sei l'unico che può rendermi felice.

花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

08月≪ 09月/123456789101112131415161718192021222324252627282930≫10月
BLOGTOP » Re: notitle » TITLE … Re: notitle 44

Re: notitle 44

Re: notitle 44





白と黒の部屋に、あたしと花沢さんの会話だけが音だった。

そして心臓と血液の流れるようなドクドクとした音は、動揺しているあたしの中だけで聞こえるものだと分かっていても、この状況に逃げ出したくて震えそうになる足にグッと力を入れて踏ん張った。

例え部長がいたとしても、この人たちの目的が分からない以上、弱みは見せない。動揺も見せたらいけない。
あたしは、ミドウさんの本当の名前も、何も知らない。

大丈夫。
がんばれ、あたし!


「ミドウさん、のことですか?」

「うん」

「モニターの件なら終わりだと、先程も」

「彼はモニター対象じゃない。君が会った他の男たちとは違って、結婚目的ではなく彼とは会っていただろ?」

「それは、そうですけど……。でも対象でないなら尚更、あの人のことを今ここで花沢さんに聞かれる意味が分からないんですが」

話しながら周りをちらりと一瞥すると、胡散臭い男とチャラい男は椅子に座ったまま花沢さんとあたしの話を黙って見ていて、部長はあたしと花沢さんを交互に見て首を傾げた。
これみよがしに一つため息を吐いて話を続ける。

「そのことで、こうやって他の方を交えてまで呼び出される理由も分かりません。私は部長と食事をしに来ただけなんですけど」

「うん。だから食事の前に彼について一つだけ聞かせてほしい。それが聞けたら俺たちは帰るから、そのあとは二人で食事を楽しんでもらって構わない」

嫌だ。
何も聞かれたくない。

不安と怯えで、もうずっと心臓が痛いほどにドクドクと脈打ったまま。
でも話を聞かないことには、この人たちは帰らなさそうだし、聞いたからと言って必ず答えるとも言わなければいい。聞かれるだけなら、それで早く終わらせて美味しいご飯を食べたい。

また一つ大きなため息を吐いて、仕方ないと言った風を装って。
あと少し、がんばれあたし。


「……何が聞きたいんですか?」

「ありがとう。じゃあ一つだけ。なぜ彼と会わずにを避けるようなことを?」

本当に説明も何もなく、もう全てを知っていると言っているかのように。
まさに単刀直入とは、このことだ。

ふぅ、と細く静かに息を吐く。
動揺なんか見せるな。
あたしの考えたことが、彼らが女性を誑かして遊んでいることが本当だったらと想定して話さなければならない。

そして本人がいないところで、こんな風に不躾に聞いてくる人たちを信用しない。
あんたたちの、思い通りになんかさせてやらない。


「彼がモニター対象じゃないと言うなら、それこそ花沢さんには関係ないことです。それに、聞かれたことにも必ず答えるとは言ってませんよ、私は」

「……君は、強情だね」

「個人間で起こったことを当人がいない場で他人に話す理由がないだけです。いくら弟の上司とはいえ、数回会っただけの方にそれを強情などと言われるのは心外ですし、不愉快ですね。
それに彼と会わなくなったことに関しても、どうして花沢さんが知っているんです?あなたとミドウさんはお知り合いなんですか?
もし知人だと言うのなら、どうして私が初めに報告した時に教えてくださらなかったんでしょう?
そして、なぜ会わなくなった理由を本人ではなく、他人を交えてまで関係のないあなたが私に聞いてくるのかも理解出来ません!」


「……ねぇ、何の話をしてるの?ミドウさんって誰?」

部長が話に割り込んで聞いてきたけど、その問いに本当に部長は何も知らずにあたしを連れてきたのかと内心驚きを隠せない。
どういう繋がりがあるのか知らないけど、部長はこの人たちを、それだけ信頼しているということなのだろうか。

この人たち、部長にどう言い含めて私を呼び出させたのかしら。
名家の御曹司たちとあたしの繋がりなど、何もないのに。


「部長には関係ありません。申し訳ないですが、これは私のプライベートに関わる話なので」

「じゃあ、類くんに聞く。さっきから会話に出てくるミドウさんて誰よ?
今日は、みんなと牧野さんが知り合いで、久しぶりに会うのにサプライズで驚かせたいって言うから面白そうだと思って協力したけどさ。どう見てもあんたたちと牧野さん、知り合いじゃなさそうなんだけど、どういうこと?
それに、このままだと私と牧野さんの信頼関係に問題が生じかねない。どうして牧野さんを呼び出させたのか私に本当の理由を聞かせてくれる?」

「それは……、」

花沢さんはあたしから目を逸らすことなく、でも部長の問いかけに答えることも出来ずに黙ってしまった。
それはそうだろう。あたしがミドウさんの正体を知らないと思っているから、迂闊に彼の名前を出せないはず。

この人たちもあたしがここまで頑なな態度を取るとは思っていなかったのか。
でも、この三人だけで突然あたしのところに来ても、絶対に話なんか聞かなかったと思う。

この場は、部長がいるから成り立っている。
話を聞く限り、部長は完全に巻き込まれた形になるだろう。

部長が一番戸惑ってるだろうけど、あたしも今のこの状況が理解出来なくて困っているし、お腹も空いてる!
大体なぜ彼の友人たちが、あたしを呼び出す必要が?
まだ遊べると思っていた女が急に避け始めたから?それなら何でミドウさんがいないの?
どうして関係ない部長にまで嘘を吐いて巻き込むの?

もう、知っているのに知らないふりをするのも何がなんだかややこしくて、お腹が空いていつもより頭が回らないし、これ以上余計なことを考えさせないで欲しい。

もう、この時間を終わらせたい。


「それと、さっきから黙っていらっしゃいますけど、なぜここに美作商事の副社長と茶道表千家の次期家元が?お目に掛かるのは初めてではないですけど、花沢さんのお話に関係しているから同席されているんでしょうか?」

そう言いながら二人を見れば、何とも驚いたような顔を見せてきた。
彼らだって、世間的に見れば社会的地位の高いところにいるような人間だ。どこでも誰にでも顔と名前を知られていたって不思議でも何でもないだろうに。
それに彼らも一度、あたしの前に姿を見せているのに何を今さら。


「……牧野さん、もしかして、「ミドウ ジョウ」の本当の名前を、正体を知ってるの?」

「さぁ、どうでしょうね。それを聞いてどうするんです?彼の正体が何であろうと、初めから何が目的なのか分からず怪しかった。今も不信感を持っているし、信用も信頼もしていないから会うのを止めた。これで良いですか?」

「分かった。何も言わずに不躾に聞いて申し訳ない。確かに俺たちは「ミドウ ジョウ」の知り合いだ。牧野さんからのモニター報告で彼の名前を聞いた時はびっくりしたけど、いくら俺が婚活アプリの責任者とはいえ、マッチングして直接会っている間はそれこそ個人間のことだ。だからそこで俺が彼と知り合いだと教えても意味はないと思ったから敢えて言わなかった」

花沢さんがそう説明すると、やっと胡散臭い男も口を開いた。

「そうなんだよ。俺たちは彼の友人で、君のことで相談に乗っていただけ。彼からここ数ヶ月、君は何かと理由をつけて全く会ってくれなくなったと聞いた。気に障るようなことをしてしまったのか、それとも何か他に理由があってなのか分からなくて悩んでる。彼は今日どうしても外せない出張に行っていて、今この場には来ることが出来なかったけど、俺たちはそれを早く解決してやりたくて、彼に代わって君に話を聞きに来たんだ」

は?
はぁぁぁぁ?

何言ってんの、この人たち。
避けられてる理由も、どうしたらいいのかも分からずに?悩んでる?
はぁん?!
悩んでるのはこっちで、あんた達のせいなんですけど?!


「……理由も分からず悩んでるって?今、この状況だけ見てもフザケてるのは、あんたたちでしょうが……」

「え?」

「そんなに悩んでるんだったら友人なんかに来させないで自分で聞きに来なさいよ……!なによ、出張って?!」

「牧野さん……?」

「もう、いい加減にしてくれます?!あのね!この際、言わせてもらいますけど!
こっちからしてみたら、どこぞの金持ちの坊っちゃんたちが道楽で婚活アプリを使って結婚願望のある女性を誑かして遊んでるようにしか見えないの!わかる?!
初めこそミドウさんを信用しようと、女嫌いも本当だと思って協力しようと思ってたわよ!でもね!半年経ってもお姉さんに会わせようとしないし、会わせるならそれなりに本名だって知ってなきゃおかしいのに、教えようともしない!いくらなんでもおかしいと思うでしょう!
そりゃそうよね、あんな大財閥の御曹司で、いずれは親の決めた人と結婚するなら、その前に女遊びしようって、そんな風にしか見えないの!あんたたちだって様子見て楽しんでたんでしょ?!顔だけは良いから何も言わなくても女の人が近寄って来るでしょうし、お金はあるから結婚詐欺で貢がせようってわけでもなさそうだけど!それなら、今度は結婚願望のない女をその気にさせようって?!
ふざけないでよ!何も言わない教えない、そういう約束だって、そっちからしたら都合良かったでしょうね?!そんなに人の気持ちを弄んで楽しい?!楽しかった?!それならもう二度と!あたしに!一切!金輪際!関わらないでっ!」


もう、この時はブチ切れたという表現が正しかったと思う。
あんなに動揺しないように、弱みも見せないように冷静に話そうと思ってたのに。

四人ともあたしの剣幕に驚いて、ただあたしの言うことを聞くことしか出来ず、口も挟ませないほどに捲し立てた。
こんなことを言ったら本当に一切を断ち切ったも同然で、これがミドウさんに伝われば二度とメールも出来なくなる。

でも、あまりにも酷い。
こうなっているのは、あたしのせいみたいな言い方をされたことが悲しい。
そして悲しいと同時に、怒り。

やはりミドウさんは間違いなく道明寺 司で、半年経ってもその事実を教えてもらえなかった悲しみ。そして、それだけあたしも彼に信用も信頼もされていなかったというこという怒り。

いや、ほとんど八つ当たりだ。
あたしだって彼に何一つ教えてなどいないのに、彼から直接話を聞こうとしなかったないのに、それでも彼からではなく他人を通して会わない理由を聞かれたことに。

なぜ会えないのかと、彼に聞きに来て欲しかったのか、あたしは……!


「この子、スゲーな……」

ポツリとそんなことを呟いたのは、チャラい男だった。
何がスゲーのか知らないけど、フン!と男たちから顔を背けて、全てを言い切って興奮して乱れた息を整えようと深呼吸を数回して、最後は深呼吸と一緒に深い深いため息を吐く。
そして部長を見れば、まだポカンと口を開けてあたしを見ていて、でもそんな顔でも美人は美人で羨ましいと、どこか冷静に見てる自分がいた。


「部長、私はお腹が空いています」

「え、あ、うん?」

「部長は何も知らずに私をここに連れてきたんですよね?こんなことに巻き込んで申し訳ありません。私のプライベートなことではありますが、部長には何があったのか、きちんとお話します。
なので、今はこの三人にはお帰りいただいて、まずは部長と二人で食事がしたいんですけど」

「……うん。うん!部下の話を聞くのも上司の努めよね!オッケー、そういうことなんで、あきらくんたち今日は帰ってね!牧野さんに一つ聞いて答えてもらったから、もう良いよね?
あ、類くん奢ってくれるの?!ありがとう~!はい、さようなら!」

グイグイと両手を張って彼らを部屋から追い出そうとしてくれている部長。
強引で、いつも体当たりしてくるところは直して欲しいと思っていたけど、今回ばかりはそれがなんと心強いことか。
今この中で信用出来るのは、部長だけだ。


「えっ、いやいやいや!この状況で帰れるかよ!著しく誤解してるぞ、この子!」

「あきらくん、うるさい!」

「滋、せめてもう少しだけ話をさせてくれ!これじゃあ司が可哀想だろ!」

「司?!なんで急に司の名前が出るわけ?司が可哀想とか知らないわよ。そっちはそっちで何とかしなさい!本当に私の大事な部下に何してくれちゃってんのよ西門!」


彼らも、あれだけ言わないように気を付けて話をしてただろうに、結局彼の名前を言っちゃってるし!
いや、あたしもさっきミドウさんのことを「大財閥の御曹司」とか言っちゃった気もする。

ぎゃあぎゃあと騒ぐ男三人を追い出してくれた部長。
このあとも心穏やかとは言えなかったけど、部長のおかげで料理が美味しいと感じることが出来たのは、食事が終わるまで何も聞かずにいてくれたからだと思う。
そして食後のコーヒーを飲みながら、あたしの話を静かに聞いてくれた。


最初から、今までを全部。












関連記事
スポンサーサイト



*** COMMENT ***

COMMENT投稿

管理人にだけ読んでもらう