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花より男子の二 次 小 説。つかつくメインのオールCPです。

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Call out my name. 14

Call out my name. 14





道明寺の香り…。
愛しい人の、昔の記憶がよみがえる。
高校生だったあの頃の、雨の日。


「道明寺…、ごめんね…。」

「牧野」

「どうみょうじ…、」

名前を呼ぶ声と頬に何かが触れた気がして、ハッと目が覚める。
目の前に道明寺がいて、こちらをジィっと見つめている。

夢、なのかな。
目が覚めたと思ったけど、こんな近くに道明寺がいるわけないもん。
ふふ、今日は良い夢の日だ。

「道明寺、好き」
「道明寺、」
「ずっと好きなんだよ……」
「道明寺……」

夢だから、いっぱい言える。
すると、夢の中の道明寺があたしを強く抱きしめる。

今日は本当に良い夢だなぁ。
道明寺の少し高めの体温に、ぬくぬくとしながら胸元に頬を寄せる。

ふふ、あったかぁい。
ずっと、ずっと、こうしてたいなぁ。
このまま、目が覚めなければ良いのに。

「いや、そろそろ起きろ」

道明寺がそう言うけれど、夢の中でくらい好きにさせて欲しい。
起きたら、道明寺がいなくなっちゃう。

「行かないで…。道明寺、あたしを置いて、行かないで……」

もう嫌だ。無言で道明寺に置いていかれるのは。
あのアパートの玄関で、無言のまま見送る悲しさは二度と知りたくない。

好きな人に置いていかれるのが、こんなに辛いなんて知らなかった。

また泣いてる。
流れた涙を拭おうと頬に手を伸ばしたら、別の手に涙を拭われる。
誰に?

ハッと目を開く。
道明寺がいる。
…まだ夢なのかな。目を開けたと思ったのに、道明寺がいる。

「夢じゃない。起きろ」

え?夢じゃないのに、なんでいるの?
いるわけないじゃん。
夢の中でも道明寺はおかしなことを言う。
きっと今は、起きた夢を見てるんだ。

「道明寺……」

「牧野、起きろ。起きないとキスするぞ」

キス、して欲しかったなぁ。
結局一回もしないまま、さよならしてしまった。
もう十分あたしは傷付いたよ、道明寺。
だから最後に、キスしたかった。

「おい、良いのか。するぞ、キス」

「やだ…。最後になっちゃうから、したくない……」

「最後ってなんだ?」

「キスしたら、終わっちゃう……。道明寺、あたしを置いて行っちゃうもん……」

「行かない。ずっと一緒にいる」

「夢の中の道明寺は、優しいね……」

「夢じゃねぇよ。おい、牧野!目を開けたまま寝てんのか、コイツ」


ーーー夢じゃないの?じゃあなんで道明寺が、



赤ちゃん!

まだ目立たないお腹に手を当てる。
ここは、どこだ。
あきらさんちじゃない。天井が違う。
なんで、いつから寝てた?

「やっと起きたか」

本物の道明寺だ。夢じゃない。
じゃあなんで、あたしに声を掛ける?

「まだ寝ぼけてんのか、お前。昼間にあきらんちで会って話しただろ?」

そうだ。
急に頭が回りだし、次から次へと昼間の記憶がよみがえる。
道明寺は赤ちゃん認知してくれるって、言った?
そこは覚えてない。
一番大事なことを覚えていないなんて。


「赤ちゃん、認知してくれるの?」

「しねぇよ」

「分かった。じゃあ養育費も発生しないし、あたしも請求しないから。この子が大きくなった時に、どこまで道明寺家に関わらせるのか、それも書面にして残しておこう」

「おい、なんだ?まだ寝ぼけてんのか?俺と結婚するって話はどこへいった?」

「結婚?それは道明寺のお母さんが……あれ?でも約束は無効とか何とか言った?」

「よし、そこからだな。とりあえずベッドから出ろ」

道明寺はそう言うと、横になったまま会話をしていたあたしの体を支えながら起こしてくれた。
ここでやっと周りを見渡してみたら、懐かしい、この部屋は。

「道明寺の部屋だ…」

「覚えてたか」

「忘れないよ。道明寺のことは忘れたことない。最後も、このお邸だったから」

でもなんでここに?
うちの邸に来いとは言っていたけど、いつの間に連れて来られた?
全く気付かない程、寝入ってしまうとは。余程緊張していたのか、それとも妊娠しているせいか。


「あきらさんと類は?」
「あいつらは仕事に戻った」

そっか、あとでちゃんとお礼を言わないと。
彼らがいなければ、あたしはまた一人で逃げていた。
感謝してもしきれない程だ。

「このお部屋、前と変わらないね」
「あぁ、あれから俺もこの部屋は使ってなかったけどな。タマがそのままにしてたらしい」
「先輩!先輩は元気?」
「先にタマに会いに行くか」

それを聞いて頷くと、先にベッドから降りていた道明寺に手を差し出される。
自然と差し出された手が嬉しいけれど、この手を取って良いのか迷っていたら、道明寺からしっかりと手を繋がれる。

「躊躇うな。もう俺の全部はお前のものだ」


……なんか、すごいことを言われた気がする。

「どうした?大丈夫か?」

あまりにも道明寺が平然としているから、今の言葉に思わず赤面してしまった顔を見られたくなくて、俯く。

「大丈夫。先輩に会いたい」

そう言って誤魔化した。
部屋を出て長い廊下を歩いていると、ダイニングルームの近くで作業をしている使用人の方たちに会った。
全ての人を覚えていたわけではないけど、何人かは前に一緒に働いていたことのある人たちだと思い出す。

「こんにちは、お邪魔してます」と声を掛けると、道明寺がいることにもびっくりした様子だったが、何人かは目を見開き、あたしを見ていた。

「牧野様、ですか?」

そう聞かれて、そうだと返事をすると、涙を流しながら再会を喜んでくれた。
みんなもあたしを覚えていてくれたようで、嬉しくて手を取り抱き合いながら話しをしていた。

「おい」

振り返れば、少し不機嫌そうな道明寺。
すっかり存在を忘れていた。みんなも、あたしとの再会に夢中になっていたようで、道明寺の存在を思い出すと慌てて作業に戻って行った。
行くぞと声をかけられ、再び手を差し出される。
今度は迷うことなく道明寺の手を取ったら、とても、とても優しい顔であたしを見て微笑んだ。

男の人と手を繋ぐなんて、高校生の頃と違って大人になってからは何とも思わなかったのに、今の道明寺とは手を繋ぐだけで照れてしまう。
子どもが出来るようなことをしておいて、何を今さらという感じだけれど。


「なんだい、ここは。甘ったるい空気だねぇ。あの子たちはちゃんと換気したのかね」

「先輩!」

6年前のあの時、最後まであたしを守り、応援してくれていた人。
なのに、あたしはそんな先輩の気持ちをも裏切って出て行った。

「先輩、あの時はごめんなさい。先輩の気持ちを無碍にするようなことをして、本当にごめんなさい…!」
「つくし、気にしちゃいないよ。あの時は、あんただって辛かったろうに……」

先輩に抱きついて話せば、また涙が出てくる。
6年前に比べると少しだけ痩せて小さくなった気がするけれど、相変わらずの様子に安心して、更に涙があふれ出てくる。

「なんだい、随分泣き虫になったんだね」
「なんでだか分かんないんですけど、最近は妙に涙もろくなっちゃって」

そんなあたしたちの様子を見ていた道明寺が先輩に、

「タマ、牧野も今日からここに住む。よろしく頼む」

そう言うから、びっくりしたのはあたしだ。

「えっ、あたしも?なんで?」
「なんでじゃねぇだろ!今さらどこへ行くつもりだ。」
「え、どこって言われても…。でも、あんたのお母さんは…?」
「結局そこだな。先にそこから話すか」
「なんだい、突然つくしを抱えて帰ってきたと思えば、あんたたちどうなってるんだい?年寄りにも分かるように話してくれないかね」

とりあえずおいでと案内され、久しぶりに入った先輩の部屋も記憶の中のそれと大差なく、懐かしいと感じるほどにそのままだった。
先輩の淹れるお茶は、今までの他の誰が淹れたものより美味しくて落ち着く。
一つ一つに懐かしさが込み上げて、また目が潤んでしまう。

そして道明寺は、NYでの母親との会話を教えてくれた。

「全部知ってたの…?」
「おう、俺がお前の就職に圧力かけたのも、お前にしたことも。まぁこれは西田がババアにチクってたんだけどな。子どものことも知ってたのは何でだろうな?」
「そのことを知ってるのは、類とあきらさんと、あきらさんのお母様だけなんだけど…」
「じゃあ、あきらの母ちゃんしかねぇな。何かしら繋がりがあるんだろ。」
「一番安全だと思って選んだのに…」

全部筒抜けだったわけだ。まさかそんな繋がりがあるとは、あきらさんも知らなかったことなのだろう。

「子どもって何のことだい…?」

そこで初めて先輩に言っていなかったと気が付く。

「言ってなかったか?牧野、妊娠してんだよ。俺の、子ども」

道明寺は何てことないように言っているけど、先輩は驚きに目を見開き、口をポカンと開けたまま固まってしまった。

「どうしたタマ。びっくりし過ぎてポックリ逝っちまったか?」
「ちょっと!何てこと言うのよ!」
「タマ、死ぬのはまだ早いぞ。俺の子どもを見るまで死なねぇんだろ?」

道明寺はニヤリと笑って先輩に話しかける。
先輩は顔をくしゃくしゃにして、涙を流して喜んでくれた。

「この歳になると大抵のことじゃ驚きゃしないと思ってたけど、こんな嬉しいことが起こるなんてねぇ……」

それから先輩と、この6年間のことを少しだけ、当たり障りのないところだけを話したりした。

「やっぱり坊っちゃんには、つくししかいないんだね。そんな穏やかな坊っちゃん、久しぶりに見ましたよ。」

先輩がニヤリと笑いながら話せば、坊っちゃんはもう止めろ!と道明寺が言い返す。
そんな二人を見ていたら、道明寺と話し合いをする前には考えられなかった今の状況に、また目が潤んでくる。


あたしは、二度も道明寺を諦めた。
それでも道明寺は、あたしを諦めずに追いかけてきてくれた。
そういえば高校生の頃に、地獄だろうがどこまでも追いかけるみたいなこと言われたな、なんて思い出しながら、隣に座る道明寺の繋いだままの手を見つめていた。













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Re: クラゲ様

今日もコメントありがとうございます!

本当に羨ましいですよね!!
やらなくて良いならやりたくないけど、結局自分でやるしかないから、仕方なく掃除も洗濯も料理もしてる感じです笑
本当のセレブがどうしているのかは知らないですけど、二次の世界が羨ましいのは超絶同意します笑
今日も更新頑張ります!

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