All you need is love. 9
All you need is love. 9
「あの日ってどの日?どの朝のこと…?」
そう聞いたら、道明寺は目に見て分かるほど青筋を立てて怒り始めた。
「おまえマジでふざけてんのか?あの日っつったら、久しぶりに再会したのに、おまえが酔っぱらって泣いて部屋を飛び出したあの日と、次の日の朝しかねぇだろうが!」
えーーー!!!やっぱりあの日なの?!
えっ、えっ?!隣で寝てたの、あれ道明寺だったの?!
まさか!気が付かないなんてことある?!
うそうそ!まさか!違うでしょ?!いやっ、違くても困るけど!驚き過ぎて言葉もなく、呆然としているあたしに道明寺は更に言葉を続けた。
「おい!どの日か思い出せねぇとか!まさかおまえ、連絡しなかった5年の間に酔って他の男と一夜を共にして朝を迎えるなんてことしてたのか?!この淫乱女!」
「いっ、淫乱?!バッカじゃないの?!ふざけないでよ!あたしがそんなことするわけないでしょうが!」
あたしのこと何だと思ってんのバカ男!いや、問題はそこじゃない!
「あたしのことはどうでも良いわよ!それよりも!あんただって婚約者いるのに、何あたしとヤッちゃってんのよ!」
「は?!どうでもよくねぇだろ!自分の女が他の男と寝てたら大問題だろうが!それに婚約者はおまえだろ!婚約者とセックスして何で本人に責められなきゃなんねぇんだ!」
ダメだ!話にならない。
連絡しなかったあたしが悪いけど、5年間会話もなかった人と話をするのが、こんなにも難しくなるものなのか。
それとも道明寺だから話にならないの?
それに自分の女って何?!婚約者があたし?!あんたの婚約者は、どこぞの御令嬢でしょうが!もう!連絡してない5年の間に、婚約者がいながら別の女と寝るような男になっちゃったわけ?!
あーっ!
これ普通に犯罪だよね?!婚約者のいる人と肉体関係持ったら、貞操義務違反だよ!あたしが訴えられる側じゃないの!
こんな時なのに、慰謝料の相場っていくらだっけ?とか自分の身に何か起こった時に、法律とか判例とか頭に浮かんじゃうもんなんだ、なんて実感してる場合じゃない!
頭を抱えて、うんうん唸っていたら、また道明寺が怒鳴ってくる。
「おい!聞いてんのか!どこのどいつだ!全部吐け!俺はおまえしか知らねぇのに、ふざけんなよ!おまえと寝た男、全員ぶっ殺してやる!」
ちょっと!今ここで御令嬢とは清い交際だなんて知りたくもないんですけど!まだあたししか知らないってのは嬉しいけど!
「だからそんな男いないってば!失礼ね!後にも先にもあたしだって道明寺しか知らないわよ!酔って記憶をなくしたのも、あの夜だけだもん!」
「記憶をなくしたぁ?おまえ、覚えてないのか…?!」
あれだけ怒ってたはずの道明寺は片手で顔を被って俯いた。
「そうか、覚えてないのか…。」
なんだか少し落ち込んでるように見えて、疚しいところがあるあたしは思わず「ごめん…。」と呟く。
道明寺はハァーっと大きなため息をついて、そしてあたしを見てニヤリと笑いながら徐ろにズボンのポケットから何かを出した。
「おまえ、あの朝に忘れ物しただろ。」そう言ってあたしに見せたのは…
「あーーーっ!あっ、そっそれは!あたしの!パッ、パンッ…いやぁーーーっ!」
あたしのパンツだーーー!!!