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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Call out my name. 12

Call out my name. 12






道明寺の肩に顔を埋めて子どものように泣き続け、しばらく経って漸く落ち着き始めた頃。

どこからか、コンコンと音がした。
道明寺が顔を上げてあたりを見ていたが、ふと動きが止まる。

「あきらと類だ」

ハッとして、あたしも道明寺が見ている方へ顔を向けると、リビングとテラスの行き来が出来る大きな窓から2人がニコニコしながらこちらを見ていた。

すっかり忘れてた。

類とあきらさんは、そのまま扉を開けて靴を脱いで入ってくる。

「ちゃんと話は出来たみたいだな」

あきらさんがニコニコしながら言うから、大泣きした顔を見られるのも恥ずかしくなって、また道明寺の肩に顔を埋める。

「おぅ、ありがとな」

道明寺も少し照れているのか、埋めた顔の近くの首筋で脈拍が早くなっているのを感じる。

「それで?子どもはどうするの?」

類に聞かれて、まだそこまで話せていないとは言いにくい。
道明寺の肩からそろりと覗いて、あきらさんと類におずおずと話す。

「ごめん、まだ話してない……」
「牧野!それが一番大事なはずだろ!」
「いや、だって……」

そう言いかけたところで、道明寺が体を離してあたしを覗き込む。

「子ども?子どもって……」
「あの、ごめんなさい」

「牧野が謝ることなんか一つもないだろ。早く言え」

あきらさんが怖い顔で睨む。
道明寺も何事かと、あたしを見つめてる。

「えと、あの、お腹に、赤ちゃんがいるの……」

意を決して話したのに、道明寺はピクリとも動かず、あたしを見つめたまま。

「あの、道明寺の赤ちゃんなんだけど、」

もう一度告げたところで、また道明寺に苦しい程に抱きしめられた。

「ちょ、ちょっと、道明寺くるしい……」
「悪い。嬉しくて、つい……」

慌てて道明寺が体を離す。

「嬉しいの?迷惑じゃないの?」

「迷惑なわけあるか!俺と牧野の子どもだぞ!」

そう言うと道明寺は、こんな嬉しいことがあるなんて信じられないと、迷惑だったらこんなに喜ぶはずないだろと笑顔で言われ、またあたしを苦しい程に抱きしめる。

道明寺の笑顔を6年振りに見たから、もうどうしようもない。
だって笑顔の理由があたしの妊娠なのだから。
一度止まったはずの涙がまたあふれてしまう。


「ちょっと!牧野は今、安静にしてないといけないんだから、そんなにぎゅうぎゅうにしないでよ」

類が言うと、それを聞いた道明寺は途端に慌てだして、安静ってなんだ、具合が良くないのか、医者は何と言っているんだと騒ぎ始める。

「司、落ち着け。牧野は最近まで妊娠に気付いてなくてな、一度倒れて病院に運ばれたんだ。転職に引っ越しと少し無理をしたのと、妊婦特有の貧血があって、少し数値が悪いから安静にするよう言われてるんだ」

「分かった。よし牧野!どこに引っ越すつもりだったのか知らないが、すぐにうちの邸に来い。まだタマもいるからな」

「え、いや。無理でしょ。道明寺のお母さんが何て言うか分からないけど、あたしは道明寺さえ嫌じゃなければ認知してくれたらそれで良いんだけど…」

「は?認知?認知って何だ?」

「認知って言うのは、籍を入れていない男女の間に産まれた子どもを、生物学上の父親が自分の子どもだと認めることだ」

すかさず、あきらさんが説明してくれる。

「うん?よく分かんねぇけど、すぐに俺と牧野が結婚すれば問題ないよな?」

あまりにも楽観的な発言に笑いすら出ない。
それが出来れば何の問題もないけど、そんな簡単な話ではない。

「いやいやいや、なに言ってんの?無理でしょ」

「おい、なんで無理なんだよ」

「え、だって、道明寺のお母さんが許さないって」

「さっきも言ったけど、ババアのことなら気にすんな。もう結婚まで許可は貰ってる。来年3人で会いに来いって言われた。
なんで俺すら知らなかった子どものことをババアが知ってんのか気味悪いけどな」

「は?え?なに、どういうこと?え?本当に結婚?!」

「牧野、ババアからの伝言だ。あの約束は、もう無効だってよ」

意味がわからなくて、混乱する。
結婚て何?!ちょっと前まで選択肢にすらなかったし、約束も無効ってどういうことなのか。
それを気にしながら6年間生活してたのに?

「司、いつおばさんと話したんだ?」

あきらさんがそう聞くと、あたしがアパートからいなくなっているのを確認してからだと道明寺は言う。

「ババアも前ほどじゃねぇが、今でもあちこち世界中を飛び回ってるからな。俺にも仕事はあるし、捕まえるのに2週間も掛かっちまった」

道明寺はずっとあたしの前で跪き、手を握ったまま話していた。
流石に気になるから隣のソファに座るよう促したけど、牧野の隣なら座ると、それ以外譲らないから仕方ない。
さっき中座するまで類のいたソファに道明寺と2人並んで座る。その間も道明寺はずっと、あたしの手を握っていた。

数時間前までは、ちゃんと道明寺の話を聞いて、自分も子どものことをどうするか確認してと、色々と考えていたパターンのどれでもない今の状況に、思考が追いついていかない。

そして想定外の展開に疲れたのと、久しぶりにたくさん泣いたこと、道明寺と和解出来たことに安心して緊張が解けたからなのか、ウトウトと眠くなってくる。
まだ話さないといけないことはたくさんあるのに。


「牧野?」

道明寺の、優しい声が聞こえる。
あたしの名前を呼ぶ時、いつも道明寺の声は優しかった。
繋がれた手の温かさが心地良い。段々と瞼が下りてきて、いつの間にか道明寺に寄りかかって眠ってしまった。




子どもが、いる。
牧野の中に。

何をすれば子どもが出来るのかくらい、俺でもわかる。

あれは、無意識の独占欲だった。
コイツは俺のだと、他の誰にも渡さない、他の誰にもこんなことをさせない、俺だけの。
それを支配欲と混同した。
牧野が俺の言いなりになっている、俺だけが牧野にこんなことをさせている、俺だけが。

独占欲は自信のなさの表れ、か。
俺だけを見ていて欲しい。
こんなことをさせるのは俺だけだと思いたい。
俺だから、牧野は受け入れてくれたと信じたい。
俺だけ、を。

それを確かなものにしたかった。
他の男になど渡さない。
俺には、牧野だけ。


あの土星のネックレスを見つけた時から、きっと気持ちは動いていた。

それを復讐して傷付けてやりたい衝動で誤魔化して、恨み憎いはずの相手になんで身体が反応するのか、高校生でも分かりそうなものなのに。
高校生の頃の自分のほうが、まだ気持ちに素直に動いていたと思いながら、眠ってしまった牧野のサラサラとした髪の毛を指に絡ませ、眺めていた。


「司のそんな穏やかな顔、久しぶりに見たなぁ」

あきらが、どこからかモコモコしたブランケットを持ってきて、牧野に掛けてやれとニヤついた気持ち悪い顔で俺に話しかけてくる。
その顔にムッとしながらも黙って受取り、牧野にブランケットをかけていると、それに気を良くしたのか調子に乗って話し続ける。

「牧野がいなくなってから、随分と荒れてたけど、牧野が就活してるって聞いた時のお前の反応は見ものだったな!
司はまだ牧野が好きでやり直したいんだと、みんな思ったんだぜ。それなら牧野の就職も仕方ないかと諦めたのに。
まさかこんな馬鹿なことをするとは思わなかったな。道理で牧野に会わせろと言っても拒否するわけだよ」

クソが。
気付いてなかったのは俺だけか。
俺が牧野に何をしたのか知っているコイツらを前に、居心地の悪い気分になる。

「入社式で牧野を見たって俺たちに話した時のお前の顔もな!滋と桜子には分からないだろうが、何ともない顔して話してたつもりでも、俺らには分かるからな、司。」

「まぁ、司の気持ちも分からないでもないよ。牧野、見た目はすごく綺麗になってたから。中身は変わらず、人に優しくて素直なままだし」

「だよな!やっぱり類もそう思ったか。勤労処女って言ってたのが懐かしいくらいだ。
西田さんに聞いたんだけどな、牧野は今年の新入社員の中で一番人気なんだと。
狙ってる奴もかなりいたらしいが、西田さんがコンプライアンスを盾に総務部長に働きかけて、牧野を狙ってる奴を指導係にさせないようにしたり、強引に事を起こそうとしてる奴の話を聞けば、それとなく異動させたりと色々計らってたらしいぜ」

西田。そんなことしてたのか。
ということは、西田にも気付かれていたわけか。
俺だけが自分の気持ちに気付かず、一番バカなことをしていたことになる。
それよりも、西田はあきらに何を話してんだ!


「ね、司。司が牧野にしたことを考えれば、花沢家の顧問弁護士から退職願を送るくらい、可愛いもんでしょ」

「紛らわしいんだよ!何が花沢の人間になるとか言いやがって。お互い名前で呼び合ってるし、一瞬でもお前らが結婚でもすんのかと勘違いするとこだっただろうが!」

「間違ってないでしょ。牧野は花沢物産の社員になる予定だったんだから」

「俺は認めてねぇ!牧野は道明寺HDを辞めてないからな!」

「司。随分と勝手なことを言ってるけどさ、お前は俺に何も言えないから。
牧野が倒れた時、たまたま俺が一緒にいたから良かったけど。あの時に俺がいなければ、牧野はまた一人でどうにかしようと無理してたよ。どれだけ酷いことを牧野にしたのか、もう十分に分かってるみたいだけど、そこは許さないから」

「そうだぞ、俺にだって感謝してほしいくらいだからな。
牧野のやつ、お前に何も言わないで一人で産んで育てるつもりなのを、司と話すように説得して、万が一お前の母ちゃんに手を出されないようにと、産科の検診に病院に行く時も、この邸も厳重に警備して守ってたんだぞ!お前には、黙って見てろと言われたけどな!」

「それは、わ…悪かった……」

俺もそれなりに大人になった。
牧野にしたことはともかく、自分が悪ければ謝ることもできるようになったと思う。
コイツらに謝るのが少し癪に触るだけで、一番悪いのは俺だと分かっている。

「滋と桜子にも言っとくからな。あいつらに知れたら、しばらくは牧野に構いきりになるぞ。今のうちに牧野を堪能しておけ」

「このまま牧野はうちの邸に連れて帰る。おばさんには、あとで改めて礼に来ると伝えといてくれ」

寒くならないように、更に厚手のブランケットで牧野を包む。


そこでもう一つ話があるのを思い出した。


「あきら、類。頼みたいことがある」










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Re: クラゲ様

いつもコメントありがとうございます!
クラゲ様からのコメントにいつも励まされてますので、嬉しいです!

これからゆっくりですけれど、お話も終わりに近付きます。
桜子は出てくるのか来ないのか?!

このあともお楽しみいただけるよう頑張りますね!

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