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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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You belong with me. 5

You belong with me. 5




類たちにあたしの気持ちがバレているのがわかったあの日から1か月が過ぎていた。


この日の午前中最後のアポは類だった。道明寺と花沢の合同事業計画の件でと来たのだが、その件は近いうちに会議があるから特に今、わざわざ類が来る必要もない。

話もそこそこに類は「牧野、もう帰るから下まで送ってくれる?もうお昼休憩でしょ?」そう言ってあたしを連れて副社長室を出る。


前回会った時のことを思い出すと気まずい。会話もなくエレベーターホールまで歩いていると、「ちょっと話せるかな」と類が声をかけてきた。

食堂や休憩室に類を連れて行ったら騒がれてしまうしと考えて、非常階段へ連れて行くことにした。



「非常階段って何だか懐かしいね、牧野。」

階段の手すりに背中を預けて類が話す。


「うん、高校の頃を思い出すね。」

類の茶色い髪の毛がサラサラと風に靡くのを類の横に立って眺めていたら、私の頬を類の大きな手が包んだ。

「牧野。この間言ったことは本当だよ。忘れろって言ったけど、もうあいつのこと忘れろなんて言わない。俺と付き合おうよ。」


類、ごめんなさい。」



あたしが好きなのは道明寺だから。



「うん。返事は分かってるけどね。でも今のあんた、すごく辛そうだから。」

なんで類はこんなにあたしのことが分かるのかな。なんで類はこんなに優しいんだろう。

「ごめんね、類。」

「あんたのごめんねは聞き飽きたよ。でも本当に辛くて身動き出来なくなったら、俺のところにおいで。」

少し寂しそうな顔をしながらそう言って類は優しく抱き締めてくれた。

「ありがとう類。」

「あんたのありがとうも聞き飽きたって言ってるだろ?」

スーツ越しに類がクスリと笑うのが分かった。





「おい、ここは職場だぞ牧野。」

また!なんで急に現れるのかな!

道明寺は非常階段への出入り口の扉に寄り掛かるように立って、こっちを見ていた。

そっと類の腕から離れる。


「類を下まで送って行くって出ていったきり、なかなか戻ってこねぇから探しに来た。受付に聞いてもまだ出てないって言うし、どこほっつき歩いてるんだと、なんとなくここに来てみればこれか。お前ら今までもこうやって俺に隠れて会ってたのか?」

道明寺は眉間に皺を寄せながら、類を睨んで言う。


「牧野が昼休憩に誰と会おうが、司には関係なくない?」

類は無表情で司を見ているけど、なんでこんな険悪な雰囲気になってるの?


そうだな。だが、午後もスケジュールが詰まってる。早めに返せよ。

牧野、何がそんなに辛いのか知らんが、この仕事が辛いなら類に頼んで花沢物産に転職でもさせてもらえ。」




なにそれ。なんで?

仕事が辛いなんて、思ったこともないのに。

禄に話も聞かないで、急にどうして、そういう事を言うの?




道明寺のばーーーか!!!」

道明寺をドンと突き飛ばして類の手を掴み、一緒に非常階段を出て、階段を蹴飛ばす勢いで降りる。

なによ!一応、2年も秘書やってたのに!

秘書として、そんな簡単に転職薦めるほど無能って言いたいわけ?!



司、記憶戻ってきてるのかな。」

類がポツリと呟く。

「まさか!なんでそう思うの?」

と返しても、類はもう何も言わなかった。


今度こそ本当に類をエントランスで見送る。

「牧野、何かあったらすぐに連絡するんだよ。」

また頭をなでなでされながら言われて、「うん。」と素直に返事をすれば、類はニコッと笑って帰って行った。




さっきは怒って思わず道明寺を突き飛ばしてしまったけど、いくらなんでも上司にしていい態度ではなかった。

つい感情が昂ってしまって、再会して初めて道明寺の前で爆発した。

本人を目の前にして呼び捨てにしちゃったし。バカって言っちゃったし。


午後の業務が始まる前にと、急いで副社長室に戻ってノックして、返事も聞かずに慌てて扉を開けて中に入る。

「副社長、先程のことですけれど。」

一言謝罪しようと道明寺を見れば、窓際に立って、ただ外を眺めていた。

副社長がこんな風に今さら景色を眺めてるところは見たことが、ない。


「どうされました、副社長?」

いつの間にいたのか、あたしの後ろにいた西田さんも、いつもと違う、様子のおかしい道明寺に声を掛ける。


「牧野、話がしたい。」

西田さんが訝しげな表情であたしを見る。


「牧野、お前は何でここにいる?」

やっぱり怒ってるよね。

「先程の突き飛ばした件で謝罪を。あれは本当に申し訳ありませんでした。」

こんなの早く謝ってしまったほうがいい。



「そうじゃない。」

そうじゃない?でもそれしか言いようがないけど、土下座までしないとダメだった?!あ、それともさっきの転職のこと?もうクビ決定なの?!

道明寺はずっと外を見たまま動かないから、表情がよく見えない。



「お前、ババァに散々嫌がらせされてたよな?なのに、なんで今、俺の秘書をやってる?」




まさか、そんな。

西田さんも驚きに目を見開き、道明寺を見て尋ねる。

「副社長、もしかして記憶が?」



「牧野、俺が忘れていたのはお前だったのか。」







道明寺の話によれば、さっきあたしが突き飛ばした時に、壁に頭をぶつけたらしい。

それだけ?!それであたしを思い出したの?!

「牧野さん、あなた副社長を突き飛ばしたんですか?」

普段、無表情の西田さんが眉根を寄せてあたしを睨んでる!


「すっ、すみません!勢いというか、副社長に転職を薦められたので少しカッとなってしまいまして。」

「転職その話は一旦置いておきましょう。今はまず内密に副社長を病院に連れて行くのが先です。」


そうだ。なにせ10年振りに記憶が戻ったのだ。あたしが突き飛ばしたせいで、頭も打っているらしいし、診てもらわなくては。

「牧野さん、私が病院に連絡します。あなたは副社長の午後の予定を全てキャンセルして別日にまわしてください。ただし、システム上はそのままで。」

副社長が急に休んで病院に行ったなど、わざわざ大事にするわけにいかない。表面上はいつも通りに。西田さんが冷静に指示を出す。

5年前に日本に帰ってきた道明寺には、ずっと西田さんが秘書として側にいたという。いつか記憶が戻って、もしそれで道明寺がパニックになってもフォローが出来るようにだろう。


もうすぐお昼休憩が終わる。早くしなければ。今日も予定が詰まっていたから、急がないと先方に迷惑がかかる。

秘書室で取引先にキャンセルと再度アポを取り付ける為の電話をしている間に、道明寺と西田さんが副社長室から出てきた。

道明寺はあたしを一目も見ることもなく出て行った。

西田さんがあたしの机の横を通り過ぎる時、置いていったメモには『楓社長に連絡を。』


ついに、この時が来た。


道明寺が婚約するか、記憶を戻すか、どっちが先かと思ったけど

道明寺が記憶を戻した今、あたしのこの先の、これからの未来が決まる。




10年前、道明寺が記憶を失くした。この時点で道明寺はまだ高校三年生だった。

しかし既に社交界に顔は広く知られていて、パーティーに出れば、いくつもの会社の社長たちに声を掛けられていた。

そんな道明寺が一部とはいえ、記憶喪失。

道明寺は事件後の記憶が特に曖昧になっている。後に聞いた話では、事件後NYに来た時、あれだけ罵倒していたあたしのことも覚えていなかったと言う。

人の記憶ほど当てにならないものはない。だから多くの人は大事なものほど紙面などの媒体に残す。

もちろん全ての人に当てはまるわけではないが、記憶喪失になった人は記憶の欠落した部分を「無意識」に補おうとして、事実とは違う事柄を、作り話をする場合もあるという。


いつ戻るのかも分からない記憶。

もし戻ったとしても、今度は記憶が失われていた間の記憶を失う可能性もある。

それだけ脳とは未知で不可解なものなのだ。

これが外部に知られれば、これから先、仕事をしていく上で不利にしかならない。

そんな信用ならない人物では困るのだ。


道明寺 司は、あの道明寺財閥を背負って生きていかなくてはいけないのだから。


この記憶喪失という事実を知っているのは、西門総二郎、花沢類、美作あきら、三条桜子、大河原滋、松岡優紀、中島海、道明寺家使用人頭のタマさん、椿お姉さん、西田さん、そして牧野つくし。あたしだ。



10年前のあの光景を思い出す。

しっかりしろ、牧野つくし。今は仕事に集中しなければ。


とにかく今は楓社長に電話をすることが最優先だ。

楓社長のスケジュールを確認すると、今はカナダのバンクーバーにいる。

日本に来てから普段はメールでのやり取りが主な為、緊急時以外の電話はほとんどしない。流石に緊張する。

なんせ話すことが道明寺の記憶についてだ。携帯電話を手に取り番号を押す。



『どうしました、つくしさん。』

まさかのワンコール。びっくりした。


『司さんの記憶が戻りました。司さんは今、西田さんと病院に向かっています。取り急ぎ楓社長に連絡をと西田さんに指示されました。』

用件は簡潔に。これも楓さんの秘書時代に教え込まれた。


『そうですか。これから日本に向かいます。それまで司さんの仕事は私も補います。必要な案件があればメールで送りなさい。』


楓さんはそう言うと、あっさり電話は切られた。

一件だけ、取引先とのオンライン会議は比較的重要なものだったので、それだけ代わりに出席してもらう。きっと楓社長が出たら取引先の方々はビックリするんだろうな。


全ての予定の都合を付けて、一息つく。

いずれはこの時が来るだろうと思ってはいたけど、目の前で遭遇するとは思わなかった。しかもあたしが突き飛ばしたのが原因とは。


そして類が『記憶が戻ってきてるのかな』と言っていたのが妙に気になった。

やはり類の言う通り、道明寺の中で記憶に関する何かが起こっていたのかもしれない。


いつから?

最近は非常階段で道明寺と会うこともあったけど、人と会うのに選ぶような場所ではない。類だから連れて行った。

なのに、「なんとなく」

今まで戻ってくるのが遅いからと探しに来ることなどなかったのに?

もしかして、初めて非常階段で会った時には何か片鱗があったのだろうか。


止めよう。ここであたし一人で考えても、どうにもならない。道明寺から話を聞いてからだ。

もし話を聞いて何かが分かったとしても、あたしが道明寺の側にこのままいられる可能性は少ないだろう。楓さんには道明寺と接触しないところに異動させられるはず。

もしそうなったら。

あたしには、どんな手を使っても、何をしてもやらなければならないことがある。



道明寺、あたしのこと全く見なかったな

楓さんに散々嫌がらせされてた、か。そうだね、そんなこともあった。

楓さんもビンボーな家の女子高生に、よくあそこまでしたと思う。いや、今も道明寺の言う嫌がらせは続いていると言えるのかも。

とりあえず西田さんから連絡が来るのを待とう。楓さんだって日本に到着するのは、遅くても8時間は後だ。


それまではいつも通りに仕事をしなくては。













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