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Re: notitle 04
[No.120] 2023/01/22 (Sun) 18:00
Re: notitle 04
「ほら司。ニックネーム何にする?」
「んなもん知るか!お前らで勝手にやってろ」
本人確認が取れたのか、プロフィール登録まで始めた三人。
「ミドウ ジョウ」
「ん?何か言ったか、類」
「アナグラムだよ。「道明寺」をバラして、組み替える」
「お〜!さすが類くん!それっぽい!それでいこう」
いつも無表情の類も、心なしかウキウキしたような顔をしている。
まぁ自分が責任者なら、それなりに改善点を洗い出したい気持ちは分かるし、伸び悩んでいるなら尚更だ。
後継者としてのプレッシャーも痛いほど気持ちは分かる。あきらも総二郎も類も、それぞれ家業の後継者として育てられてきた。
実績を出さないと、結局は親の七光りと言われ、陰で見下し、バカにされておしまいだ。
まぁ面白がってるのもあるだろうが、類は俺をモニターのような扱いにして、上手くいけば宣伝にでもするつもりか。
「お、相手に求める条件は?だって」
「司、何かあるか?年齢とか煙草とか酒とか勤め先の職種とか」
「んな条件付けたって女はどれも同じだろ」
「年上は絶対ダメだもんな。年齢は30歳以下にしとくか!煙草は吸うけど、嫌なら吸わないで良いか?酒は嗜む程度で?あとは職種?公務員とかか?どうする司?」
「知らねぇよ。適当にしとけ」
どうせ会うこともないのに。
あきらたちが先に会うと言うなら、どの女もそこで終わりだ。
あきらも総二郎も顔面偏差値は高い。しかも女慣れしている二人にかかれば、付いていかない女はいないだろう。
「じゃあ、大手企業にしとこうぜ。結婚するなら、それなりに勤めてる女じゃないと信用出来ねぇよな」
総二郎も何を言っているのか。
こんなアプリで結婚相手を見つけようとしている女など、たかが知れている。
「まぁ俺らもそこまで暇じゃねぇからな、会う相手は厳選しねぇと。まずはメッセージでやり取りするんだろ?」
「そう。今、入力した条件に年齢や年収、居住地に趣味嗜好が似ている人が表示される。それでプロフィールを見て、良いなと思ったらイイねボタン押す。それでお互いイイねが付いたらメッセージのやり取りが出来るようになるよ」
「へぇ、まずはそこで好みをすり合わせるのか」
「うん。登録してすぐは結構イイね付くけどね、全部に返す必要もないし楽でしょ」
「お、最後の選択。結婚したい時期は?今すぐ、2〜3年以内、良い人がいれば、相手と相談して決める。どれにする、司?」
結婚なんかしたくない。
女と暮らすなんて御免だ。
それでも、どうしてもと言うなら、この俺が結婚しても良いと思えるほどの女がこの世にいるのなら。
「良いと思う女がいれば、苦労しねぇよ」
「良い人がいれば、を選択っと」
マジでくだらねぇ。
世の中の男や女は、こんなので相手を見つけるのか。
そもそもに俺は女という生き物がダメだと言うのに。
あれは小学生になって間もない頃だった。
すでに幼少期には整った顔をしていたらしく、とにかく幼稚舎でもモテていたことは覚えている。
小さいながらにチヤホヤされたが、どうにも照れが先行して、女の子とは上手く話せた記憶はない。
物心が付いた頃には両親は仕事で忙しく、ほとんど家には居なかった。
総二郎たちと遊べない時は、代わりに姉ちゃんと使用人頭のタマがよく遊んでくれていた。
その頃、特に近くにいたのが、俺の身の回りの世話をしてくれていた使用人の女が一人。俺もその使用人の優しさに懐いていて、姉ちゃんやタマがいない時はいつも付いて回っていた。
ある日、学校から帰ってきたら姉ちゃんもタマもいなくて、その使用人の女と二人で何かをして遊んでいた。
今までそんな素振りは全くなかったのに、その使用人の女は俺をいきなり引き摺ってクローゼットに連れていき押し込むと、体中をベタベタと触ってきた。
気を許していた相手にいきなりそんなことをされてパニックになり、習っていた護身術も役に立つことはなく、為すがままにされた。
突然のことに恐怖に震え、どうしたら良いのか分からず、とにかく逃げたくて必死に腕を振り回した。
その時たまたま当たった何かが床に落ち、たまたま学校から帰ってきた姉ちゃんが響いた物音に気が付いて助けてくれた。
そして、それはすぐに両親の知るところとなり、その使用人とは二度と会うことはなかった。
あれから一切の女はダメだし、クローゼットも、前よりはマシになったが苦手なままだ。
いま住んでいるペントハウスも、造り付けのクローゼットを使うことはなく、部屋の一つをクローゼット替わりにしている。
とにかく触り方が気持ち悪かった。
ヘビが体中を這い回るような、少し湿ったような手で、舐められているような、そんな気持ち悪さだった。
何より、信用していた人間に、裏切られたことに。
女は、気持ち悪い。
女は、信用出来ない。
いつまで経っても、これを覆すような女はいなかった。
もう大丈夫だろうと中学生の頃に総二郎とあきらにクラブに連れて行かれたが、少しでも女に触られると吐き気を催した。
大きくなればなるほど、大人になった今はなおさら、ソウイウ視線の意味を理解出来るようになり、ソレを向けられることに恐怖する。
どいつもこいつも。
こんな俺は、一生女と付き合うこともなく、結婚のことなど、考える時間すら無駄に思えた。
この時は。
まさか、このアプリで運命の出会いをすることになろうとは、思いもせずに。
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