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Call out my name. 18
[No.63] 2022/11/21 (Mon) 18:00
Call out my name. 18
お風呂からあがり、お気に入りのパステルカラーのモコモコパジャマを着て道明寺の部屋へ戻ると、まだお風呂に入っているのかいなかった。
スクラップブックの一冊を手に取り、キングサイズよりも大きいんじゃないかと思うほど広いベッドに入る。
道明寺の記事が増えるのは約4年前からだ。実は6年前の記事はほとんどない。
この頃は道明寺がまだ学生だったこともあるけれど、あたしは道明寺を忘れたくて必死だった時期だから。
結局忘れることは出来なかったし、忘れなくても良いと、あの頃の自分も今の自分の一部なのだとに認めたら、だいぶ気持ちも楽になった。
それがまさか今は道明寺の子どもがお腹にいて、これから結婚することになるとは。
人生何が起こるか分からない。
道明寺の匂いは落ち着く。
スクラップブックを閉じてベッドに顔を埋めてクンクンしていると、ドアの開く音がした。
そちらに視線を向けるとお風呂あがりのバスローブを羽織った道明寺。
そうだった。
この人、髪の毛濡れるとストレートになるんだ。
もう今は道明寺の全てに胸がきゅんとしてしまって、どうしようもない。
「牧野」
道明寺が、あたしを見て、あたしに話しかけている。
また夢じゃないかと少し不安になる。
きゅんとしたり不安になったり、情緒不安定にも程がある。
妊娠しているせいもあるとは思うけど、昨日までとは全く違う環境に、それでもやはり戸惑いは大きい。
少しベッドが沈んで道明寺が近くに来たことが分かる。
チラリと顔をそちらに向けると、道明寺がベッドの端に腰掛けて、穏やかな、優しい眼差しであたしを見ていた。
どの記事にも載っていない道明寺の顔、だ。
あたしだけが、道明寺をこんな顔にさせているのかと思うと、嬉しくてまた涙が出てきそうになる。
本当にどうしたんだろ。こんな泣き虫じゃなかったはずなのに。
「牧野?大丈夫か?気持ち悪いか?」
また顔を埋めて、首を振るだけのあたし。
道明寺が心配してる。
起き上がってモゾモゾと道明寺に近寄る。
「……昨日までは道明寺と離れることばかり考えてた。なのに今、こうやって近くで道明寺と触れ合えて、道明寺のいろんな表情が見れることが嬉しくてしかたないの」
そう言うと柔らかな表情で微笑んだ道明寺は、ベッドに上がってあたしを後ろから抱きかかえるように座り、あたしの髪の毛を指に絡めて弄ぶ。
「高校生の頃、俺の夢はお前だったよ」
「あたしが、夢?」
「ああ。俺は小さい頃から何でも欲しいもんは手に入ったし、欲しいと思わなくても何でも揃ってた。ずっとそういう生活だったが、そこに牧野、お前が現れた。
今まで俺の周りには見た目や持ち物でしか人を見れない奴らばかりだったからな。
俺を、物じゃなく人として見てくれた唯一の人間が牧野だった」
「そんなことないでしょう?あきらさんや類に、西門さんだって……」
「あいつらだって始めは家の繋がりで一緒にいただけだった。俺のやることにほとんど文句も言わない。見てるだけ。
高校の時だって赤札なんて馬鹿なことやってた時も、あいつらは見てるだけだっただろ」
確かにそうだった。
直接手を出してなくても、見てるだけで止めなかったことを思い出す。
「家族ですら俺を道明寺財閥の後継者としか見てない。今もだ。それでも、牧野だけは違うんだ」
「何が違うの?あたしだって道明寺を傷付けた!」
「牧野、お前だけは何よりも俺の気持ちを優先してくれてたんだ。昼間に話した時、ずっと俺にごめんなさいって言ってただろ?自分のことよりも、俺の気持ちを気にかけてくれたのは、今も昔も牧野だけなんだ……」
そんなことない。6年前は道明寺の気持ちを無視した。
「誰もが俺に道明寺の名前と金を要求する。俺ですら、それでなんでも解決出来ると思ってたし、少し前までは牧野にもそう思ってた。
でも、お前は高校の時から変わってなかった。自分が傷付いたことよりも、俺が傷付いた事を気にしてる。俺や周りの人に迷惑をかけないようにと、そんなことばかりを気にして。
本当にお前は、牧野は……それでも俺を、真っ直ぐで穏やかで優しいって言うんだ……」
道明寺に愛しさのあまり、切なさまで込み上げてくる。
この感情をどう表現したら良いのかわからないほどに、道明寺を愛おしく想う。
「牧野は俺の夢であり、挫折でもある。世の中には思い通りにならないこともあるんだと一度は諦めたんだけどな」
話しながら道明寺はあたしを布団の中に入るよう促す。
道明寺も一緒に布団に入って、そして包むように、そっとあたしを抱きしめる。
「一度は諦めた俺の夢が、未来と一緒に来たんだ。こんな、こんな嬉しいことが、俺の人生で起こるなんて……」
道明寺の胸元に顔を寄せる。
あたしが夢で、この子が未来。そんなこと言われたら、また泣いちゃうよ……。
「牧野、愛してる……」
「道明寺……」
どちらからともなく見つめ合ってキスをする。
道明寺は、あたしのお腹に子どもがいると知らなかった。
知らないで婚姻届を用意して、あたしと話そうと会いに来てくれた。
もう、その覚悟だけで十分なのだ。
お昼寝したのに、もうウトウトと眠くなる。
大丈夫だよね?起きたら道明寺がいないなんてこと、ないよね……?
もう起きていられなくて瞼が落ちる。
それでも道明寺に身体を寄せて、その温かさを感じながら眠れる幸せに身を委ねた。
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*** COMMENT ***
Re: ree様
コメントをありがとうございます。
こちらこそ拙い文ではありますが、楽しんでいだだけているのなら嬉しい限りです!
更新頑張りますね!
こちらこそ拙い文ではありますが、楽しんでいだだけているのなら嬉しい限りです!
更新頑張りますね!
らぶらぶ♡のつかつくが読めるのは
幸せです。
ありがとうございます。
そして何度も読み返してます。