として仕事をしている。
今朝は喧嘩をして別々に出勤したものの、仕事中はそれを持ち出すことなく、いつも通りだった。
こういう時いつもなら、牧野は俺よりも早く帰り飯を作って、俺が帰ってくるのを待ってる。
それでどちらからともなく謝って、収まる。
いつものパターンだ。

そう思っていたのに、今日は帰って玄関を開けたら真っ暗で、物音一つなくシンと静まり返っていた。
いつもと違うことに疑問を抱きつつリビングに入るが、ここも真っ暗で明かりを点けて見回しても牧野はいないし、飯もない。
いや、今は飯のことはどうでもいい。
一緒に暮らし始めてから、こんなこと今まで一度もなかった。
たまたま今日は疲れたか何かで先に寝てしまっただけだろうと寝室に入っても、牧野はいないし、いつもと何かが違う。


牧野の物が、何も、ない?

いやいやいやいや。
まさか。

とりあえず、どこにいるのか連絡してみようとスマホを取り出し、牧野の番号をタップする。
そしていつものコール音は鳴らずに流れた、音声メッセージ。


『この電話番号は現在使われておりません』


嘘だろ。
まさか。

確かに、今朝、別れるとは言ったけど、あれは言葉の綾だろ?
俺だって本気で別れるつもりで返したんじゃない。

まさか。
牧野は、本気で言った?

嘘だ。

本当に?
別れると行った時、牧野はどんな顔をしていた?

今日、仕事をしている間は?
どんな顔をしていた?

近くに、いつも近くにいたのに牧野がどんな顔をしていたのか、見てない。


落ち着け、俺。

牧野は何か残していってないか探そう。
こんな黙っていなくなるなんてことはしないだろうと、メモ書き一つでもないかと全ての部屋の明かりを点ける。

どこかに、何かないか。
リビング、ダイニング、キッチン、バスルーム、寝室。


ない。
何もない。
マジで、牧野の物が何もない。

リビングのソファに腰を下ろし、しばらく呆然とした。

これは、あれか。
愛想を尽かされたとか、そういう。

数時間前まで、何事もなかったかのように一緒に仕事をしていたのに?
スマホが繋がらなくなった今、牧野と連絡を取る手段がない。
どこに行ったのか、誰と親しいのか、よく立ち寄る場所があるのか。

牧野には、かなり厳しく交友関係も行動範囲も制限させていた。
なんせ道明寺財閥の副社長秘書で、恋人だ。
人間誰しも信用出来る奴ばかりではない。

それなのに、俺が何も知らない?
そんな馬鹿な。

でも、最近はこの家と職場の往復をしていることしか知らない。
職場でも家でも、いつも一緒だったから、牧野のことは全部知っていると思っていた。

いつも側にいたのに。

家ではいつも何の話をしていた?
仕事の話と、あとは……、

牧野がいつも何の話をしていたのかすら、思い出せない。




翌朝。
気が付いたら、もう翌朝。
いつもの夜なら「こんなところで寝てないで早くお風呂入りなさい」とか牧野が言ってくれるけど、そのままソファで寝てた。

いつもは牧野が起こしてくれるのに、今日は西田からの電話で起きた。
気分は最悪だ。
やはり牧野は出て行ったのか。


「今日から牧野さんが有給を取ってることはご存知だと思いますが」と続けて仕事の話をされたけど、有給を取っているなんて初めて知ったなどと言えるわけもなく。
間もなく西田が迎えに来ると言うから、風呂に入って着替えようとクローゼットを開けた。
そう言えば昨日はこの中までは見なかったな、と思いながら中へと入る。

そしてクローゼットの真ん中に置いてあるジュエリーチェストの上に置かれたモノを見て絶句。


それを見て、牧野が本気で俺と別れるつもりで出ていったことを悟った。







今日から28日までの4日間、午前6時に1話ずつ更新します。つかつくです。
連載中の「Take a look at me now.」は、いつも通り18時に更新します。


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