sei l'unico che può rendermi felice.

花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Killed by your gaze. 後書き

Killed by your gaze. 後書き







「Killed by your gaze.」をお読みいただきありがとうございました。


クソ忙しい中、ぽわっと湧いて出たお話を書き殴っただけで、今回は特にテーマも何もないです。
ただ、「君の視線に殺される」という言葉を使って、壁の中に二人きりというイメージで、R18が書きたい!で書きました。
そして、最後の最後にぽろりと言うまで「好き」という言葉を使わないで表現できないかなぁなんて、またド素人が無謀なことをしましたね。

「それ」=「視線」なんですけど、あれですよ、「目は心の鏡」で「目は口程に物を言う」って諺。そんな感じです。
このお話、ほとんど会話がないんですよね。2話の類のターンは一切セリフなしの独白だし、3話は言わずもがなアレな言葉と「すき」だけですし。
名前も1話は会話で出てくるまで「あたしと彼」だけだし、2話も「俺と彼女」が主体で「牧野」の名前は確か5回?しか出てきてなかったですね。
道明寺なんて「あいつ」だけで名前すら出てきてないのに、道明寺とつくしちゃんが別れた後の類と牧野の話だと分かるような雰囲気になるのは、それだけ原作の世界観とか設定が確固たるも所以だと思います。原画展行きたかったです。
なのに、はらぺこ02の考えるお話は設定も緩くて適当にも程があるし、行間少ないしうえに句読点は多いし、読みにくかったと思います。精進します。はい。

つかつくのお話の途中で類誕をupしたので、つかつくをお待ちいただいてる方には申し訳なかったです。
類のお誕生日に免じて許してください。

「Re: notitle」がめちゃくちゃ初々しい感じで焦れったく進んでいるので、その反動だと思いますが、エロシーンを書くのがとっても楽しかったです!はい!
冒頭からすでに始まっていましたし、表現があからさま過ぎたので、初めてパスワード掛けました。
ちゃんと設定出来てるか、そわそわして落ち着かなかったです。



そして、おかげさまで体調も落ち着いてきまして、義母のギブスも思いの外早く外れたので、おさんどん解除になりました。
ただ、春休み真っ只中で、毎日子ども三人のケンカと外遊びと習い事と家事に追われております。
まだもう少しゆっくりのんびり更新になってしまいますが、新学期が始まる頃には通常通りに戻れればなと思っています。

それではまた。






はらぺこ02



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Killed by your gaze. 3

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Killed by your gaze. 2

Killed by your gaze. 2 (類つく)





「それ」がいつからと問われれば、始まりは高校生の頃だったと言える。


でも一度は諦めて、ただ幸せでいてくれるならと見守ることにした。
だから付かず離れずの距離を保って接していたけど、そのことに一番に気が付いたのは俺だったと思う。

二人がその結論を出した時、さして驚かなかったのは、それこそずっと見守っていたからに他ならない。
そのことに一番に気付いた時、あいつが本当に彼女の手を離すなら、その離された小さな手は俺が掴もうと心に決めていた。

だって、本当は俺が幸せにしたいし、一緒に幸せになりたいし、そもそもに一緒にいてくれないと息も出来ないのは俺だし。

でも一度は向けられたものを掴まなかったのは俺で、今更そのことを本人に告げたところで同じように気持ちを返してくれると確信を持てるような自信もなかった。
そっちが終わったなら俺と付き合って、なんて言うのもかっこ悪いし。

それでも欲しい。
側にいて欲しい。

だって、俺の知らない他の誰かに攫われたら、一緒にいられない。
今までは俺があいつの親友だったから彼女の側にいられたわけで。
一緒にいられなくなったら、俺は。

だから逃げられないように、いつものように、ゆるりゆるりと側にいて、するりと隣に居座って。
それが当たり前になるように、でも「それ」は強く、見過ごされないように。


その為なら努力は惜しまない。
惜しんでる場合でもないし、横から攫われないように自分の足元をしっかりと固めなければならない。俄然やる気になった俺は、勉強も仕事も選り好みせずに何でもやった。

そんな俺を見た両親は何があったのかと問うてきた。
幼い頃に厳しくし過ぎたことを後悔しているらしい両親は、今まで目的もなく息を吸って吐くためだけに生きているように見えていた俺に、やる気を出させたものが何なのか気にしていたようで。
これは好機かもと切々と話してみれば、両親に諸手を上げて賛成を得られた俺は、あとは彼女に逃げられないようにと少しずつ逃げ道を塞ぐことにした。

進路も、就活も、配属先も、親も、家も、時間すらも。


俺の向ける「それ」に彼女が気付いたのは、いつだったか。
彼女が就職してしばらくした頃だったか、仕事中でも彼女の配属先にふらりと顔を出しては「それ」を見せていたし、会うたびに何を言うわけでもなく、共通の友人たちの前でもただ側にいて「それ」を見せていたから、彼女が気が付いてくれた時は密かに喜んだ単純な俺。

そして、彼女の中にある壁。
実のところ、これが一番大変だった。

大企業の御曹司と恋をすることに疲れていた彼女の恋愛に対する壁は厚く、そして同じような環境にいる俺に対しては更に高い壁をいくつも作っていた。
それを無理矢理壊すようなことをせずに、一つずつ最適なルートを探って乗り越えていった。

俺が大企業の御曹司だから。
家柄が違うし、財産もないから。
教養もそこまであるわけでもないとか、美人じゃないとか、貧相な体付きだからとか、それはもう数え切れないほどの違いを列挙してたけど、俺の「それ」に気付いてないふりをしている壁すらも乗り越えた。

そう、俺は登るより簡単だろう、壊すという行為は出来なかった。
なぜ壊せなかったか。

だって彼女の心は傷付いた。

あいつとの別れが穏やかな別れだったとしても、それまであいつに向けていた彼女の気持ちは本物だった。
その気持ちの形が変わって、そして別れを選んだ時から、それ以上あいつと思い出を積み重ねることはなくなっても。
嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、悔しいことも。
彼女は、あの日々を忘れることは出来ないだろう。

それを未来ではなく過去のものにすることに、躊躇いも後悔もないはずもなく。
友人たちには見せなかった涙を、俺には見せてくれたから。

その後に出来た彼女の心の壁を、壊して何の意味があるのだろうか。
彼女の思い出も、想いも、それは彼女だけのもので、それを守って、そして同じことにはなりたくないと怯えているから作られただろう壁を他人が壊したり、むやみに傷を付けていいものではない。

もしそれを無理矢理、強引に壊して、彼女の心を囲うものがなくなった時。
その時はそれこそ、どこへでも彼女は行けてしまうのではないかという恐怖心。

自分本位な言動で、自己中心的な考えだ。
でも、俺は俺の為に、彼女の心を壊すことなく手に入れたい。

彼女の一番近くにいるのは俺。
一番近くで彼女を見てきたのは俺だ。
壁が作られて、彼女の心が落ち着くのを見ていたのも俺で、その壁がどうやって作られたかを見ていたのも、俺だけ。

牧野、忘れなくていい。
その過去も、想いも、思い出も、それは牧野だけのもので、全部ひっくるめて今の牧野なんだから。

だから壊さずに乗り越えた先は、壁に囲われた彼女の心と、俺の心の二人きり。

絶対に、逃さない。

他の誰でもなく、その手を繋ぐのは、俺でありたい。

彼女の為なら、俺に出来ないことはない。
彼女が壁の中から出たいと思った時、その時は俺も一緒だ。
壁の乗り越え方を知っているのは俺だけだから。
壊さずに、守ってきたのは、俺だから。

その零した涙もため息も、一つ残らず掬って俺のモノにして、身体中に彼女を巡らせたい。


そして気付いた彼女の「それ」。

やっとだ。
少しずつ強くなっていく彼女の「それ」を感じる度に、心が震えた。
早く、早く、早く。

早く気付いて、俺だけになって。

そして俺と彼女の間で揺れる桜色の向こうに見えた彼女の瞳に、「それ」を見た。
どちらからともなく重なった唇に、彼女はまたなんだかんだと理由を付ける。

もう、いいのに。
もう二人きり、なんだから。

勝ち負けなんてどうでもいい。
生かすも殺すも、奪うも与えるも、俺の全てを委ねるから、早く。

俺だけを、見て。

でもそうだな、ずっと二人きりでも良いけれど、俺は一人っ子だったから自分の子どもは兄妹が多いほうが良い。

そう言ったら順番が違うと顔を赤くして怒るけど、いずれそうなるんだから順番なんて瑣末なことで。
だから早く言って欲しいのに、彼女は勝ち負けばかりを気にして、肝心なことに気が付かないふりをする。

それでも俺の瞳に写っただろう自分の「それ」に気付いた彼女は、何を今更恥ずかしがることがあるのか、今度は見ないふりをしようと目を閉じるから。


俺の心臓を、「それ」で何度も貫いて。
早く、その言葉で俺を、繋いでいて。


牧野の「それ」で、俺は何度も殺されたい。
あとは、その言葉があれば、何でも、全て、君のためなら。

牧野。

そしてその熱を、何度も何度でも、君の唇に、身体に、心臓に、心にあげるから。


だから、俺の「それ」に殺されて。







I want to be killed by your gaze.
君の「視線」に殺されたい。





Then, Happy birthday Rui!








「 Killed by your gaze. 3」は、がっつりエロです。
それしかないし、マジのR18なので鍵をかけます。すぐに分かるパスにしますが、うっかりクリック防止として念の為に壁を一枚作っておきます。
読まなくても何の問題もないですし、本当にそれしかないので、読まれる方は自己責任でお願いします。




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Killed by your gaze. 1

Killed by your gaze. 1 (類つく)





それは、ふとした時。


高校生の頃から続いていたらしい「それ」に、あたしが気が付いたのは社会人になる前だったと思う。

ジェットコースターのような恋は最後、緩やかにスピードを落として終わりを告げた。
お互い特に遺恨があったわけでもなく納得の上で終わりにしたその恋は、高校生の頃から見ていた友人たちには、あまりにも呆気ない幕切れのように見えたらしく、それはもう多大に心配された。
確かにまわりを巻き込むだけ巻き込んで大騒ぎして、高校生の恋と言うには一般的なラブストーリーではなかったから、そう思われても当然かもしれないけど。
でも大人になるにつれて世の中が見えてきて、それが家柄とか財産とか、そういうことでもなくて、かと言って別の誰かに気持ちを持っていかれたわけでもなかったけど、常にフルスロットルで走り続けていられるわけでもなかっただけ。

そんな風に終わりにしたあの恋を、まわりと同じように何でどうしてと騒ぐわけでも心配するわけでもなく黙って見ていた人が、一人。


あいつと別れてすぐには自分ですら気付かなかった傷。
終わった恋への想いと思い出の大きさに、それは思ったよりも深く残っていた。

別れたことに後悔はない。それでも、大事にしていたものを未来ではなく過去のものにするということが、こんなにも痛みを伴うものだと知らなかった。
別れから時間が経ったある日突然それに気付いて、図らずもほろりと零れた涙は、いつの間にか隣にいるのが当たり前になっていた彼の指に掬われた。


一つの恋が終わる前から、するりするりと懐に入ってきて、いつの間にか当たり前のように常に隣にいた人。
いつも側にいるからといって何をするわけでもなく、ただ一緒にご飯を食べたり、お茶を飲んだり、課題を見てもらったり、いろんなことへのアドバイスをもらったり、あくまで友達の範囲を越えないものだった。

そして、一つの恋に終わりを告げた途端に、見えた「それ」。

ゆるりと過去に思考を巡らせて辿ってみれば、「それ」は高校生の頃からだったのかな、と想像するに至るのは簡単だった。

「それ」はあたしも同じ意図を持って向けていたことがあったからに他ならない。
だからと言って「それ」に気付いたからと、高校生の頃と同じ意図をあたしが持つことはなかった。
二度と同じことは繰り返したくなくて、あの喪失感と、深い傷を作りたくなくて、心の中に堆く作った壁。
それにあっちがダメならこっちみたいに思われるのも嫌だったし、それは違うと思ったから。


それなのに。
あまりに強い「それ」は段々と無視することが難しくなってきて、高校生の時に一度は終わらせたものが再び頭を擡げてあたしの心に住み始めるのに、さして時間はかからなかった。

なまじ同じ会社にいるものだから遭遇率は高く、そして「それ」は社内でも社外でも同じように、あたしにのみ注がれていた。
ただ、「それ」に気付くのはもちろんあたしだけで、社内の人には全く気付かれていないことだけは不幸中の幸いと言える。


でも、そろそろ「それ」に、あたしは殺される、かもしれない。


「殺される」なんて穏やかな言葉選びではないけど、まさに心境としては「殺される」がぴったり当てはまる気がしてならない。

彼のスタイルはジェットコースターでもないし、常時フルスロットルの乗り物でもなく、あえて言うなら徒歩。

そう、まさに徒歩。そして散歩。

なのに「それ」はいつか「殺される」なんて思わせるほどに強い。

強くて、強すぎて、無視できない。
ふだんはのんびりしているようで、ぼんやりしているようで、のらりくらりという表現がぴったりなのに「それ」だけは強い。

そして、あたしが「それ」をあえて無視していることに気付いたのか、それともその前からだったのか、メキメキとやる気を出し始め、やれば出来る子だと知っていたよなんて親に言われてて、挙句あたしに末永くよろしくねなんて涙ながらに頼まれ託されてしまった。
確実に、正確に、あたしの中に築き上げた壁を壊すことなくロッククライミングよろしく攻略して登って乗り越えてきて、気付けばその壁の中に二人きり。

厄介なことに、向けられるのは「それ」だけで、一度も言葉にされたことはない。
もういっその事、言葉にしてくれれば如何様にも出来るのに。

ずるい。

駆け引きのつもりなのか、それとも無意識なのか。
いや、無意識ってことはないか。
付き合いの長い友人たちの前でもあたしに向けられる「それ」は、あまりにあからさまらしく、社内の人は気付かなくても昔からの友人たちには嫌でも分かるらしい。
そして、よく堪えられるなとも言われる。

うっさい。
あたしだって堪えたくてそうしてるわけじゃない。
これはもう、プライドの問題だ。

言葉にしないで「それ」だけなんて、ずるい。


春の光りが満開の桜の間から柔らかく二人に降り注いでいるような、のどかでお花見をするのにぴったりな陽気に、気持ちもうらうらとして。
広大な敷地に建つ大きなお邸を横目に、広い庭にそびえ立つ大きな桜の木の下で芝生にレジャーシートを広げて寝転ぶ二人。
シートの横には簡易テーブルに椅子もあるけど、それには一度も座らずテーブルの上にはジュースとお菓子と果物が並べられている。

その桜の木から少し離れたところにある花壇には、マーガレットと菜の花と、チューリップが咲いていた。
赤と、白と、ピンクと色とりどりのチューリップ。この花を見ると、あの頃の気持ちと今の気持ちが混ざり合って、この春の香りも、風も、色も、じんわりと広がるように、心の中に染み込んでいく。

お互いの肩がくっつきそうでくっつかない距離で、なのに手はイタズラをするようにくすぐったり、繋いでいるように絡ませたり。
傍から見れば恋人同士の戯れのように見える、かもしれない。


「類」

「なに、牧野」

「言いたいことがあるなら、はっきり言って」

「それは牧野もでしょ?」

「あたし?類が言わないなら、あたしも言いたいことなんてないけど」

「嘘つき」

「言うに事欠いて嘘つきですって?良いよ、それならもう類が言うまで、あたしも言わないから!」

「え、ずるい。そんなこと言われたら俺、牧野に殺されるの待つだけじゃん」

「……うん?」


カラン、とグラスの中の氷が崩れて聞こえた音に、ふわりと類の髪の毛に舞い降りた桜の花びらに、そして、あたしが類の瞳の中を見た時、同じ「それ」をあたしも類にも見せていたことに気が付いて。

ああ、それなら相討ちだなぁ、なんて考えていたら、それだけ瞳の中が見える距離に類がいることに気が付いた。

あ、と思った時には重なっていて、それでも言葉もなく始まろうとしていることに過ぎった不安を、いとも簡単に振り払うように何かを紡いでくれるのかと思ったのに、類の口から聞こえた言葉は何とも穏やかとは言い難いもので。


「牧野に殺されるなら本望だけどね」

「……ふぅん、生かすも殺すもあたし次第?」

「どう?最高にスリルある人生を送れると思わない?」

「なによ!あたしの逃げ道、全部塞いでまで言わせたいことなの?」

「言わせたいね。俺だって必死だから」

「そんなの、ずるい」

「そりゃあ、ずるくもなるよ。俺はジェットコースターより散歩が良いもん。散歩なら寄り道だって遠回りだって出来るし、手を繋いでゆっくり歩いて進んでいけるよ。隣に並んでお互いの顔を見て、あれこれ話しながらね。だからもう、急ブレーキも途中下車も、逃げ道だっていらないんだ」

「やっぱり、類はずるい」

「……俺、子どもは三人以上欲しいな」

「ばっ、なっ、なんでいきなり、順番が違うでしょぉ?!」

「違くないよ。外堀埋めて、乗り越えて、それでも大事に壊さず守ってきたんだ。どっちにしろ結果は同じなんだし、もう俺しかいないだろ?」

類は、俺のしていることを壁の中から黙って見ていたのに、今さら何を言ってるの?みたいな顔をしてあたしを見る。
それに言い返せなくて、うぐ、と言葉に詰まってしまうけど、何も言わないのも悔しくて。

「相討ちなんだからね!おあいこなの!」

「え、おあいこってことは牧野の殺生与奪権、俺が持ってていいの?」

また一つ、カランとグラスの中の氷が崩れて、あたしと類の間に桜の花びらがひらりひらりと揺れ落ちて、ピントが合うのはお互いの瞳だけ。
そのぼやけた桜色の向こうに見えた類の「それ」に、やっぱり殺されるなら類が良いな、なんて思ったりして。

「おあいこって、言ったでしょ!類の生殺与奪権はあたしが持ってるのを忘れないで!」

「うーん、勝ち負けのつもりはないけど、それって言っちゃってるよね?もう同義じゃない?」

「さっき類からキスしてきた」

「えー、牧野からだったよ」

「類からだった!それだって同義じゃないの?」


生かすも殺すも、奪うも与えるも、あなたの気持ち一つで繋がれる人生。

それがジェットコースターに乗るよりこわいことに気が付くのは死ぬ時で良いと思うなんて、あたしの心が「それ」にすでに殺されてしまっていることに他ならないけど、そんなことはきっと、あたしの「それ」に気付かれた時に知られてる。

言葉遊びのような駆け引きも、その言葉を口にしないでいることも、それは類が側にいることが当たり前になってしまったように、いつの間にか我が物顔で隣にいた。

もう一度、類の瞳を覗いて見れば、ビー玉色に染まったあたしの「それ」と目が合って、途端にそれが恥ずかしくなって自分の「それ」に見てないふりをしようと目を閉じれば、フッと類の笑った吐息を感じた後に最初に与えられたのは唇で。

そしてそれは、それまで唯一知らなかった、さっきよりもアツい、類の熱。








Killed by your gaze. 
あなたの「視線」に殺される。













It’s all up to you. 後書き


It's all up to you.後書き





It's all up to you.」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。



つくしちゃん目線じゃないお話は初めてでしたが、いかがでしたでしょうか。


It's all up to you. 

「全ては君次第」ということで。

このお話は共依存ぽい感じがしますね、お互いに。

前の二作とは打って変わって、弱々なつくしちゃんでした。


まぁ原作を読む限りでは、司が浮気とかなさそうですけども。

そこから始まる類つく。

でも司だって男の子だもん!遠くの滅多に会えない恋人より、近くの女に温もりを求めてしまうこともあるかもしれない、かもしれない。

原作では、司とつくしちゃんのやり取りって、ほんの数ヶ月内の話なんですよね。

ジェットコースターどころの話じゃないです。フリーフォールです、フリーフォール。


そして司がNYに行ってしまうと、自然に類との時間が圧倒的に多くなる。なんせソウルメイト。

接する時間が多ければ良いって話でもないですが、3年目の浮気をした司に、将来を夢見て頑張るつくしちゃんには耐え難いことだと思うんですよ。貞操観念すごいですし。

元々つくしちゃんには『困った時の花沢類』っていう主観的なところがありましたから、何かあったら頼るのは類だろうなぁっていう。

司との将来の為に3年間頑張って、この仕打ち。やる気も何もないですわ。


類は類で、まだ司を好きだろうつくしちゃんに付け入る真似は出来ないし、とにかく支えてあげたい一心で。

それでもやはり類だって20代になったばかりの男ですから、弱々な女の子が近くにいたら気持ちは傾いちゃいますよね。

一度は諦めたものの、それは嫌いになったからとかじゃなく、司を裏切れないからで。

その司に類も裏切られたわけです。


司とつくしちゃんが別れて2年後に類と身体の関係が出来るわけですが、ここではもう、つくしちゃんは類を好きになってる設定です。

既に司よりも多くの時間を一緒に過ごしていますし、何も聞かず話さず、ひたすらに側にいてくれる。絶対的信頼度が違います。

司と類との圧倒的な差を作るならここだと思いました。

ただ、お互い言葉にしないのは、やはりそれだけ2人にとって司という存在の大きさのせいでしょうか。2人とも司の存在に影響されての今なので。ちょっと臆病になってるというか。

そのせいで齟齬が生じますけどね。


それに気が付かない類は、まだつくしちゃんは司を好きだと思ってて、3年目にして、いつもと様子の違うつくしちゃんに、それでも司のところへ戻るなら後悔すればいいと、結構打算的に動きます。

言うなら最初から打算的と言えばそうなんですけど。つくしちゃんを少しずつ囲ってますからね。

というか、もし司のところへ戻るつもりなら、もう類とセックスしないよつくしちゃんは!目線も合わないよ!って類に言いたい。

そもそもに、このお話のつくしちゃんは、気持ちもなく身体を繋げられるような子じゃないですわ。

そこは恋は盲目とも言えるべきところでしょうか。


そして。類的には赤ちゃん出来ても、出来なくても良かったんですけどね。

もし、妊娠してなかった場合、つくしちゃんが司と復縁を決めたとして、類との身体の関係を司に隠すことはないと確信してます。


つくしちゃんは、そういうの隠せないだろうし。


復縁後に妊娠発覚しても、今さらつくしちゃんから司を振ることも出来ないし、自分が浮気したせいで類とそういう関係になっただろうことを司は責められるはずもない。

それでも授かった命に罪はないですから。

司とつくしちゃんなら、絶対に受け入れると分かってて。

司の浮気はあったものの、2人の強い絆を一番近くで見ているし、類は自分は選ばれないと思い込んでます。

まぁ言うなれば、自分の復讐心の為に、2人に後戻り出来ない後悔を与えることにした、無責任野郎です、類は。

(あくまで、このお話の類のことですので!)


気持ちは分からなくもないですけどね。

だって、類も司に裏切られ、類がつくしちゃんに想いを寄せていたのを知っていて、頼んでも断らない、きっと助けてくれると分かってて呼び出したのは、つくしちゃん本人ですから。

ずるいよ、牧野。ってところです。

それでも好きなことをやめられない。激しいジレンマ故の、暴走的な。

類も、決めたらすぐ行動する人間だと思ってます。これは、つくしちゃん限定か。

かもしれないの時点で、NYの時はつくしちゃん迎えに行ってキスしてますもんね。



一方のつくしちゃんは司に復縁を求められた瞬間に、やはり類しかいないと確信します。

ずっと側にいるのは類でしたし、『あの日』に追いかけてくることも謝りもしない男とは違うんですよ。そんな男に3年後に復縁迫られても。(原作の司はそんなことしないと信じてる派です。)


その夜に類と視線が合うのも、改めて類が好きだなぁっていう。

類は大きな勘違いをしていますが、つくしちゃんが大事すぎて、身誤ってます。

コントか。


赤ちゃんがいると分かったつくしちゃんは、司との全てを決別する為に、司のところへ行きます。

それが、今まで側にいて支えてくれた類への、せめてもの救いで、誠意だと。

つくしちゃん的には、もう既に1年前に類を選んでますけど、そもそもは司との別れが理由で側にいたわけですから、もう違うよ、ちゃんと類を見てるよっていう、けじめ的な。

司の全ては今さらで、今を生きているのは類ですから。


司との全てを過去に、思い出にして、きちんと決別してきた。

自分の負の感情ごと全てを受け入れて、3年間ずっと側にいてくれた大事にしたい人の赤ちゃんがお腹の中にいて。


そりゃもう幸せですから。

なのに、帰ってきたら類がいない。

赤ちゃんいるって言いたいのに、いない。

類!お前、なに出張なんか行ってんだ!と書きながらセルフツッコミです。わはは。

まあ同じ会社に勤めてるので、出張なのはすぐ分かりましたけど、っていう。

妊娠初期のフライトはオススメしませんが、そこは妄想の世界なので。ご容赦ください。



初めて季節感も出してみましたが、これもなかなか楽しい。

何月とか使わないで季節感出してみたいっていう、ど素人が無謀な挑戦です。

桜も、なごり雪、遅咲き、早咲きと、なんとなく、つくしちゃんの心情と重ねてみてます。

そして麦秋。つくしちゃんは麦ではないですけど、収穫です。やっと捕まえました。お互いをね。


3年目のつくしちゃんが春にいつもより寝ているのは、春だからではなく、司との別れを忘れたいからでもなく、妊娠してるからです。

あれ、不思議なくらい眠くなりますね。


書いてて、とても楽しかったお話でした。

掬うと救うを混ぜて書くのも楽しい。

何を掬って誰を救うのか。




次はまた、つかつくの予定です。

軽快な話を書くつもりが、思ったより重めな感じに。

そこまで重くもないですけど、童貞でも処女でもない、少しだけ大人になった2人のお話です。

こちらもお楽しみいただけると良いのですが。

それではまた。





はらぺこ02






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It’s all up to you. 3(完)


It's all up to you. 3()




『あの日』から3年目。

今年も春はくる。この年は暖冬の為か、桜も満開になるのが早かった。




今年も『あの日』は俺の部屋で、昼間はいつものルーティンで、夜も肌を合わせて過ごした。

いつになく穏やかで、いつの間にか一緒にいても泣かなくなった牧野は、それでも普段より昏々と寝ていた。

前より寝ている気もするけれど、やはり『あの日』が過ぎる、春だからか。



そして早咲きの桜の花が散り終わりそうな、3年目の『あの日』が過ぎて、すぐのこと。


突然、牧野がどこかへ行った。

仕事も有給を取って、

俺に、何も言わずに。




牧野。



3年振りに司に電話をする。やはりすぐに繋がる電話。


「牧野、そっちにいるよね?」

『あぁ、いる。』

「司、俺は、お前を一生許さない。だからお前も、俺を許すな。」

『類。牧野は、』

「司、牧野を許してやって。全部俺が、悪いから。」



電話を切って、そのまま電源を落とす。





さあ、行こう。



牧野、もう泣くな。

全部、空っぽになるまで、俺が掬ったから。

もう一度、満たしてもらえば良いんだよ。



俺は、あんたの幸せが、笑顔があれば、それだけで。









それから、約二ヶ月後。

日本は麦秋の季節を迎え、桜の木も若葉を繁らせ、本格的な夏への準備を始めていた。


長期の海外出張は『あの日』から初めてのことだった。

今まで牧野が心配で、なるべく避けていたけれど。


牧野はもう、いないから。

牧野の香りが染みついた、思い出ばかりのこの部屋に。



帰国したら、日本はもう夜だった。

空港からそのまま帰宅。

すぐに寝たい。

早く眠りについてしまいたい。


玄関を開けて、靴を脱ぐ。

灯りも点けず、暗い室内に荷物とコートをリビングのソファあたりに放り投げ、スーツのまま寝室のベッドに身を投げる。



「ぐぇっ、」



え、なに、今の。


あひる?かえる?

なに?




まさか、そんなはず、ない。


ふうわりと広がる、牧野の香り。




「牧野?」


「るい。」



どうして、ここにいる。


司のところへ、行ったのに。




いつものように、布団の中で寝転んで。

掛け布団から顔だけを出し、月明かりの中で俺を見つめる牧野が、ぼんやりと見えてくる。


「類。」



牧野が、笑った。


なんで今、どうして?



「ひどいよ、類。帰ってきたらいないんだもん。電話もずっと電源切れてるし。出張なら教えてよね!知らなくて、いっぱい泣いちゃった。」


牧野?笑えるようになったの?

司は、どうした?


「類、」



「類、ありがとう。」


なんで?どうして?司は?

疑問ばかりが浮かんでくる。

それでも、なによりも、


牧野が笑ってるから。



「牧野、」

「うん。おかえり。」


「牧野。」

「類、苦しいよ。」



牧野を引き寄せ、かき抱く。

牧野。


司を、選んだと思ったのに。

なぜ、戻ってきた。

司は全てを、許すだろう。

なのに、なぜ。



「類、あたしと、一緒に生きてくれる?」


牧野。


「類。類がいなかったら、あたしダメになってた。」


「類が全部、救ってくれたんだよ。あたしの全部、何もかも。類がいたから、類がいないと生きていけなくさせといて、今さらあたしを諦めないでよ。類の側で、ずっと一緒に生きていきたいの。」




「あたしも、お腹の中にいる、この子も。」




牧野、牧野、牧野。



俺を許さなくていい。

だから、側にいて。

ずっと、側にいるから。


牧野、愛してるよ。

ずっと、ずっと。


牧野の幸せを、いつも願っているよ。

いつでも、どんな時でも、安心して笑えるように。




牧野の幸せが、俺の全てだ。




「類、今度はあたしが掬うよ。類の全て、何もかも。」


「類、愛してるの。」







牧野が積極的だったあの夜、やはり司から復縁の申込みがあったと言う。

わざわざ日本にやって来て、あの時は悪かったと言い訳もせず、ひたすらに土下座をされた、と牧野は笑う。


なぜ、司を選ばなかった?

牧野は司を、愛していたはずなのに。



突然いなくなった牧野は、復縁に合意する為にNYに行ったのではなく、今までの司との思い出を、全て返しに行っただけ。


あの日あの時までの、思い出を、全て。


3年前のあの時、すぐに追いかけてきて欲しかった。

それで謝られても、すぐに許すことは出来なかっただろうけど、まだやり直したい気持ちが、あの時はあったのだと。

でも、『あの日』も全部、想い出と一緒に、さよならしてきたのと、牧野は笑う。



『あの日』から3年間、全てを掬ってくれたのは類だった。司への想いも、何もかも。


1年前の『あの日』、初めて類を受け入れた時に、自分の全てを許したと、

司への想いも、恨みも、哀しみも、淋しさも。

全てを許して、類を受け入れたのだと。




牧野。


俺を許さないで。


わかっていて、いつか全てを受け入れるしかないように、少しずつ、少しずつ、仕組んだ俺を。


牧野の幸せを願いながら、叶わぬなら最後に後悔を、と。


最後に全てを、牧野に選ばせた俺を、許さないで。




一番卑怯で、ずるくて、許されないのは、司でも誰でもない。


俺だ。




「類、知ってるよ。」



牧野。



「類。あたしは類の全てを受け入れるよ。」





3年前の『あの日』は、俺の誕生日、だった。

「今までお誕生日に、辛いことをさせてて、ごめんね。」と牧野は言うけれど。



違うよ、牧野。

『あの日』から、牧野は俺の、全てだから。

誕生日なんか、どうでもいい。



「類、選んだのは、あたしだよ。

類を選んだあたしを、後悔しないで。」


「類、これからいっぱい、埋まっていくよ。類と、この子で、あたしの中が埋まっていくの。」


「全てを流して、全てを救った類が、今度はあたしを満たしていくの。」




「類、幸せになるよ。」


「来年の春は、3人で桜を見て、類のお誕生日をお祝いをしよう。

産まれてきてくれて、ありがとうって。」




「類の幸せが、あたしの全てなの。」





It's all up to you.

全ては君次第。






fin.








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It’s all up to you. 2


It's all up to you. 2





あれは牧野と司が別れて1年後。

その年は桜が咲いているのに、雪が降った。



いつものように牧野と一緒に布団に包まって寝ていた。

ふとシーツの冷たさに目が覚めて、抱きしめていたはずの牧野がいないことに気が付く。

時計を見れば、もうとっくに日付けが変わっていて、夜明けに近い時間だ。

どこに行ったのかと起き上がり、ひとまずリビングに行ってみると、牧野はソファに膝を抱えて座って泣いていた。



あの1年前の、泣き方。

今日は、ちょうど1年前の『あの日』だ。

本当なら、笑顔で司との約束を果たしていた、はずの。


牧野。

忘れなくてもいいんだよ。

今までの思い出は全部、今の君を作ってるんだから。


静かに近付いて、隣に座る。



「ごめんね、るい。」


「あんたのごめんは聞き飽きたって言ってるだろ。」


「うん。」



牧野。


そっと抱き締めれば、牧野も俺の背中に腕を回して抱きついてくる。

こんなにも、華奢で小さい牧野。

そのまま牧野を持ち上げて、寝室に連れて行き、ベッドに降ろして布団を掛けてやる。



「るい、どうしたらいいのか、分からないの。」


そうだね、それほどまでに、司を愛していた。



司、お前は何をした?

あんなにも、牧野を愛していたはずなのに。

なぜ、牧野を、牧野の心を裏切った。




牧野。

早く戻っておいで。

それまで、ずっと一緒にいるから。


涙が零れる目尻にキスを一つ。

何度掬っても、零れる涙は止まらない。

いっぱいいっぱい泣いて、全部一緒に流れてしまえば良い。







『あの日』から2年目の春。

この年はいつになく寒さが長引いた年で、桜も咲き始めが遅かった。



やはり牧野はよく寝ている。

休みの日も外に出ることは、ほとんどなく。

それでも、たまに2人で買い物に行って、一緒に料理をするようになった。

ご飯を食べて、お風呂に入って、DVDを見る。

牧野が俺の部屋に来た時のルーティンが出来つつあった。




きっかけは、些細なことだった。


その日は牧野も一緒にワインを飲んでいた。

前より飲むようになった牧野だけど、相変わらず強くはない。

いつもより飲むなと、そこで気が付く。


今日は2年目の『あの日』だ。

そういうことかと、そのまま止めずに、一緒に飲み続けた。

ダイニングからリビングに場所を変えて、チーズや生ハム、ドライフルーツにチョコレートと、買ってきたつまみをローテーブル置いてソファに座り、ワインと共にDVDを見る。

アクション系や、コメディばかりだ。

まだラブロマンス系は見たくない様子。



薄暗くした室内に、スクリーンの明かりが牧野の顔を青白く照らす。

その横顔を、隣に座る俺がジッと眺めていると、視線に気が付いた牧野が俺を見る。

その時、何を考えていたわけでもなく、ただ自然とキスをした。

牧野も驚いた風でもなく、そのまま目を閉じるから。


キスをしたまま、ソファに押し倒して牧野の肌に触れた。

しっとりと、吸い付くような肌に、理性を失いそうになったところで、はたと我に返り、手を止める。



「ごめん、牧野。ちょっと頭、冷やしてくる。」


そう言って牧野から離れようとした、その時。




「るい、やめないで。」



小さい呟きが牧野から聞こえて、俺を引き寄せキスをしてくるから。


冷やそうと思っていた頭は、酔いと相まって一気に理性を端へと追いやり、ただひたすらに牧野を求めた。

それでも、頭の端っこに辛うじて引っかかっていた理性が、優しく、ゆっくり壊れモノを扱うように、大事に大事に、牧野に触れさせる。



零れる前に、唇で、指で涙を掬う。


泣いても良いんだ。

流れる前に、俺が全部掬うから。

その想いも、恨みも、哀しみも、淋しささえも。



だから、泣け。

空っぽになるまで、泣いてしまえ。



牧野。

俺に身を委ね、揺さぶられながら、その瞳を閉じた瞼の裏には誰がいる?



いつか後悔する日が来るかもしれない。


それは、

牧野か、俺か。








もうすぐ、3年目の春が来る。


今や、肌を合わせることに躊躇いはなく。

いつからか、夜のキスは始まりの合図になった。


その日は、いつになく牧野が積極的で。

まだ3年目の『あの日』まで1ヶ月はあるのに、どうしたのか。

キスをして、肌を合わせながらも牧野の様子を伺えば、やたらと今日は視線が合うことに気が付いた。



牧野、何があった。


俺には言えない、何かがあったのか。





牧野、俺は後悔なんかしない。


あんたは後悔するのかな。



牧野。

後悔しても、しなくても。

俺を、許すな。



牧野。

何よりも、誰よりも。

あんたが、一番、大切で大事なんだ。



だから、司も、俺も、許すな。




積極的な牧野に煽られたフリをして。

俺に翻弄されて、意識が朦朧とするまで牧野の身体を、激しく揺さぶり、穿つ。


そして、思いの全てを牧野の奥深くに注ぎ込む。

何度も、何度も。




後悔すればいい。


あの日、あの時、牧野を選ばなかったことを。


あの日、あの時、俺を選んで、呼んだことを。




牧野。

俺は全部、受け入れるよ。

悔しさも、哀しみも、絶望も、涙も、淋しさも、後悔も。


牧野の全て、何もかも。





俺は、選んだ。


あとは全て、君次第。








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It’s all up to you. 1

It's all up to you. 1




牧野と司が別れたのは、桜が咲き始め、そろそろ満開という頃だった。



まさかの司の浮気。
段々と連絡が取れなくなった司にサプライズでNYへ会いに行ったら、最悪なサプライズをされたのは牧野だった。

帰国日は聞いていたから空港へ迎えに行こうと思ってはいたが、NYに行って次の日の便に乗って帰ってきた。

突然かかってきた電話に出てみれば、羽田にいるから迎えに来て欲しいと言われ、急いで空港へと向かう。
牧野は国際線到着ロビーのベンチに一人、ぼんやりと座っていた。



「牧野!」
司に会いに行ったのに、牧野が笑ってない。

何があった?
慌てて駆け寄れば、牧野は俺の顔を見て静かにポロリと涙を零した。


「類、」



「類、道明寺と、別れた。」


それだけ呟くと、またポロリと涙が零れる。
見ていられなくて思わず抱き締めれば、声も出さずに泣き続け、そしてそのまま眠ってしまった。

空港の到着ロビーで眠ってしまった牧野を抱き上げて車に乗せたは良いが、この状態の牧野を家族と離れて一人で暮らしている部屋に置いていくことなど出来ず、とりあえず自分のマンションに連れて帰った。




牧野を寝室のベッドに寝かせ、別室で司に電話をしてみる。
いつもはどれだけ電話しても繋がらないと総二郎もあきらも言っているのに、今日はすぐに繋がった。


「司、どういうこと?」
『類、悪い。』
「それじゃ分かんない。」
俺が、浮気した。それで別れ話になった。それだけだ。』

司が浮気?それだけ?
牧野にとっては、それだけって話じゃないだろう。

「司、なんで俺に謝るの?牧野には?」
『牧野は、部屋を飛び出してそのまま、』
「追いかけもしなかったってこと?」
あぁ。』

ふーん。司、牧野が許しても、俺は絶対に許さないから。」
『分かってる。』
「分かってない。分かってないから、こういうことになるんだろ。」


そう言って電話を切った。
牧野はそれから2日間眠り続けた。



牧野。



牧野。


あんたは、どうしたい?


俺は、どうしたらいい。








あれから3年。
牧野はよく寝るようになった。
俺よりも、寝る。

ふらりと俺の部屋に来ては、いつの間にか寝ていることが多い。
今日も俺が仕事から帰ってきて玄関を開けてみると、牧野の靴。
また来てるなとリビングに入れば、ソファの背もたれに上半身を預けてウトウトとしていた。



「牧野。」
声をかけると牧野は一瞬開けた目を、すぐに閉じてまた寝てしまった。
仕方なく横抱きにして寝室に運ぶ。

牧野をベッドに降ろして離れようとすると、首にしがみついてくる。
ふぅ、と一つため息をつく。
いつものことだけど、せめてスーツは脱ぎたい。

「牧野、スーツ脱いだらすぐに戻ってくるから。」
そう言うと、あっさりと腕は離された。

スーツとワイシャツを脱いで、肌触りの良い牧野お気に入りのスウェットに着替える。
そして、牧野の隣に潜り込む。

「牧野。」
「るい、」

しっかりと牧野を抱き締めて、眠る。
牧野も俺の体にすがりつくように身を寄せてくる。
もう、これも3年目。

たぶん、眠れなくなると俺のところに来る。特に春になると酷くなるから、そういうことだろう。



牧野。
『あの日』から、もうすぐ3年が経つよ。




牧野と司が別れたのは、あの約束の4年まであと1年だった。
『あの日』から牧野は笑わなくなった。
家族にも、友達にも、俺の前でも。

なにもかも気力がなくなってしまったような牧野は、大学も必要最低限しか来ず、就活すらもしなくなった。


俺は初めて自分から両親に電話をした。
そして、牧野を花沢物産に就職させ、人事総務部の庶務課で働かせた。
それなりに忙しいが、あまり人とは接しない。
昔の牧野らしくない仕事かもしれないが、『あの日』から愛想も素っ気も笑顔もないから、どうしようもない。
それでも仕事を始めれば、きっちりと熟す。
牧野にとって、働くとは性分のようなものなのだろう。

住む場所も、俺が住むマンションの隣の部屋に引っ越しをさせた。
とにかく、牧野を俺の知らないところに一人にさせたくなかった。



花沢物産で専務をしている俺は、出張が多い。短期の海外出張もよくある。
そんな時は牧野が心配になる。
俺がいなければいないで何とかしているようだけど、帰ってくると3日は続けて部屋に来る。
そしてずっと俺の横で寝ている。



牧野。


今年も、もうすぐ春が来るよ。



牧野。


あんたは、どうしたい?