Killed by your gaze. 後書き
Killed by your gaze. 3
Killed by your gaze. 2
Killed by your gaze. 1
It’s all up to you. 後書き
It's all up to you.後書き
「It's all up to you.」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
つくしちゃん目線じゃないお話は初めてでしたが、いかがでしたでしょうか。
It's all up to you.
「全ては君次第」ということで。
このお話は共依存ぽい感じがしますね、お互いに。
前の二作とは打って変わって、弱々なつくしちゃんでした。
まぁ原作を読む限りでは、司が浮気とかなさそうですけども。
そこから始まる類つく。
でも司だって男の子だもん!遠くの滅多に会えない恋人より、近くの女に温もりを求めてしまうこともあるかもしれない、かもしれない。
原作では、司とつくしちゃんのやり取りって、ほんの数ヶ月内の話なんですよね。
ジェットコースターどころの話じゃないです。フリーフォールです、フリーフォール。
そして司がNYに行ってしまうと、自然に類との時間が圧倒的に多くなる。なんせソウルメイト。
接する時間が多ければ良いって話でもないですが、3年目の浮気をした司に、将来を夢見て頑張るつくしちゃんには耐え難いことだと思うんですよ。貞操観念すごいですし。
元々つくしちゃんには『困った時の花沢類』っていう主観的なところがありましたから、何かあったら頼るのは類だろうなぁっていう。
司との将来の為に3年間頑張って、この仕打ち。やる気も何もないですわ。
類は類で、まだ司を好きだろうつくしちゃんに付け入る真似は出来ないし、とにかく支えてあげたい一心で。
それでもやはり類だって20代になったばかりの男ですから、弱々な女の子が近くにいたら気持ちは傾いちゃいますよね。
一度は諦めたものの、それは嫌いになったからとかじゃなく、司を裏切れないからで。
その司に類も裏切られたわけです。
司とつくしちゃんが別れて2年後に類と身体の関係が出来るわけですが、ここではもう、つくしちゃんは類を好きになってる設定です。
既に司よりも多くの時間を一緒に過ごしていますし、何も聞かず話さず、ひたすらに側にいてくれる。絶対的信頼度が違います。
司と類との圧倒的な差を作るならここだと思いました。
ただ、お互い言葉にしないのは、やはりそれだけ2人にとって司という存在の大きさのせいでしょうか。2人とも司の存在に影響されての今なので。ちょっと臆病になってるというか。
そのせいで齟齬が生じますけどね。
それに気が付かない類は、まだつくしちゃんは司を好きだと思ってて、3年目にして、いつもと様子の違うつくしちゃんに、それでも司のところへ戻るなら後悔すればいいと、結構打算的に動きます。
言うなら最初から打算的と言えばそうなんですけど。つくしちゃんを少しずつ囲ってますからね。
というか、もし司のところへ戻るつもりなら、もう類とセックスしないよつくしちゃんは!目線も合わないよ!って類に言いたい。
そもそもに、このお話のつくしちゃんは、気持ちもなく身体を繋げられるような子じゃないですわ。
そこは恋は盲目とも言えるべきところでしょうか。
そして。類的には赤ちゃん出来ても、出来なくても良かったんですけどね。
もし、妊娠してなかった場合、つくしちゃんが司と復縁を決めたとして、類との身体の関係を司に隠すことはないと確信してます。
つくしちゃんは、そういうの隠せないだろうし。
復縁後に妊娠発覚しても、今さらつくしちゃんから司を振ることも出来ないし、自分が浮気したせいで類とそういう関係になっただろうことを司は責められるはずもない。
それでも授かった命に罪はないですから。
司とつくしちゃんなら、絶対に受け入れると分かってて。
司の浮気はあったものの、2人の強い絆を一番近くで見ているし、類は自分は選ばれないと思い込んでます。
まぁ言うなれば、自分の復讐心の為に、2人に後戻り出来ない後悔を与えることにした、無責任野郎です、類は。
(あくまで、このお話の類のことですので!)
気持ちは分からなくもないですけどね。
だって、類も司に裏切られ、類がつくしちゃんに想いを寄せていたのを知っていて、頼んでも断らない、きっと助けてくれると分かってて呼び出したのは、つくしちゃん本人ですから。
ずるいよ、牧野。ってところです。
それでも好きなことをやめられない。激しいジレンマ故の、暴走的な。
類も、決めたらすぐ行動する人間だと思ってます。これは、つくしちゃん限定か。
かもしれないの時点で、NYの時はつくしちゃん迎えに行ってキスしてますもんね。
一方のつくしちゃんは司に復縁を求められた瞬間に、やはり類しかいないと確信します。
ずっと側にいるのは類でしたし、『あの日』に追いかけてくることも謝りもしない男とは違うんですよ。そんな男に3年後に復縁迫られても。(原作の司はそんなことしないと信じてる派です。)
その夜に類と視線が合うのも、改めて類が好きだなぁっていう。
類は大きな勘違いをしていますが、つくしちゃんが大事すぎて、身誤ってます。
コントか。
赤ちゃんがいると分かったつくしちゃんは、司との全てを決別する為に、司のところへ行きます。
それが、今まで側にいて支えてくれた類への、せめてもの救いで、誠意だと。
つくしちゃん的には、もう既に1年前に類を選んでますけど、そもそもは司との別れが理由で側にいたわけですから、もう違うよ、ちゃんと類を見てるよっていう、けじめ的な。
司の全ては今さらで、今を生きているのは類ですから。
司との全てを過去に、思い出にして、きちんと決別してきた。
自分の負の感情ごと全てを受け入れて、3年間ずっと側にいてくれた大事にしたい人の赤ちゃんがお腹の中にいて。
そりゃもう幸せですから。
なのに、帰ってきたら類がいない。
赤ちゃんいるって言いたいのに、いない。
類!お前、なに出張なんか行ってんだ!と書きながらセルフツッコミです。わはは。
まあ同じ会社に勤めてるので、出張なのはすぐ分かりましたけど、っていう。
妊娠初期のフライトはオススメしませんが、そこは妄想の世界なので。ご容赦ください。
初めて季節感も出してみましたが、これもなかなか楽しい。
何月とか使わないで季節感出してみたいっていう、ど素人が無謀な挑戦です。
桜も、なごり雪、遅咲き、早咲きと、なんとなく、つくしちゃんの心情と重ねてみてます。
そして麦秋。つくしちゃんは麦ではないですけど、収穫です。やっと捕まえました。お互いをね。
3年目のつくしちゃんが春にいつもより寝ているのは、春だからではなく、司との別れを忘れたいからでもなく、妊娠してるからです。
あれ、不思議なくらい眠くなりますね。
書いてて、とても楽しかったお話でした。
掬うと救うを混ぜて書くのも楽しい。
何を掬って誰を救うのか。
次はまた、つかつくの予定です。
軽快な話を書くつもりが、思ったより重めな感じに。
そこまで重くもないですけど、童貞でも処女でもない、少しだけ大人になった2人のお話です。
こちらもお楽しみいただけると良いのですが。
それではまた。
はらぺこ02
It’s all up to you. 3(完)
It's all up to you. 3(完)
『あの日』から3年目。
今年も春はくる。この年は暖冬の為か、桜も満開になるのが早かった。
今年も『あの日』は俺の部屋で、昼間はいつものルーティンで、夜も肌を合わせて過ごした。
いつになく穏やかで、いつの間にか一緒にいても泣かなくなった牧野は、それでも普段より昏々と寝ていた。
前より寝ている気もするけれど、やはり『あの日』が過ぎる、春だからか。
そして早咲きの桜の花が散り終わりそうな、3年目の『あの日』が過ぎて、すぐのこと。
突然、牧野がどこかへ行った。
仕事も有給を取って、
俺に、何も言わずに。
牧野。
3年振りに司に電話をする。やはりすぐに繋がる電話。
「牧野、そっちにいるよね?」
『あぁ、いる。』
「司、俺は、お前を一生許さない。だからお前も、俺を許すな。」
『類。牧野は、』
「司、牧野を許してやって。全部俺が、悪いから。」
電話を切って、そのまま電源を落とす。
さあ、行こう。
牧野、もう泣くな。
全部、空っぽになるまで、俺が掬ったから。
もう一度、満たしてもらえば良いんだよ。
俺は、あんたの幸せが、笑顔があれば、それだけで。
それから、約二ヶ月後。
日本は麦秋の季節を迎え、桜の木も若葉を繁らせ、本格的な夏への準備を始めていた。
長期の海外出張は『あの日』から初めてのことだった。
今まで牧野が心配で、なるべく避けていたけれど。
牧野はもう、いないから。
牧野の香りが染みついた、思い出ばかりのこの部屋に。
帰国したら、日本はもう夜だった。
空港からそのまま帰宅。
すぐに寝たい。
早く眠りについてしまいたい。
玄関を開けて、靴を脱ぐ。
灯りも点けず、暗い室内に荷物とコートをリビングのソファあたりに放り投げ、スーツのまま寝室のベッドに身を投げる。
「ぐぇっ、」
え、なに、今の。
あひる?かえる?
なに?
…まさか、そんなはず、ない。
ふうわりと広がる、牧野の香り。
「牧野…?」
「るい。」
どうして、ここにいる。
司のところへ、行ったのに。
いつものように、布団の中で寝転んで。
掛け布団から顔だけを出し、月明かりの中で俺を見つめる牧野が、ぼんやりと見えてくる。
「類。」
牧野が、笑った。
なんで今、どうして?
「ひどいよ、類。帰ってきたらいないんだもん。電話もずっと電源切れてるし。出張なら教えてよね!知らなくて、いっぱい泣いちゃった。」
牧野?笑えるようになったの?
司は、どうした?
「類、」
「類、ありがとう。」
なんで?どうして?司は?
疑問ばかりが浮かんでくる。
それでも、なによりも、
牧野が笑ってるから。
「牧野、」
「うん。おかえり。」
「牧野。」
「類、苦しいよ。」
牧野を引き寄せ、かき抱く。
牧野。
司を、選んだと思ったのに。
なぜ、戻ってきた。
司は全てを、許すだろう。
なのに、なぜ。
「類、あたしと、一緒に生きてくれる?」
牧野。
「類。類がいなかったら、あたしダメになってた。」
「類が全部、救ってくれたんだよ。あたしの全部、何もかも。類がいたから、類がいないと生きていけなくさせといて、今さらあたしを諦めないでよ。類の側で、ずっと一緒に生きていきたいの。」
「あたしも、お腹の中にいる、この子も。」
牧野、牧野、牧野。
俺を許さなくていい。
だから、側にいて。
ずっと、側にいるから。
牧野、愛してるよ。
ずっと、ずっと。
牧野の幸せを、いつも願っているよ。
いつでも、どんな時でも、安心して笑えるように。
牧野の幸せが、俺の全てだ。
「類、今度はあたしが掬うよ。類の全て、何もかも。」
「類、愛してるの。」
牧野が積極的だったあの夜、やはり司から復縁の申込みがあったと言う。
わざわざ日本にやって来て、あの時は悪かったと言い訳もせず、ひたすらに土下座をされた、と牧野は笑う。
なぜ、司を選ばなかった?
牧野は司を、愛していたはずなのに。
突然いなくなった牧野は、復縁に合意する為にNYに行ったのではなく、今までの司との思い出を、全て返しに行っただけ。
あの日あの時までの、思い出を、全て。
3年前のあの時、すぐに追いかけてきて欲しかった。
それで謝られても、すぐに許すことは出来なかっただろうけど、まだやり直したい気持ちが、あの時はあったのだと。
でも、『あの日』も全部、想い出と一緒に、さよならしてきたのと、牧野は笑う。
『あの日』から3年間、全てを掬ってくれたのは類だった。司への想いも、何もかも。
1年前の『あの日』、初めて類を受け入れた時に、自分の全てを許したと、
司への想いも、恨みも、哀しみも、淋しさも。
全てを許して、類を受け入れたのだと。
牧野。
俺を許さないで。
わかっていて、いつか全てを受け入れるしかないように、少しずつ、少しずつ、仕組んだ俺を。
牧野の幸せを願いながら、叶わぬなら最後に後悔を、と。
最後に全てを、牧野に選ばせた俺を、許さないで。
一番卑怯で、ずるくて、許されないのは、司でも誰でもない。
俺だ。
「類、知ってるよ。」
牧野。
「類。あたしは類の全てを受け入れるよ。」
3年前の『あの日』は、俺の誕生日、だった。
「今までお誕生日に、辛いことをさせてて、ごめんね…。」と牧野は言うけれど。
違うよ、牧野。
『あの日』から、牧野は俺の、全てだから。
誕生日なんか、どうでもいい。
「類、選んだのは、あたしだよ。
類を選んだあたしを、後悔しないで。」
「類、これからいっぱい、埋まっていくよ。類と、この子で、あたしの中が埋まっていくの。」
「全てを流して、全てを救った類が、今度はあたしを満たしていくの。」
「類、幸せになるよ。」
「来年の春は、3人で桜を見て、類のお誕生日をお祝いをしよう。
産まれてきてくれて、ありがとうって。」
「類の幸せが、あたしの全てなの。」
It's all up to you.
全ては君次第。
fin.
It’s all up to you. 2
It's all up to you. 2
あれは牧野と司が別れて1年後。
その年は桜が咲いているのに、雪が降った。
いつものように牧野と一緒に布団に包まって寝ていた。
ふとシーツの冷たさに目が覚めて、抱きしめていたはずの牧野がいないことに気が付く。
時計を見れば、もうとっくに日付けが変わっていて、夜明けに近い時間だ。
どこに行ったのかと起き上がり、ひとまずリビングに行ってみると、牧野はソファに膝を抱えて座って泣いていた。
あの1年前の、泣き方。
今日は、ちょうど1年前の『あの日』だ。
本当なら、笑顔で司との約束を果たしていた、はずの。
牧野。
忘れなくてもいいんだよ。
今までの思い出は全部、今の君を作ってるんだから。
静かに近付いて、隣に座る。
「ごめんね、るい…。」
「あんたのごめんは聞き飽きたって言ってるだろ。」
「うん…。」
牧野。
そっと抱き締めれば、牧野も俺の背中に腕を回して抱きついてくる。
こんなにも、華奢で小さい牧野。
そのまま牧野を持ち上げて、寝室に連れて行き、ベッドに降ろして布団を掛けてやる。
「るい、どうしたらいいのか、分からないの…。」
そうだね、それほどまでに、司を愛していた。
司、お前は何をした?
あんなにも、牧野を愛していたはずなのに。
なぜ、牧野を、牧野の心を裏切った。
牧野。
早く戻っておいで。
それまで、ずっと一緒にいるから。
涙が零れる目尻にキスを一つ。
何度掬っても、零れる涙は止まらない。
いっぱいいっぱい泣いて、全部一緒に流れてしまえば良い。
『あの日』から2年目の春。
この年はいつになく寒さが長引いた年で、桜も咲き始めが遅かった。
やはり牧野はよく寝ている。
休みの日も外に出ることは、ほとんどなく。
それでも、たまに2人で買い物に行って、一緒に料理をするようになった。
ご飯を食べて、お風呂に入って、DVDを見る。
牧野が俺の部屋に来た時のルーティンが出来つつあった。
きっかけは、些細なことだった。
その日は牧野も一緒にワインを飲んでいた。
前より飲むようになった牧野だけど、相変わらず強くはない。
いつもより飲むなと、そこで気が付く。
今日は2年目の『あの日』だ。
そういうことかと、そのまま止めずに、一緒に飲み続けた。
ダイニングからリビングに場所を変えて、チーズや生ハム、ドライフルーツにチョコレートと、買ってきたつまみをローテーブル置いてソファに座り、ワインと共にDVDを見る。
アクション系や、コメディばかりだ。
まだラブロマンス系は見たくない様子。
薄暗くした室内に、スクリーンの明かりが牧野の顔を青白く照らす。
その横顔を、隣に座る俺がジッと眺めていると、視線に気が付いた牧野が俺を見る。
その時、何を考えていたわけでもなく、ただ自然とキスをした。
牧野も驚いた風でもなく、そのまま目を閉じるから。
キスをしたまま、ソファに押し倒して牧野の肌に触れた。
しっとりと、吸い付くような肌に、理性を失いそうになったところで、はたと我に返り、手を止める。
「ごめん、牧野。ちょっと頭、冷やしてくる。」
そう言って牧野から離れようとした、その時。
「るい、やめないで…。」
小さい呟きが牧野から聞こえて、俺を引き寄せキスをしてくるから。
冷やそうと思っていた頭は、酔いと相まって一気に理性を端へと追いやり、ただひたすらに牧野を求めた。
それでも、頭の端っこに辛うじて引っかかっていた理性が、優しく、ゆっくり壊れモノを扱うように、大事に大事に、牧野に触れさせる。
零れる前に、唇で、指で涙を掬う。
泣いても良いんだ。
流れる前に、俺が全部掬うから。
その想いも、恨みも、哀しみも、淋しささえも。
だから、泣け。
空っぽになるまで、泣いてしまえ。
牧野。
俺に身を委ね、揺さぶられながら、その瞳を閉じた瞼の裏には誰がいる?
いつか後悔する日が来るかもしれない。
それは、
牧野か、俺か。
もうすぐ、3年目の春が来る。
今や、肌を合わせることに躊躇いはなく。
いつからか、夜のキスは始まりの合図になった。
その日は、いつになく牧野が積極的で。
まだ3年目の『あの日』まで1ヶ月はあるのに、どうしたのか。
キスをして、肌を合わせながらも牧野の様子を伺えば、やたらと今日は視線が合うことに気が付いた。
牧野、何があった。
俺には言えない、何かがあったのか。
牧野、俺は後悔なんかしない。
あんたは後悔するのかな。
牧野。
後悔しても、しなくても。
俺を、許すな。
牧野。
何よりも、誰よりも。
あんたが、一番、大切で大事なんだ。
だから、司も、俺も、許すな。
積極的な牧野に煽られたフリをして。
俺に翻弄されて、意識が朦朧とするまで牧野の身体を、激しく揺さぶり、穿つ。
そして、思いの全てを牧野の奥深くに注ぎ込む。
何度も、何度も。
後悔すればいい。
あの日、あの時、牧野を選ばなかったことを。
あの日、あの時、俺を選んで、呼んだことを。
牧野。
俺は全部、受け入れるよ。
悔しさも、哀しみも、絶望も、涙も、淋しさも、後悔も。
牧野の全て、何もかも。
俺は、選んだ。
あとは全て、君次第。