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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Re: notitle 08

Re: notitle 08







「司、類がそこまで興味を持つ女、気にならねぇ?」

「……ならないと言ったら嘘になるな」

「だよな!その部下の姉も同じアプリ使ってるって言ってたよな?もしかしたら司とマッチングすることもあるかもな〜」

総二郎がニヤニヤしながら俺を見てくるが、たとえ類が興味を持ったとしても俺はどの女にも会うつもりはないのに、馬鹿なことを言う。
類は着ていたコートをダイニングのイスに掛け、カウンターのイスに座るとキッチンにいた俺に「水」とだけ言う。
仕方なくミネラルウォーターとグラスを渡し、ついでに自分の酒も用意する。


「類、いくら何でも食べる姿が面白いだけじゃなかったんだろ?」

「うん。あの子は、ちょっと違うかもね」

「違うって何が」

「う〜ん、まだ今日初めて会ったから分かんない」

「ま、そりゃそうか」

結局この話はこれ以上することもなく、しばらく話題に出ることもなかった。
そしてまた、いつもの毎日が過ぎていくはず、だったのに。



あれからも総二郎とあきらは都合が合えば俺の家か会社にまで来て、アプリで何かをして帰って行く。
俺にメッセージのやり取りをしろだの会えだの言わないところを見ると、まだ俺に会わせるほどの女はいないということだろう。

それ以外は特に日常が変わるわけでもなく、1月ももうすぐ終わるという頃。
役付の俺は特に出勤日も休日も決められていない。
今日も日曜日だが出勤していて、それでももう執務室から見える外の景色もネオンが目立つ時間になってきたから帰るかと、西田と話していた時だった。

扉がノックされ、西田が返事をする前に扉が開かれ、慌てた様子のあきらが役員室に入ってきた。
興奮冷めやらんと言わんばかりに、走ってでも来たのか少し息切れさえしている。
何事かと西田もあきらを凝視していた。


「司!西田さんもいたか、良かった!」

「なんだ?どうした?」

「西田さん。次の土曜日か日曜日の昼間、司のスケジュールどうなってますか?」

「土曜日の午前中はNYの役員とオンライン会議、午後は稟議書に目を通して決裁を進めていただいて、夜は会食の予定がございます。日曜日はNYへ出張の予定なので、日本にはいませんが」

「土曜日の午後!空けてもらえますか?」

「それは……、どのような理由で、でしょうか」

あきらは一体どうしたというのか。
そこまで慌てている感じではないけれど、少し興奮しているような言動は久しぶりに見た。


「今さっきまでアプリでメッセージを送っていた女に会ってたんだ」

メッセージだけでなく、もう会っても良いと思うような女がいたことに驚いた。
昨夜も来て俺のスマホをいじっていたが、相手の女と約束があったからか。

西田はその言葉に、あきらを応接用のソファに案内している。
早く帰れると思っていたのに、西田も何が聞きたいのか心なしか表情筋が緩んでいるように見える。
やっぱり西田も楽しんでんじゃねぇか!


「美作様、詳しくお話しいただけますか」

「あ、ああ。今までメッセージのやり取りをして実際に会った女性が何人かいたんですけど、俺や総二郎が現れると、みんな本人にはもう会わないって言う人ばかりで」


あきらの話を詳しく聞いてみれば、実際会う約束をして、でも待ち合わせに現れるのはもちろん俺ではなく、総二郎かあきら。
本人は急な用事で行けなくなったこと、たまたま自分が近くにいたから、連絡を受けて代わりに直接お詫びに来たなどと言って会っていたらしい。
今までの女性は全員、本人とはもう会わなくて良い、あなたとまた会いたいなどと言われていたとか。

ところが、今日会った女性は全く違った。

あきらの風貌に見惚れることもなく、本人が来れなくなったと詫びるあきらの話を無表情で聞いていたらしい。
カフェで待ち合わせだったから、コーヒー代だけでもお詫びに出すと言っても断られる。

人当たりが良く顔面偏差値の高いあきらに愛想良くすることもなく、そして媚びを売るでもなく、そのまま解散しそうになった。
コレはと思って少々試そうと、あきらから「君が気に入ったから、また会えないか」と誘っても、会いたいのはあなたではなくメッセージのやり取りをしている方ですと断られ、別れ際には「もし次回もご本人に会えないのであれば、それはご縁がなかったということだと思いますので」と言われたらしい。
そしてその女はそのまま立ち去ったと。

あきら自身は女を誘って断られたのは初めてらしく、少々ショックを受けた様子だった。

……まぁ、実際にメッセージのやり取りをしているのは総二郎とあきらだから、本人に間違いではないけれど。
そんなことはもちろん彼女が知るわけもないから、律儀にもプロフィールに載せている写真の人物と会いたいと言うことか。


「会いましょう!」

あきらの話が終わったところで西田が突然大声を出す。

いま、会うって言ったか?

俺が?
その女に?


「絶対に、嫌だ」

「坊っちゃん、よくお考えください」

もうすぐ30になる上司に坊っちゃん言うな!

「美作様の風貌に靡かず、誘いにも乗らないしっかりとした貞操観念を持ち、奢られることを良しとしない金銭感覚に、本人以外とは戯れの会話すらしないという強固な意志。その女性、非常に気になります」

ただの頑固な女じゃねぇの?!奢る奢らないも、本人に変わって詫びに来た人間に奢らせるほうがどうかしてるだろ。
そんなんで会う理由になるか!
あまりにも馬鹿らしくて、ソファから立ち上がり一人帰ろうとした。
が、西田とあきらの言葉に思わず足を止めてしまった。


「司様。一度でも会えば、椿様や会長にこれ以上の縁談は無意味だと言えるのでは?」

「そうだぞ、司。イケメンで百戦錬磨の俺よりも、野暮ったい写真のお前に会うことを望んだ女だ。それに、結婚相手の条件も、メッセージのやり取りでも俺らが会っても良いと思った女だから、これでダメなら椿姉ちゃんも文句はないだろ」


 めんどくさい。こんな面倒なことがあるのか。
俺は誰とも会わないと言ったはずなのに。
しかも会うということは、またあのクソダサい格好をしないといけないのか。


「司、この一回だけで良い。俺たちもいい加減、おばさんと椿姉ちゃんたちから解放してくれ」


姉ちゃん。
姉ちゃんの悲しそうな顔が頭に浮かぶ。


会いたくない。
話したくない。
結婚もしたくない。

だけど。
俺だけがいつまでも嫌だと子どものように駄々を捏ねていても仕方がないのは分かってるし、姉ちゃんの後悔を消してやりたいと、ずっと思っている。

「ほら司、スマホ出せ。すぐに今回の詫びと次回日程のお伺いのメッセージを送らないと」


今までこんなに大きなため息ををついたことがあるだろうか。
仕事中は絶対にため息なんかつかない。
ため息は不景気の極み。
代わりにプライベートではため息の嵐だ。


総二郎やあきらに類、西田や母親の為じゃない。
姉ちゃんの為だ。

自分にそう言い聞かせて、プライベート用のスマホをあきらに差し出した。










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Re: のん様

コメントありがとうございます!

おもしろいと言っていただけて嬉しいです。
更新がんばりますね!

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