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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Re: notitle 10

Re: notitle 10






あきらと総二郎に薦められて始めた婚活アプリ。

俺が何かすることは一切なく、この日を迎えた。


憂鬱だ。
今までの人生において、こんなに憂鬱だったことはない。
どれだけ厄介な仕事でも、どれだけ面倒な見合いでも、ここまで気持ちが沈んだことはなかった。

午前中のNYとの会議が長引けばいいと思っていたのに、西田にきっちり時間通りに切り上げさせられた。
これから付き合う予定もない、一回会っておしまいになるだろう女より仕事じゃねぇのか。

いや、姉ちゃんの為にと決めたことだ。
一回でも会えば、やはり女はダメだったと言える。
あきらと総二郎、西田も良いと言った女だ。あいつらだって半分は面白がっていただろうけど、俺の為にやっていたことに間違いはない。

信じるしかない。

条件は合っていると言っていたし、一度会っているあきらが言うには見た目も可愛かったと言っていた。
いや、可愛いかどうかはどうでもいい。
付き合うことも、結婚することもないのだから。


しかし、この格好はひどい。ひどすぎる。
髪の毛はぐちゃぐちゃにされるし、視界の悪い分厚いレンズの眼鏡、どこから出してきたのかタータンチェックのネルシャツに黒のセーター、それにサイズの合っていないジーンズ。
黒のピーコートまで羽織って、なぜか靴だけはジョン・ロブのブーツでチグハグ感がすごい。よくこんな格好を思い付くものだと、関心すらする。
この格好で外を出歩くなんて、笑い者もいいとこだ。

こんなクソダサい格好をしてまで、なんで。

いや、姉ちゃんの為だ。
そう、姉ちゃんの為だった。

自分に姉ちゃんの為、姉ちゃんの為と言い聞かせる。



今日はパンケーキが美味しいと評判らしいカフェに連れて行く予定らしい。
前回キャンセルしたお詫びも含めて彼女の好みを優先、その店を予約してあると地図アプリを俺に見せながら、あきらが言っていた。

今日会う予定の「クシマ ツキノ」は、食べることが大好きで、甘いものに目がないとか。

甘いものも嫌いだ。
それを食べている女に付き合わないといけないのも、嫌だ。
しかし体面的には、こちらから誘っている以上、嫌な顔も出来ない。

どうしたものか。

出来るだけ会話をしないように、取引先の社員とでも話していると思えば良いのか。
そうか、それが良いだろう。
素っ気なくしていれば向こうも嫌だろし、また会いたいとも思わないはずだ。

俺にこのクソダサい格好をさせる為に、さっきまであきらが家に来ていて、話す内容に齟齬が出たら不味いからメッセージを遡って読むようにとしつこく言われたけど、まだ読んでない。


待ち合わせ場所はそのカフェから近い駅ビルの中の本屋だった。
あきらが「クシマ ツキノ」の今日の服装はどうとか言ってたが、忘れた。
というか、全く聞いていなかった、が正しい。

アプリを開けば良いのか。
着くまでの間に確認しておくかと、駅へと向かう車の中でスマホをコートのポケットから取り出す。

初めて見るアプリのメッセージ欄を探し当てタップして開いてみると、複数人の女性とやり取りした形跡があり、その一番上に「クシマ ツキノ」の名前があった。
そこをタップしてメッセージを見る。


『ミドウさん、おはようございます。今日はよく晴れていますね。会えるのを楽しみにしています。』

『今日は白のニットに紺のタイトスカート、黒のコートを羽織ってます。』


すぐ目に入ったメッセージ。
一応、遡って読んでおこうかと画面をスクロールする。


『ミドウさん、こんばんは。土曜日は13時に駅ビルの本屋さんで待ち合わせですね。
パンケーキ楽しみです。よろしくお願いします。』

『おはようございます。今日は一段と寒いですね。風邪など引かれませんよう、暖かい格好で過ごしてくださいね。』

『こんばんは。近ごろ残業が続いていたので、お返事が遅くなってすみません。』

『こんばんは。私は食べることが好きです。どんな時でも、ご飯を食べると元気になります。
先日も素敵なレストランで食事をする機会がありました。
年末の忙しい時期でしたが、美味しい食事をするだけで次の日も頑張れそうな気がしました。』


あきらと総二郎が暇な時にしかメッセージを送っていないから、そこまでやり取りが多いわけではなさそうだった。
他の女とのメッセージを見れば、返事をしないと次の日にはやり取りが終わっていることがほとんどだが、相手も複数の男とやり取りをして相手を見極めようとしているのだろう。
レスポンスが遅ければ積極的ではないと交渉を切られところは、仕事でも同じかもしれない。

でも、この「クシマ ツキノ」は日数が空いても必ず返事が返ってきている。
律儀なのか、やり取りをしている人数が少ないのか、単にそこまで焦っていないのか。

メッセージだけで見れば、本当に食べ物の話と天気のことばかりで、他の趣味や話題が見えない。
聞かれた質問には答えているが、彼女からこちらには、ほとんど質問をしていないのはなぜだろう。
これから会う人間のことを少しでも知りたいと思わないのだろうか。

口調も砕けた感じはなく、一線を引いてる感じすらある。
メッセージだけで決めつけるのは良くないが、他の女と比べるとやや堅い感じはあるものの、印象は悪くない。

メッセージ欄を閉じて今度はプロフィールを見る。
写真も載っているが、後向きに近いような横顔しかなくて、いまいち良く分からない。


『「クシマ ツキノ」
29歳
大手企業勤務 
相手に求める年収  特に希望なし
結婚したい時期  良い人がいれば
お酒  飲まない
タバコ  吸わない
居住地  都内
身長  160cm
趣味  美味しい食べ物屋さんを探すこと』


ちっさいな!
俺の身長が185cmだから、25cmも違うのか。
それに……食べ物屋さん。飲食店ではなく、食べ物屋さんか。


俺は物心付いた頃から食に興味を示したことはなく、今でも空腹が満たされれば何でも良いと思っているし、今まで食事をして美味しいと感じたこともなかった。
食事をする相手も仕事での付き合いばかりで、相手が美味しいと思えばそれでいいと思っている。
自分は美味しいかどうかに重要度を置くことは1ミリたりともない。
なぜ彼女は、そんなに美味い食べ物を求めるのだろうか。


「司様。駅に着きましたが」

助手席に座っている西田に声をかけられるまで、駅に着いたことに気が付かなかった。

遂に、行かなくてはいけない。

わざと大きなため息をついて西田を睨めば、どう見てもウキウキした様な顔で俺を見ていた。
ムカつくから助手席に後ろから何度も蹴りを入れてやる。


姉ちゃんの為、姉ちゃんの為。


「司様、どちらにしろ今夜は会食がありますので、17時頃には電話をします。それで引き上げてくだされば結構ですから」

そんな4時間も話すわけねぇだろ!
1時間でこっちから電話してやる!

ギロリと西田を睨みつけ、最後にもう一蹴りしてから車を降り、乱暴にドアを閉めた。








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Re: のん様

いつもコメントありがとうございます。

お褒めの言葉、とても嬉しいです!
これからもお楽しみいただけるようにがんばりますね〜!

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