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Call out my name. 16
[No.61] 2022/11/19 (Sat) 18:00
Call out my name. 16
「……ん〜〜〜!」
苦しくて道明寺の背中をバシバシと叩く。
「……っ、道明寺!」
「なんだよ」
「苦しいってば!」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられていたけど、そろそろ本当に苦しい。
それに道明寺が話す度に首筋に息が、耳にはフワフワの髪の毛がかかって、こそばゆい。
「話は、まだ終わってないし!」
「なんだよ、なんの話が残ってる?」
「あたしの退職願!」
「あ〜〜〜、……あれは、もうない」
「は?」
「……破って捨てた。」
「はぁ〜〜〜?!あっ、でも類が内容証明郵便で出したやつはあるよね?!」
「ない。お前が寝てる間に類から回収して、キッチンで燃やした」
破って燃やした?!
「信じらんない!なにそれ!」
「なんだよ!俺と結婚すんのに花沢物産にいんのおかしいだろうが!」
「だからって!もう!類に迷惑かけただけじゃない!どうすんのよ、あたしの仕事!」
「あのな!それ、やめろよ!類とか、あきらさんとか何だよ!いつから呼んでんだ!」
「もう〜〜〜やだ!話になんない!怒ると胎教に悪いから、これ以上あたしを怒らせないで!」
「……」
「離して!」
ずっと抱きしめられたままで話していたけど、本当にそろそろ少しで良いから離してほしい。
さっきまでの雰囲気はいつの間にかどこかへ行ってしまって、渋々といった感じで道明寺が体を離すけれど、今度は手だけを握ってて離そうとしない。
「道明寺、大丈夫だから。もう逃げないし、置いていかない」
そういうと道明寺は、ハッとした顔であたしを見る。無意識だったのだろう。
話し合いをして想いが通じ合ってから、道明寺はずっとあたしのどこかに触れている。
そうさせてしまったのはあたしだろうけど、少しでも道明寺が安心するのならと、黙って手だけは繋いだままにした。
「それで、これからのことだけど」
「これから?」
「そうよ!結婚するの?しないの?!」
「するよ!するに決まってんだろ!」
そういうと道明寺は、あたしの手を繋いだまま立たせ、一緒に自分の机へと連れて行く。
そして一番上の引出しを開けて、中から一通の封筒を出した。
「これ」
「なによ」
「中、開けて見てみろ」
道明寺と手を離して、促されるまま封を開けて中身を出して見てみれば、それは婚姻届だった。
「これ……」
「あとは、妻の欄だけなんだ」
「保証人、……道明寺のお母さんと、類だ……」
「これならお前も、俺の母親が認めてるって分かるだろ?もう一人は類にするか、あきらにするか悩んだが、類が譲らなかった」
「ねぇ、これさ、……あたしが復縁を望まなかったら、どうするつもりだったの……?」
「言ったろ、地獄だろうがどこまでも追いかけるって」
零れ落ちる涙が婚姻届に落ちないように、必死に手で拭う。
「なによ、地獄って……。人を勝手に地獄に落とさないでよ……」
道明寺は婚姻届を机の上に置き、あたしと両手を繋いで跪く。
そして、あたしと視線が合った時。
「牧野。これから先、どんな時も俺が帰る場所は、いつも牧野のところでありたいんだ……」
「うん。あたしも、いつどんな時でも、どんな場所でも、道明寺に……、いってらっしゃいと、おかえりを言いたいよ」
「牧野、……俺と、結婚してください」
「……はい」
あたしの返事を聞いた道明寺は立ち上がり、あたしを見つめる。
大丈夫。
これは終わりじゃない。
始まりの、キスだ。
道明寺の唇が優しく触れた時、やっぱり涙がぽろりと溢れた。
「牧野、終わりじゃないぞ。これから始まるんだ」
唇を離した道明寺がそう言うから、ますます涙が溢れて止まらない。
だって、同じことを考えていたなんて、泣くしかないじゃない。
「牧野」
婚姻届を出したら牧野じゃなくなるんだ。
道明寺が呼んでくれる「牧野」が大好きなんだけどな。
同じ「道明寺」になるのも嬉しいけど、何だか複雑な気分。
それに、道明寺家に入るということに不安は尽きない。今まで生きてきた世界が一転して変わるのだから。
遠方に住む家族を思い出し、少し淋しくなって道明寺に体を寄せると、ふんわりと包み込むように抱き返してくれる。
「牧野に道明寺って呼ばれるのも、届けを出すまでか。夫婦になるのに、それが淋しい気持ちになるのは何だろうな」
さっきから似たようなことを考えてるなと、道明寺を見上げる。
「どうする?婚姻届出すのやめる?」
「誰がやめるか!まぁでも牧野には悪いが、夫婦別姓には出来ねぇな。これから俺の妻として道明寺の名前で色々と表に出てもらわなきゃいけないことが増えるぞ」
「うん。分かってる。覚悟してる。」
「たぶん嫌なこともいっぱいあると思う」
「うん」
「何かあったらすぐに言え。道明寺の名前でどうにかしてやる」
「それは心強いね。」
思わぬ言葉にクスッと笑う。
「子どもは、誰かに任せたりはしない。仕事の都合でどうしようもない時もあるとは思う。でも、出来る限り俺らで育てよう。俺は、俺の子どもに同じ思いをしてほしくない。」
「うん」
「こうやって、何でも話していこう。俺たちは、育ってきた環境も何もかもが違う。ちゃんと話さないと、きっとまた同じことを繰り返しかねない。
子どものことだけじゃなくて、何でもだ。牧野がどう思ったのかを話して欲しい。俺も話すから。」
「うん」
もう返事をすることだけで精一杯だ。
あたしが寝ている間にも何を話そうかと、たくさん、本当にたくさん考えていてくれたんだろう。
ずっと、あたしと一緒にいたいと思ってくれているからこそだと分かる。
あたしは離れることばかり考えていたのに。
「……あと、これ」
道明寺はズボンのポケットに手を入れて何かを取り出した。
あたしの前に拳を出して、広げた手の中にあったもの。
そこには土星のネックレス。
「……道明寺…っ!」
思わず道明寺に飛びついて抱きしめる。
「捨てたなんて言って、悪かった……」
「ううん、ありがとう道明寺……!」
もうこれ以上は泣かせないでほしいのに。
これはあたしの6年間だ。
道明寺をずっと、ずっと想い続けた6年間。
それが返ってきただけでいい。
「ほら、後ろ向け。付けてやるから」
コクコクと頷いて後ろを向くあたしの髪の毛を、道明寺は片側に流してネックレスの金具を留めた。
そして肩を掴まれたと思ったら、項あたりにキスをされる。リップ音とともに微かな痛み。
項に手を当てて振り返り、道明寺を見上げる。
「なに?何したの?」
「別に」
「別にじゃないでしょ!何でも話すって言った!」
「本当に何もしてねぇよ!キスしただけだろ!」
じゃあなんで痛いのよ!
「あっ!まさかキスマーク付けたりしてないでしょうね?!」
道明寺は片側に流していた髪の毛をまた後ろに戻して、サラサラと流れるままに掬っては離しと遊んでいる。
「もう!髪の毛切ろうと思ってたのに……」
「切るのか?せっかく綺麗に伸ばしてるのに」
「うん。だって……」
言いかけて止めるのは良くないけど、これ以上は言いたくない。
「だって何だよ」
「別に!」
「何でも話すって言ったろ!」
「あっ、それを言う?!じゃあキスマーク付けたのか答えてくれたら、あたしも言う!」
「付けた。髪の毛下ろせば見えないだろ。ほら、次はお前の番!」
「ぐぅ……そんなあっさり……!」
「ほら、早く言えって」
「……道明寺より好きな人が出来たら、切ろうと思ってたの!」
「じゃあ切らなくていいだろ。そのままにしとけよ」
そう言うと道明寺はあたしの髪の毛を一房手に取り、口付ける。
そんな上目遣いで見つめられて言われれば、そんなの拒否出来ない。
6年振りにちゃんと正面を向いて話すことにまだそこまで免疫がないのに、そんな仕草で、そんな甘い声で言われたら。
ぽろりと本音が口を衝いて出る。
「6年前の道明寺も好きだけど、今の道明寺は、もっと好きなんだもん……」
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Re:クラゲ様
コメントありがとうございます!
つくしちゃん限定だから司が良く見えるんですよ笑
そうですそうです。
お願いは婚姻届の保証人です。
そこまでしないと、また昔の二の舞いになりかねないですからね。
そこらへんは抜かりなく笑
また更新頑張りますね〜!
つくしちゃん限定だから司が良く見えるんですよ笑
そうですそうです。
お願いは婚姻届の保証人です。
そこまでしないと、また昔の二の舞いになりかねないですからね。
そこらへんは抜かりなく笑
また更新頑張りますね〜!