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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Re: notitle 51

Re: notitle 51







「メープルホテル& DJリゾートグループ」代表取締役社長。

これが、道明寺 司の肩書き。


日本に限らず、世界各国で「メープルホテル」を経営し、そのリゾート開発については環境を第一に、開発に伴う環境破壊問題にも真摯に取り組んでおり、「環境共生型リゾート」を主軸とした開発を行っている。
自然をそのまま出来る限り残し、地元に根付いた文化的特徴を大切に尊重しつつ、滞在を通してその土地に合った様々な体験プランを提案、地域の雇用問題など、そこに至るまでの過程も実績も他の企業に追随を許さないほどである。

そして「鉄の女」の異名をもつ道明寺財閥会長の息子であり、その仕事ぶりから若くして「冷徹」の呼び声高く、経済界の寵児とまで言われている。

そんな彼が今まで、二週間に一度は会ってくれていた。それがどれだけ大変なことか。

そして、仕事中にしか吸わないと言っていたタバコと、ミントタブレット。

あたしの前では見せない姿。


「辛い時に辛いと、誰にも言えないことの重大さに、私は親として今頃になって気付いたのです。仕事を言い訳にして、そこまで司を追い詰めていたことに気が付かなかった。だから親として、あの子の為に、」

「じゃあ!なぜ彼が嫌がる結婚を無理やり、強引にすすめようとするんですか……!?」

「家庭を持てば、変わると思ったのです!誰かと結婚して家族になる。そして子どもが生まれて、それを支えに、生きていってほしいと」

「そんなの、彼が決めることで、誰かが強制するものではないはずです。結婚だって一人では出来ない。子どもだって、一人では出来ません。その時には必ず誰かがいて、その相手と本人の同意があって成り立つものです。そして、それを彼本人が望んでいるかが一番大事なことなんじゃないんですか?
それよりも、彼の女性に対する意識を、その根本になっているだろう不安や恐れ、不信感、そういうものを彼自身がどうにかしたいと思っているのかとか、もしどうにかしたいと思っているならその為にはどうしたらいいのかを、話したり聞いたりすることもしないで、そんな、嫌なことは嫌だと、辛い時に辛いと言えない環境にしておいて、何をそんな、あなた方は、どこまで彼を無視するんですか……!」

「無視などしていません!だから何度もお見合いをさせてみたり、色んな場所へ行けば出会いがあるかもと、視察や出張の多いリゾート開発とホテル経営を任せてみたり、この婚活アプリだって、」

「それを!彼が望んだかどうかです!「あなたが」彼に何をどう思って何かをしてあげたいかではなく、「彼が」どうしたいかを、きちんと聞いて話をしましたか?!」

「司が、何を望んでいるか……?」

ごめんなさい、ミドウさん。

信じなくて、ごめんなさい。


「彼はまだ、結婚したいと思うところまで至っていません。でも、それでもずっと、どうにかしたいと頑張っているんです……!
それなのに、いくら周りが良かれと思ってやっても、彼本人が望んでなければそんなの、ただの心配と優しさの、押し付けでしかないじゃないですか……!」


なぜ会長はあたしにこんな彼の人生の根幹となるような話をするのか、そんなに彼が、彼の未来が心配だと言うのなら、あたしではなく彼に話すべきことなのに。

いや、だからって会長たちを責めるのは違う。
あたしだってミドウさんに同じことをした。彼に話を聞こうとしなかったくせに、何を偉そうに。


「申し訳ありません……。興奮して、失礼な物言いをしました」

「いいえ、牧野さんの言う通りだわ……」

ぽつりとお姉さんが呟く。
ちらりと隣に座る会長を見たあと、お姉さん自身の過去の話をしてくれた。


「私に政略結婚の話が出た当時、交際していた人が居たにも関わらず、両親に取引先の社長との結婚を強いられたの」

確かにさっき会長はお姉さんに政略結婚をさせたと言っていた。
これだけ大きい家では本人の意志に関係なく、子どもすらも会社の駒として使われてしまうのか。
彼は過去の出来事から女嫌いになった。だから今も結婚をしていないのだろうけど、そうでなければ彼もお姉さんと同じように政略結婚でもしていたのかもしれない。


「結婚してすぐは、親も結婚して夫になった人も、みんなが敵に思えて誰も信用なんて出来なかった。落ち込む私に夫なりの励ましや優しさを感じることもあったけど、家と財産と、会社の繋がりがそこまで欲しいのかと、嫌な見方しか出来なくて心が怒りに満ちていたこともあった。
でも……、ずっと辛く当たっていたのに、夫は辛抱強く私に話し掛けて、色んなところに連れて行って、ずっと優しくしてくれたわ。そして私の嫌がることは、一切しなかった。無視して、優しくもしないでずっと怒って不機嫌でいた私に、彼は怒ることも無視をすることもなく、いつも笑顔で接してくれていて……。
それからしばらくして、ある時気が付いたの。この人も、私と意に沿わない結婚だったかもしれないって。同じように恋人がいたかもしれない。でも結婚したからには夫婦になろうと努力をしてくれている。それなのに私はいつまでも子どもみたいに無視したりして、その人のことを知ろうともしなかった。それって、その人に対して、とても失礼なことよね。それからは、なるべく彼と一緒に過ごして、たくさん話すようにしたわ。
今では、この人は私を幸せにしてくれる、夫と結婚して良かったって、心から思ってる。そういうことよね?」


みんな、それぞれ過去はある。
良いことも、悪いことも、全てはその人の今を形成するものだ。その時、人は一人で生きてきたわけではなかったと気付く。
でも、その生きてきた中で、好きなことは好きと、特に嫌なことは嫌だと言えたかどうかは精神面に大きな影響を与えるのではないだろうか。
自分の意に沿わないことを無理矢理されそうになった時、その相手とどういう関係なのかが、この問題に大きく関わってくるからだ。

例えばそれは上司と部下かもしれない。
他にも先輩と後輩、親と子、男と女、それが友達同士でも、道端ですれ違っただけの人でも、その時々でそれぞれの関係性がそこには存在する。

もしその時に、すぐに嫌だと言えない状況や関係性だったら?

そこに相手に対して尊重などなく、強引に一方が強者になって事を起こそうとした場合、もう同意など皆無に等しい。


「No means no.」から「Yes means yes.」へ。
今では性犯罪規定として施行されているこの言葉の始まりはスウェーデンだと言う。
性行為は自発的なものでなければならず、「Yes」だけが同意したということであり、それ以外は「No」(不同意)と解釈する、ということだ。

これは、性行為だけに限った話ではないと思っている。
何に対しても、誰に対しても「Yes」だけが同意だ。

それを聞かずに何かを強いることは、その人の生まれながらに持つ権利や尊厳を無視するのと同等とも言える。


ここにあたしが連れてこられた時のように、「Yes」とも「No」とも言えない状況で、強引に「No」ではないなら「Yes」だろうと、この人たちはこういう話の進め方を彼にもしていたのではないか。
それでも今回に限って言えば、あたしは「Yes」だと自分で決めてここに座った。でもそれは、たまたまあたしがこういう開き直れる性格だから出来ることだった。

お姉さんも「No」とは言えない状況で結婚しているけど、お姉さんは自分で旦那様と愛を育もうとする為の手段を取り、そして相手を知ることが出来た。

でもそれは誰もが必ずしも、あたしのように開き直れたり、お姉さんのように自分で判断して決断し実行が出来る人ばかりではないし、身の危険が差し迫るような状況かどうかでも変わってくる。

もしかしたら彼は、ミドウさんは、ずっとそうやって彼の意思を尊重されずに、有無を言わさずに無視されてきたのではないだろうか。それはきっとお姉さんもそうで、自分の意志などないところで育ってきたのではないだろうか。
でも彼も周りの人も、もしかしたらそれを当たり前のことだとして無視だとは思っていなかったのかもしれない。

その人を想っているから、心配しているからと何をしてもいいわけではないけれど、今回の結婚云々に限って言えば会長もお姉さんも、彼の友人たちだって、ひたすらに彼と彼の未来を心配していることを、彼も無意識に、そこだけは本能的に理解していたのかもしれない。

でなければ、いくら女性が嫌いで結婚したくないとしても、家族を納得させる為だけに見ず知らずの素性も分からないあたしに協力を頼んでまで、過去のトラウマを克服しようと頑張っていたのだから。

そして話を聞いただけだけど、お姉さんが旦那様に信用と信頼を持っているように思えるのは、やはりお互いに歩み寄り、きちんと話をして、納得しているからだろう。
今の会話で会長がどう思ったのかは分からないけど、少なくともお姉さんはもう彼に結婚を勧めることはないと思いたい。


「部外者の私がこんなことを言うのは傲慢で烏滸がましいと分かっています。
でも、私の知っている彼は女性に慣れようと必死に努力をしていました。彼が私に触れることが出来るようになったみたいに、名前の知らない人とだって信頼関係を築くことが出来れば、女性に触れられるんです。
だから、「結婚」という手段を強引に勧めるのではなく、もう少し彼を見守ってあげることは出来ませんか……?」 













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