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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Re: notitle 12

Re: notitle 12







この男は一体、何を考えているのか。


確かに無口で、女性が苦手だとは言っていた。
だからって、置いていく?!
途中であたしが隣にいないことに気が付いて戻ってきてくれたのは良いけど、ゆっくり歩いてくれって言ったのに、ほんの少ししかゆっくりにしてくれなかった。
だから、あたしはほぼ小走りで彼のあとを付いていく羽目に。
たまにちらりとこちらを見ているから、あたしが小走りなのに気が付いているはずなのに!
それでも彼は、お店に着くまでずっと車道側を歩いてくれていた。
これは、たまたま?

靴に続いて、またチグハグ。


パンケーキのお店は駅ビルから徒歩5分くらいの場所にあった。
着いた時には少し息が上がってしまっていて、流石に少し疲れた。

でも、店外に漏れ出る甘い香りに、一気にテンションが上がる。
早くお店に入りたくてウズウズしているあたしは、お店に入るのを躊躇っている彼を見つつも欲望には勝てず、意気揚々と「入りましょう!」と声をかけると、彼は渋々といった感じでドアを開け、店内へと足を踏み入れた。


店内に入ると観葉植物などのグリーンが多く置いてあり、テーブルや椅子も柔らかい色の木目調のもので統一されていた。
ナチュラルで男性でも気兼ねなく入れそうな雰囲気のお店で、実際、男性客もパンケーキメインのお店にしては多い気がする。
男性だけで座っているテーブルもあるくらいだ。
横に立つ彼を見上げると、彼もそう思ったのか少し表情が和らいだ気がした。

案内されたのは大きなガラス張りの窓の横にある一番奥のテーブル席だった。
ガラス張りの窓の向こうは小さいながらも冬なのにグリーンであふれる庭があって、吹き抜けになっているのか外からの光で満ちていた。
外はあんなに寒かったのに、ここだけ春みたいに見える。

一つ一つのテーブルも離れていて、周りの会話もそこまで気にすることなく落ち着いて食べられそう。
確かに『パンケーキそのものを楽しんで』がコンセプトのお店だ。
これはちょっと楽しみだなと思いながら椅子に座ろうと思ったら、ミドウさんが「奥にどうぞ」とソファ席を勧めてくれた。

え?
うっそ、こんなの初めてだ。

男性が女性と同じ席に着く時、女性に座ってもらうのはソファ席が良いとか、綺麗な景色が見えるなら椅子でもとかいろいろあるらしいけど、正直あたしはどっちでも良いと思っている。
お互いに気持ちよく過ごせれば、それが一番いい。

今までの彼氏も、アプリを通じて会った男性たちも、こんな風にしてくれた人はいなかった。
ミドウさんは女性が苦手だと言うわりには、さっきからさり気なくエスコートするような行動をとる。
女性と話したり一緒に歩くことに慣れていないような雰囲気なのに、こういうことが自然に出来るって何だろう。

また、チグハグ。

彼はあたしがそんな事にびっくりしていることには気が付かないようで、あたしをソファに座らせると自分も向かいの椅子に座った。

まだ、会って数十分。
このあと、いろんなことがチグハグなこの男がどうするのか、じっくり観察してみることにした。



「ミドウさんは、どれにしますか?」

彼女にメニューを見せられたが、元から俺は食べるつもりはなかった。
甘いものは嫌いだから。

「いや、コーヒーだけで」

俺がそう言うと、メニューを見ながらニコニコしていた彼女は、スンと無表情になった。
確かにパンケーキの店に来て、パンケーキを頼まないなど考えなかったのかもしれない。
でも、甘いものは嫌いなんだ!

「……甘いものは、苦手なので」

それを聞いた彼女は途端にとても申し訳なさそうな顔になった。

「あの、前回キャンセルしたお詫びだと言っていただいたので、お言葉に甘えて私の行きたいお店にしてもらいましたけど、そうですよね。あなたの好みを聞きませんでした。ごめんなさい……」

素っ気なく適当に扱うつもりで、これで良いはずなのに、あまりに彼女が申し訳なさそうな顔をするから、またしても罪悪感。

「いや、前回はこちらが全面的に悪かった。だから俺のことは気にせずに、あー、何でも好きなものを」

俺の言葉に彼女はまだ申し訳なさそうな顔をしつつも、生クリームが少しだけ添えられているだけのシンプルなパンケーキを選んだ。
遠慮しているのだろうか。
いや、それにしては選ぶのに迷いがなかったから、これと決めていたのだろうか。

店員を呼ぼうかと視線を巡らせると、それに気が付いた店員が声を掛ける前にテーブルまで来る。
しっかりと教育が行き届いている。
良い店かもしれない。
彼女の選んだパンケーキとコーヒーを二つ頼んだ。


そして、沈黙。

パンケーキが来るまで、間が持つのだろうか。
いや、持たせる必要もない。

今回限りの、たった数時間同じ空間にいるだけの女。

俺には会話をする必要もない。
こちらからお詫びと誘っておいて、なんでこんな態度なんだと怒っておしまいになれば良い。

それから特にこちらから話を振ることもなく彼女も何も話さなかったが、沈黙が5分ほど続いた頃、彼女が話しかけてきた。


「あの」

「……何でしょう」

「ミドウさんは今日、何をしに来たんですか」


突然そう聞かれて、咄嗟に返事が出来なかった。

仕事では、この躊躇いの瞬間ですら命取りになることだってあるから常にいくつもの答えを用意している。
でも彼女と会うことは嫌々ながらで、今後も会おうとは思っていないし、適当にあしらうつもりだから会話をすることすら考えていなかった。
だから話どころか怒って文句の一つでも言ってくるだろうと、そう思っていたのに、まさか今日なにをしに来たのかなんて聞いてくるとも思っていなかった。

だって、あのアプリを使っている限り結婚相手を探している以外に目的など、あるはずないのだから。

彼女は目を逸らすことなく、穴が開くほどにジッと俺を見てくる。

なんだ、この女は。

「……何をしに来たか、ですか?」


彼は驚いたような顔をして聞いてくるけど、そんなに意外な質問をしたつもりはない。

無口で女性が苦手。
それに間違いはないと思う。まだ数十分しか一緒にいないけど、明らかな拒絶を感じる。
初めこそ女性が苦手だから、こういう態度なのかと思っていた。
だけど、それだけではなさそうだ。


あたしは、この人と今後会うつもりはない。
もし本気で結婚相手をと思っているとしたら、これ以上その気持ちを踏み躙るような失礼はしたくなかったから。
それでも会うことに同意をしたからには、誠意を込めて一緒の時間を楽しく過ごせたら良いなと思っていたけど。

彼からは、それすらも感じない。
隣に並んで歩く人のことを考えずに、一人で歩いて行ってしまうところは女慣れしてないのかなって思う。
それは経験しなければ分からないことだから、それは良い。
でも、このお店に来るまで明らかにあたしが早足なのが分かっていて、ゆっくり歩いてとお願いしたにも拘らず歩く速度を緩めない。

更に、あたしが選んだお店へ行くことに同意をしてここまで来ているのに、嫌そうな顔を隠さない。
しかも、ため息まで。

パンケーキを注文したあともそう。
どれだけ女性が苦手でも、誘った人を目の前にして食事を共にするつもりなら、何か世間話くらいは話題を振るものではないのか。
ただでさえ今回は、前回のドタキャンのお詫びも含まれているはず。
それこそ「今日は良い天気ですね」だけでも良いのにそれすらもなく、目線が合うこともないし、話をする気さえ感じない。

単にあたしが彼の好みの女性ではなかったとしても、それなら本屋で見つけた時に声をかけないで帰ればいいだけ。
声をかけ、一緒にここまで来たということは、少しでも同じ時間を共有する意思があったからのはず。
勧誘の線も考えたけど、それならもっと愛想良くするはずで、不快感を与えてから物を売るなど商売が下手すぎる。


そして、前回のキャンセル。
今まで急用という言葉を信じていたけど、本当に悪いと思っている雰囲気をこの人から感じない。
今回会うことにも仕方なくといった風情だ。

たぶん、ミドウさんの代わりにキャンセルを伝えに来たあの人は、本当に友人か知り合いなのだろう。
あの人はドタキャンした時のあたしの反応を確かめる為に来たのではないか。
そして、あたしは彼らの考える何かに引っかかって、また会うことにしたと考えるのが妥当だろうか。


ミドウさんは、出会いも、結婚相手も探していない。
そして、この人の影には、このアプリで何かしようと企んでいる人がいる。


何が目的なのか、分からない。








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