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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Call out my name. 1

Call out my name. 1





あの雨の日。
傘も差さずに、二人でずぶ濡れになって。
雨で涙を隠して、道明寺に「好きじゃない」の言葉とともに別れてから約6年。


私は今、道明寺HDで働いている。
別れたのに、なぜ道明寺HDにいるのか。


それは、あたしが道明寺への想いを断ち切れなかったから。
本意ではなくとも、あんな言葉を道明寺に投げつけて。
事情があったとはいえ友達を優先しておきながら、今さらどの面下げてと言われればそれまでなんだけど。
どうしようもない。好きなものは好き。


あのあとすぐに英徳高校は自主退学し、公立高校へ編入して卒業まで通った。
でも英徳での、ほんの数ヶ月で起こった出来事のインパクトはすごかった。
公立高校は平穏だ。そして平凡なのだ。
平凡最もたる、あたしが言うなという話なんだけど、一番普通を求めていたはずのあたしが、あの強烈な男を忘れられるはずもなかった。

道明寺を忘れようとして、告白してくれた男性とお付き合いしたこともあった。
でも何人と付き合ってみても、体の関係を持ってみても、しっくり来ることはなかったし、何より自分から好きになれた人はいなかった。

やはりあいつは普通とは対極を行く男だ。
あいつの面影をいつまでも振り切れないあたしは、好きという感情が振り切れてしまったのだと思う。
今さら道明寺とやり直したいとか、そんな大それたことは微塵も考えていない。
経済誌や新聞などにインタビューや写真が掲載されれば切り抜いて集めたり、テレビのビジネスニュースでチラリと少しでも映った姿が見られれば良いなどと、最早ただのファンで追っかけの様なことをしていた。



道明寺HDは日本で最も就職するのが難しい企業と言われている。
そこへ入社する為にはどうしたらいいのか考え、まずは道明寺HDに就職率の高い大学を調べて、その大学へ入学した。
もちろんアルバイトもしていたけれど、英徳の学費を稼がなくてよくなったのは大きかった。
両親も玉の輿など夢のまた夢だと悟ったのか、真面目に働き始めたおかげで、勉強する時間はたくさんあったから、大学での勉強の傍ら、就職に有利と言われる資格もできる限り取りまくった。

道明寺HDと花沢物産、美作商事はインターンシップも行った。大河原財閥は日程が合わなくて行けなかったのが心残りだけど。
道明寺HD、美作商事、花沢物産、大河原財閥をメインに他にも何社かと道明寺財閥系の子会社の就職面接を受けた。これは少しでも道明寺との遭遇率を上げる為。

そして念願の道明寺HDに内定をもらった時の感動は、なんとも筆舌に尽くしがたいほどの喜びだった。
ただ、少しだけ懸念はあった。あれだけ大騒ぎして、周りを巻き込んで。
道明寺家には近付かないと、道明寺のお母さんと約束をしたから。
道明寺『家』ではなく、道明寺『財閥』だから大丈夫かな、なんて屁理屈捏ねて。
何しに来たと面接すら許されず、門前払いされるかと思いきや、こんな何年も前に少し彷徨いた程度の溝鼠など気にすることもないのだろう。
何もなかった。

さらになんと!この年の新入社員は幸運の新入社員と呼ばれた。

それは、あの道明寺 司が専務としてNYから日本に帰ってきたから。
あたしはもう、それは飛び上がらんばかりに喜んだ。
道明寺を間近で見れるチャンスかも!
なーんて喜んだのも束の間、専務と新入社員の接点など全くなかった。
唯一、姿を見たのは入社式で、道明寺財閥の後継者として祝辞を述べた時だけだった。


もうガン見。
久しぶりに生で見た道明寺は、美少年から美青年へと眉目秀麗はそのままに、その場にいるだけで周りの雰囲気さえも華やかなものに変えてしまうような素敵な男になっていた。
壇上に立った時、道明寺は話をする前に新入社員をぐるりと見渡した。
一瞬目が合ったような気がしたのは完全に妄想だと思う。アイドルのコンサートに行って、あれは絶対に私を見てくれた!みたいな感覚に近いかも。
6年前に自分を振った女など道明寺は覚えてもいないだろうし、もう姿が見れただけで眼福。


あたしの配属先は総務部だった。
同期の田中さんと佐藤さんと一緒に配属されたのは嬉しかった。インターンシップの時に知り合い、それから幾度となく会って就活結果を報告しあったり、色々と相談する仲になっていた。もちろんあたしが道明寺ファン(!)なのも知っている。

「牧ちゃん!やったね、道明寺専務見れたじゃん!」
「まさか日本に帰国して専務になるとは思わなかったよね!もうめちゃくちゃ嬉しいよー!」

入社式の後に田中さんと佐藤さんが声をかけてくれて、そんなふうに3人でキャーキャーしたりして。


総務部の仕事は多岐に渡る。
基本は事務作業で、処理消耗品や備品を購入する際に必要な受発注に関する書類や稟議書、株主総会の企画・運営に配布資料作成、社内イベントの企画・案内、オフィスの衛生・管理に伴うメンテナンスや修理対応、業者への依頼、他社から各部への電話応対などなどなど…。
これもまた部内でそれぞれ課に分かれていて、新入社員はローテーションで各課にてOJTを受ける。

ただ、秘書課も総務部の管轄内なんだけど、ここだけは上層部の役員たちと直接関わる為に機密情報が多く、他の課とはほとんど関わらず独立した状態だ。
役員フロアはセキュリティも厳重で限られた人しか入れず、外部の人間は中から許可されないと扉すら開くこともできない。
その為、備品等も秘書室の人が自ら取りに来るらしい。



ある日、備品補充で各部署をまわり総務部に戻ってきたら、秘書室から内線入った。
以前依頼していたらしい、新しい名刺を今から総務部へ取りに行くから、用意しておいて欲しいとのことだった。
声の主は女性だったから、てっきりその人が来ると思っていた。
だけど、総務部に来たのは秘書課の西田課長だった。

以前、道明寺のお母さんが五千万円持ってきた時に一緒にいた人だ!と思い出したのだけど、その西田さんもあたしをジーッと見ていた。
まさか覚えてないでしょ!と高を括っていたら、「牧野さんですか。」と声をかけられた。

嘘でしょ、まさか覚えてたなんて!
「お久しぶりです…。」と思わず返したものの、特に他に会話もなく、依頼された名刺を確認してもらい、ただ渡して終わった。
たまたま近くにいた田中さんに、「どういうこと?西田課長にお久しぶりって何で?!」と聞かれ、咄嗟に出た言葉は、

「あの、あれよ!ほら、インターンシップの時!
あー、あたし秘書検定も持ってるでしょ?だから、秘書の仕事ってどうなのかなーって質問したの覚えててくれてたのよ、きっと!流石、秘書課の課長さんだよね〜!」

色々な資格を取ったけど、秘書検定の資格を持ってて良かったと心底思ったのは、この時が初めてだった。
インターンシップの時に西田課長がいたかどうかは覚えてないけど。




それから数ヶ月後。
この日は、会議資料をコピーして人数分用意しておいてと上司に指示を出され、佐藤さんと二人で作業していた。
会議室に持っていき、資料とお茶のボトルを人数分テーブルに並べ置いていく。

その時に、あたしの大事な大事な土星のネックレスを落としてしまった。

ずっと大切にしてきたネックレス。
洋服で隠れるように、長いチェーンに変えて付けていた。
出勤前に付けた時、少し金具が緩んでいるような気がしたから、帰りに手芸屋さんへ寄って新しいチェーン見てみようと思ってたのに。
いつ落としたのか、全く気が付かなかった。

会議中は中に入ることはできない。
会議が終わったのは、お昼休みの直前で、上司が他の誰かに頼む前にと片付けを買って出て、急いで会議室へと向かう。
早く見つけないと、と気持ちは焦るばかりで、這いつくばって足元を見ていたせいか、人が来ていたことに気が付かなかった。

「探してるのはこれか?」

急に頭上から声がして、ビクッとしてしまった。
顔を上げてみたら、声を掛けてきた人物の顔より先に、土星のネックレスが目に入る。

「それ!あった!ありがとうございます!」

見つかった安心感に、笑顔でお礼を言って、更に顔を上げれば。


なんでここに?!
今まで入社式以来、姿さえ見かけなかった道明寺がいた。
土星のネックレスを人差し指に引っ掛けてブラブラさせながら、無表情であたしを見下ろしている。

会議も開始前に資料とお茶を並べただけで、誰が出席するのかなんて知らなかった。
6年振りに道明寺本人と対面したことと、ネックレスが見つかった安心感とで、ごちゃまぜな気分だった。
でも今は何よりもネックレスを返してもらおうと手を伸ばしたら、避けられた。

は?

「すみません、返してもらえませんか?」と聞いてみれば、怒ったような顔で「やだね。」と言われた。
やだって言った?何言ってんの?と思ったけど、もうこの人は高校生の頃とは違う、専務だから!この人は専務!と心の中で唱える。

「専務、それ、私のなんです。返してください。」

もう一度お願いしてみるも、返事がない。
これから片付けもあるし、お昼ご飯も食べたい。
早く返して欲しくて、焦りが見えたのか、道明寺が口を開いて尋ねてきた。

「これがお前の物だと言う証拠は?」

そう聞かれて、何と答えたらいいのか分からなかった。
だって、道明寺がくれたんじゃない!
そう言いそうになるけど、こんなことを聞くってことは、やはりあたしのことなど、もう忘れてしまったということだろうか。

もう6年も前のことだ。
思わず自嘲的な笑みが溢れてしまった気もするけど、どうしようか。
証拠なんて言われても、証明など出来ない。
渡した本人すら忘れているのか、渡そうとしないのだから。
仕方ない。

「あの、専務はお忘れかもしれないですけど、それ、専務からいただいた物なんです。でも、証拠なんてないので。もし、私が持っているのが不愉快だと言うのなら、もうお返ししますから。失礼します!」

そう言って会議室を飛び出した。


そうだよね。
もし、あたしのことを覚えていたとしても、いろんな想いを込めて渡してくれただろうネックレスを、心無い言葉で振った女がまだ持ってるとか気持ち悪いよね。

どちらにしても良い考えには思い至らなくて、淋しくなってしまった胸元で手をギュッと握り締め、悲しい気持ちに堪えるしかなかった。






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