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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Re: notitle 48

Re: notitle 48





ミドウさんは、道明寺 司。

分かってた。
あの素顔を見た時から、この人はあたしと違う世界を生きてきた人だと、だから、いつかの未来なんて夢を見たらいけないと。



突然訪ねてきた、道明寺財閥の会長に用件を問えば。

「あなたが、アプリを通じて会っていた男性のことで」

こんな小物相手に神妙な顔で話し始めた会長だけど、やはり身構えてしまう。
だって、大財閥の会長が一介の会社員に畏まって、わざわざ息子の話をしに来た。それが良い話だなんて思えるはずがない。

あたしはどこまで知っていることにすれば良いのだろうか。
あたしの本名もニックネームも教えていないのに知っている人に、隠せることがあるのか。

でも、あたしは彼自身から、その事実を教えられていない。
彼の友人だという部長から話を聞いていて、あたしが既に彼の正体を知っていることを、この人たちに教える必要はない。
どこの誰が聞いても、一般家庭出身の女が大財閥の御曹司と婚活アプリで知り合って会っていました、なんて良くは思わないはずだから。


ミドウさんの立場を考えなければ。
大事なのは、今までのミドウさんの言葉に嘘はなかったこと。

彼は結婚したくなくて、あたしに協力を持ち掛けた。
両親に、お姉さんに勧められた結婚を阻止したくて会っていた。
その為に、女の人に慣れる練習をしていた。

思い出せ。
彼が、初めて会った時に言っていたことを。


『家族も俺が女嫌いなのは知ってる。こうやって女と話してるところを見たら泣いて喜ぶ可能性だってある。俺が少しずつ女に慣れる練習をしていると言えば、結婚もすぐには迫ってこないはずだ』


彼は、お姉さんには女性と会っていることを話していたはず。
その時に女性に慣れる練習をしていると話していただろうから、結婚を勧められることなく半年間もわたしとミドウさんは会えていた。
でも、まだお姉さんに会うという話にはなっていなかった。

それなら、あたしはまだミドウさんの正体を知らないことにしておいたほうが良いのではないだろうか。
あたしは彼の女性に慣れる為の練習に付き合っていただけ。

今までも、そしてあの日、あの部屋で彼が言ったことに、嘘はなかった。
それを信じればいい。


「なぜ道明寺財閥の会長が、いま初めて会った私にそんな個人的なことをお聞きになるのか分かりかねます。申し訳ないですけれど、お話をする相手をどなたかと間違われてませんか」

「いいえ、間違っていないわ。牧野さんは、ここ半年ほどの間、頻繁に息子の司と会っていたでしょう?」

「やはりどなたかとお間違えでは?私は会長のご子息とはお会いしたことはありませんが」

「でも、あなたは「クシマ ツキノ」という名前を使っていたわよね?」

「そうですね。確かに私が利用していた婚活アプリでは、その名前を使っていました。なぜそれを知っているのかお聞きしたいところですけど、気にされているのはそこではないみたいなので、今は、あえて追求はしません。が、先程も申し上げた通り、私は道明寺 司という名前の方とはお会いしていません」

「あなたが会っていたのは「ミドウ ジョウ」でしょう?それが息子の道明寺 司だと言っているのです」

……やっぱり口止めかな?
財閥の後継者が婚活アプリを使っていたなんて恥だ!みたいな?
本人から名前すら聞かされていないんだから、そんな心配は無用なのに。 

ん?
それならわざわざミドウさんが道明寺 司だって言う必要なくない?
あたしと会うことを不快に思っているなら、ミドウさんに会うのを止めるように言えばいい話で、あたしにわざわざこうして母娘二人揃って会いに来た意味は?
知らないと言ったのに、それでもミドウさんが道明寺 司だと告げる理由は……?


「……そうですか。本人からは本名も何も聞いたことはありませんでしたから、そうですか……。ミドウさんは道明寺 司さん、でしたか。
でも、だから何でしょうか?彼について何のお話をしたくていらしたのか存じませんけど、婚活アプリで会っていたことも、会っていた時に聞いた話も他言するつもりはありませんから、ご心配なく」

それだけ言うと、あたしは踵を返した。
彼と話をする前に、彼がいない場で、結婚を勧めるご家族と長時間会って話すのは危険だ。
あたしとミドウさんは、あくまで協力関係でしかなく、お姉さんに会ったら関係解消をすることになっていると気付かれたらダメなんだから。


「待って!お願い、話を聞いて……!」

あたしの足を止めようと声を掛けたのは、道明寺 椿。いや、さっきの名刺にあった名前は道明寺じゃなかったから今は結婚して性は変わっているようだけど。
彼女は縋るような視線をあたしに向けてくる。

そういえば、いつもミドウさんはお姉さんのことを気にしていた。
仲の良い姉弟なんだろうとは思っていたけど、今はそんなことは関係なくて、それよりもなぜという疑問しかない。

なぜ、あたしに話を?
なぜ、二人で?
なぜ、そんなに必死な顔で……?

なぜばかりが疑問に浮かんだところで、後ろからクラクションを鳴らされた。
こんな住宅街で、こんな大きな車を停めていたら、当然すれ違いも出来ない。


「……とりあえず、近所迷惑になるので車を退かしてもらえますか」

「じゃあ話を聞いてくれるのね!さ、乗ってちょうだい!」

え、え、え?!
違う、車を退かしてって言っただけで何で話を聞くってことに?!

お姉さんに背中をグイグイ押されて車へと促される。
運転手さんはドアを開けて、ずっと待っているし、会長はさっさと先に乗り込んでしまった。

「ちょ、話を聞くなんて、」

「あちらの車がお困りだわ。早くお乗りになって」

あたし?!乗らないあたしが悪いのか?

乗るのを躊躇っていたら、長めにクラクションが鳴らされる。
いま、この状況をどうにかするには乗るしかないのか。

嫌だ。
こわい。

でも、逃げないって決めた。
ミドウさんが、結婚したくなくて頑張っていたことを無駄にしたらいけない。

こうなったら、どういうつもりで来たのか、はっきりさせてやる!

「分かりました。乗ります!」


リムジンの中は部長のおうちのと比べると内装が少し豪奢な感じがした。
部長のおうちのリムジンはカウンターがあって、そこにお酒が並んでたりしたけど、このリムジンはカウンターはなく、対面で座席が並べられていて、その座席は白の革張りで座り心地は抜群、それはまるでリクライニングチェア。
これが本当に車の座席なのか、リムジンも色々とあるんだなと思っていたら、お姉さんが話し始めた。

「リムジン、初めてでびっくりしたでしょう?」

「あ、いえ。初めてではないので、そこまで」

「え?」

「あの、私の上司が大河原財産の御息女で、何かと気にかけてくださるんです」

「滋ちゃんね!そっか、あなたは大河原財閥に勤めてたわね」

やっぱりそこまで知ってるんだ。
本当に個人情報保護法どうなってんの?

……あっ!
会社のエントランスホールで彼に、道明寺 司に会ってるんだ、あたし……!

何で今まで忘れてたんだろう。
あれは株主総会の前で忙しくて、大河原財閥と道明寺財閥とで大型リゾート施設の開発共同企画が持ち上がっていた頃。
あの時、エレベーターの中でミドウさんと同じコロンの香りがしたのを覚えている。そして立ち止まって秘書さんに言われるまで立ち去らなかったのは、あたしに気付いたから?
流石にあそこで会ったのは偶然だろうけど、それならミドウさんはあたしの職場を知っていることになる。

ミドウさんは、あたしの名前も知ってたのかな。
いくらなんでも大財閥の御曹司が人と会うのに、素性の分からない人と迂闊に会ったりはしないだろうから、もしかしたら初めから本名くらいは知っていたのかも。

……あれ?
ミドウさんは何で婚活アプリを使ってたんだっけ?

そもそもに花沢さんは、アプリの責任者。
ミドウさんが誰だか知っていて、あたしがモニターをしていることも知っていた。

あたしは彼と二回目に会う前、花沢さんに「ミドウさんは女嫌いで結婚を阻止する為に協力するつもり」とも報告している。

花沢さんは友人であるミドウさんが女嫌いで結婚したくないことも知っていて、それでも婚活アプリを使って彼自身に女性と会わせていた理由は?

なぜ花沢さんは、あたしがモニターをしていることを知っていたのに、半年間も結婚をするつもりのないミドウさんとあたしが会うことを止めなかったんだろう……?


「……きのさん、牧野さん?」

「あっ、すみません。何でしょうか」

こんな時なのに、考え事に集中してしまった。
向かって座っている会長とお姉さんが、あたしの顔をジッと見ていて、なんとも気まずい。

「お夕飯は、もう召し上がったかしら?」

「いいえ、まだですけど…」

「イタリアンレストランの「アチェロ」とかどうかしら?赤坂の「楓」でも良いし、青山の「エラーブル」もなかなか美味しいけれど、どこがよろしいかしら?」


……あたしは本当に何で今まで気が付かなかったんだろう。
いま会長の口から出た店名は全部、道明寺系列の飲食店だ。
ミドウさんが協力する交換条件に連れて行ってやるって言えたのは、そういうことだったのか。

店名が全部、会長の名前である「楓」だ。
「メープルホテル& DJリゾートグループ」で経営しているホテルだって、みんな「メープル」が付く。

ああ、だから世界各国、日本各地の出張とお土産に、本社がNY。
だから仕事も、サービスとか不動産とか営業だの企画だの言ってたけど、もう、納得。


「あの、お話が終われば帰りますので、食事まで気を使っていただかなくても」

「すぐに終わる話じゃないの。ね?お食事、一緒にしましょう?」

にっこりと美しい顔で微笑むお姉さん。
着ている洋服は某ブランドのものだ。そしてそれを着熟せるスタイルの良さ。
眩しい。
もう、雰囲気だけでもキラキラが飛んでくる。

そして、笑顔なのに否を言わせない圧力を感じさせる言い方。

「……でも」

「ね?」

「……っ、」

「沈黙は肯定と一緒よ。さぁ、決まり!どこにしましょうか」

なんという強引さ。
少し言葉に詰まっただけで決められてしまった。きっともう初めからあたしに拒否権などなく、希望を聞かれただけでも良しとすべきか。

ええい、こうなったら美味しいご飯を楽しませてもらってから帰ってやる!
そうなれば、いま挙げられた中で一番敷居の高いお店で一見さんお断りの、料亭。

「赤坂の「楓」には、一生行けないと思っていました。私の憧れのお店です」














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