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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Re: notitle 31

Re: notitle 31







「司」

「なんだよ」

「お前、俺が何時間待ったか知ってるか?」

「んなもん知らねぇよ」

あきらは、本当に待っていた。
彼女の部屋で待つと決めた時にメールで帰っていいと送ったのに、勝手に残ってたのはあきらだ。
それを恩着せがましく言われる筋合いはない。

「ずっと彼女の部屋にいたのか?」

「あ?」

「彼女に荷物を渡して、そのあと」

「いたら何だよ。早く車出せ。明日から出張だから早く帰りたいんだよ俺は」

「ああ、悪い」

あきらは俺に急かされて、すぐにエンジンを掛けて車を発進させた。
俺は助手席のシートに体を預けて、行きと同じように外を眺める。昼間と違って夜の街にはネオンが溢れ、歩く人たちは陽気に騒いでいる。

俺は今、気分が良い。
もう自分からクシマに触っても何ともなかった。
むしろ自分から彼女に触りたいと思ったし、実際触ってみても大丈夫だった。吐き気も嫌悪感も何もない。前よりも彼女と触れ合えるようになったことが嬉しい。

よし。

薬を飲んで数時間寝ただけでも、彼女の顔色は訪ねた時より良くなっていたように思う。
早く良くなってほしい。また二週間後に元気な彼女に会いたい。
俺もクシマに頑張ってと言われたから仕事は頑張ろう。

彼女に触れた手を握って、開いて。
次に会えた時は、彼女から触れてもらおうか。きっと大丈夫な気がする。
そんなことを考えていた俺の思考を、あきらが遮ってきた。

「いやいやいや、待て司」

「なんだよ」

「ずっと彼女の部屋に居たわけないだろ」

「なんかおかしいかよ」

「おかしいだろうが!極度の女嫌いで椿姉ちゃんの部屋以外入ったこともないお前が、何時間も女の部屋に居られるわけないだろ!」

そう言われても。彼女の部屋にいたのは事実で、他にはどこにも行っていない。
彼女の側にいたらおかしな気分になってしまいそうだったのは確かだから、意識のない彼女に無断で触れてしまわないように隣のリビングに移動してソファに座り、腕を組んで自分に何かを言い聞かせながらひたすら時間が過ぎるのを待っていた。

「仮にいたとしても、そんな何時間も何してたんだよ。もしかして何かされてたのか?!」

「ちげぇよ!馬鹿か!あいつが俺に何かするわけないだろ」

「じゃあ何で戻って来なかった?何時間も何をしてたんだよ?」

「鍵がなかったから」

「おい、類みたいな話し方するなよ。ちゃんと話せ!」

類みたいって何だよ。
俺は類みたいにぼんやりしてねぇ!

「だから、俺が部屋を出る前にあいつが寝ちまったんだよ。戸締まりしようにも鍵がどこにあるか分かんねぇし、鍵も掛けないで病人の女一人残して帰れないだろ。だから起きるまで待ってただけだ」

「あー、そりゃ仕方ない、かもしれないけどな?なんで部屋に入ることになったんだよ。買ってきた物を渡したらすぐ帰って来いって言ったのに」

「それは……」

高熱でふらつく彼女の手を引いて寝室まで連れて行った。

それだけの話なのに話しにくい。
あきらや総二郎たちには、彼女に触れる練習をしていることは話していない。半年経った今も、ただ彼女と会って話しているだけだと思っている。

まさか俺が結婚を阻止する為に彼女に協力を頼んでいることなんて簡単に話せる内容ではないし、こいつらは姉ちゃんと繋がってる。彼女と会っているのに付き合うつもりも結婚する意志も俺にないことがバレたらマズい。
あきらも総二郎も一度ずつ俺と彼女の様子を遠目に見ていた。その様子に何か思うところがあったか知らないが、あれから後を付いてくることはなかった。
毎回どんな話をしたのかは聞いてくるけど。


彼女に触れても大丈夫。

それをこいつらに話したらどうなるのだろうかと一人想像して。
姉ちゃんだって女に触れるようになった俺を見たら、泣いて喜んでくれるはず。
そろそろ姉に会わせても良いかもしれない。先延ばしにし過ぎて怪しまれても困る。

でも、姉ちゃんに会わせたらクシマとの期間限定の関係は終わる。
姉ちゃんにクシマを紹介した途端に彼女と会わなくなったら不審に思われるかもしれないが、仕事が忙しいとか彼女と予定が合わないとか、いくらでも言い訳は出来る。

彼女もよくこんな馬鹿みたいな話を信じて受け入れてくれたなと思う。
初めて会ってからもう半年過ぎた。何も言わずに俺に付き合ってくれてはいるが、本当はこんなこと早く終わらせたいと思ってるだろう。

そして全てが終わったら、彼女とはもう会わない。

そう、俺がそう決めた。
自分の人生に関わることのない女に使う時間すら無駄だと思っていた。
だから彼女も出会いや結婚を求めてないことは、俺にとっても好都合だった。

飯を美味しそうに食べて、よく笑って、話して、手と手で触れ合って。
それでも、いつか終わる関係。

終わる。
終われば彼女と、会えなくなる。

彼女と会う為に二週間おきの休みも必ず取るように西田に言っていたが、それもなくなる。
あの彼女の喜ぶ姿を思い浮かべる時間もなくなって、ギフトショップを見かけても何も選ぶことなく通り過ぎる日に戻るのか。

彼女に会う前の、何もない毎日同じことの繰り返しの日々に戻る。

分かっていたはずの、関係。
本当の名前も知らない関係。
俺がそう望んだ。
望んだのに。

きっとミントタブレットを見る度に彼女を思い出す。
日常に入り込んだ、彼女のくれたもの。

彼女と会う前の、いつも同じ日常を繰り返すだけの日々に戻って、「ああ、そんな女もいたな」と思い出にして、そしていつか彼女を忘れる日が来るのだろうか。

嫌だ。
彼女に会えなくなるのは、嫌だ。

どうして?
なんで嫌なんだ?

クシマは女。
女は嫌いだ。

でも、クシマは違う。
女だけど、俺が唯一許した女だ。

彼女と触れ合えるようになったことが嬉しい。でも、それは彼女との終わりが近付いたことになる。

終わりにしたくない。

まだ彼女に会いたい。あの穏やかな時間を手放したくない。
今の俺が唯一安らげる場所。

俺の日常に一時紛れ込んだだけのはずの非日常が、いつの間にか特別なものに変わっている。

分からない。
これは、何なんだ?

この感情は、彼女の部屋の扉が開いたその時の、彼女を見た時のあの気持ちは、


「あきら」

「なんだよ。急に黙り込んでどうした?やっぱり何かされたのか?」

「違うって言ってんだろ。聞きたいことがあるから帰るな」

「それは良いけど、どうした?」

「俺の部屋に着いたら話す」


そのあとは何を聞かれても黙ったまま、流れる夜の街並みをただ眺めていた。











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Re: ボルドー様

コメントありがとうございます!

ちょっとゆっくり過ぎる気もしてたんですが、丁寧と言っていただけて嬉しいです!

いつも困った時はあきらくんに出てきてもらってますね笑
なんだかんだで面倒見てくれて、馬鹿にしたりしないで優しくしてくれる人だと思ってます。

Re: のん様

コメントありがとうございます!

楽しみにしていただいてるのに毎日更新出来なくてすみません💦

少しでもお楽しみいただけるようにがんばりますね!

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